第3章3 ノエル
ユウキが泣き疲れた頃、俺は部屋を出てダークエルフの子がいるはずの部屋に入る。
部屋に入れてから一時間くらい経ったのでもしかしたら起きてるかもしれない。
俺は慎重にドアを開けた。
「ッ!」
ドアを開けた瞬間、目の前から矢が飛んできた。
俺はそれを素手で掴んだ。
部屋には、殺気立った目で俺を見ているダークエルフの子がいた。
「ッ!」
その子は一瞬驚いた顔をしたが、すぐさまナイフを持って俺に襲いかかってきた。
俺はそれを受け流しながら考える。
俺がこいつを運んだ時は武器なんてもの持ってなかったが?
こういう時は、ステータスを見よう。
なんか、ヒントになるものがあるのかもしれない。
・個体名 :ノエル
・種族 :ダークエルフ
・種族Lv8
・HP :75/1480
・EP :180/2586
・知力 :847
・物攻 :278
・魔攻 :1504
・物防 :341
・魔防 :1862
・素早さ :1011
・取得能力
・希少能力
『土魔法』『草魔法』『光魔法』『治癒魔法』『人族殺し』
・普通能力
『自動EP回復Lv4』『空間魔法Lv3』『刺突耐性Lv4』『斬撃耐性Lv2』『殴打耐性Lv3』『道具製作Lv5』『狩人』
・種族特性
『森から愛されし者』『千里眼』『弓を扱う場合命中率100%』
・称号
『人族殺し』『一族を守りし者』
色々とあったようだな。
道具製作。
これが原因かな?
それにしても、この子。
「ガァァァ!」
まるで狼が暴れているようだ。
俺は沈静化するために腕を掴みナイフを奪った。
しかしそれでも暴れている。
「大丈夫。俺は君の味方だよ?と言ってもすぐ信じられないと思うけど、俺がその気になれば君は死んでた。これで信用出来ないかな?」
と、俺は語りかける。
ふっ。この2年間で俺はさまざまな人と喋ってきたんだ。
これくらいは出来るようになったんだよ。
あ、子供限定だけど…。
しかし、今の言い方は流石に胡散臭いか?
こんなんで信じるやつなんていないだろ。
「わ、私たちの言葉?」
俺の予想とは違った反応をした。
ダークエルフ…この子には名前があったか。
ノエルは、目を見開き、しばらくすると大粒の涙が出てきた。
「…っ。…っ。おとうさん、おかあさんー!」
それからその場に座りおとうさん、おかあさんと言いながらわんわん泣き出した。
俺はその光景にどうしたら良いかわからずただただ俯瞰した。
なんか、この光景デジャブってるなー。
まるでユウキが泣いていたよう。
それからしばらくすると落ち着いたのか呼吸を整えて話しかけてきた。
「どうして、わたしの言葉が分かるんですか?」
それにどう言ったらいいか詰まってしまう。
素直に言ってしまえば、悪いことをしようとしていると思われそうだから。
なんて言えばいいか…。
「俺は、君たちの種族の人と仲が良くて、言葉を覚えたんだよ。」
俺はそう咄嗟に嘘をついた。
「…そうなの。わたしは見たことなかったけどお姉さんは仲が良かったんだね!」
「そ、そうだよ!」
グッ!こんな幼い子供に嘘をつくなんて…。
どこか罪悪感が…。
「ここ最近はあまり、仲良くなかったからね。知らないのも無理ないよ。」
「そうなの。それと、私の服を着せてくれたのもあなた?」
「そうだよ。俺が着けたんだ。」
「すごく質のいい服だけど、わたし代わりになるものなんて持ってないです…。」
そう言うと、しょんぼりした。
くっ、俺の庇護欲が。
落ち着けー。
「いやいいよ。君の種族に世話になった礼だよ。」
「そうですか。でも、なにも渡さないのは失礼なので、お手伝いでもなんでもします!」
「うんー、それも申し訳ないけど、よろしくしようかな?」
「はい!」
屈託のない笑顔でこちらを見つめる。
眩しい。
それに、なんて可愛いんだ!
はっ!
どこからか、殺気が…。
隣の部屋からか…?
いや、それは置いておこう。
「君はどうして森にいたの?」
「そ、それは。」
そこで、ノエルは顔を逸らし、言いづらそうにしている。
あまり強制出来ないか。
「言いたくないなら言わなくてもいいよ。」
「いえ、わたしがあなたに会えたのも何かしらの縁です。わたしの故郷を救うために力を貸してください!」
ノエルは、丁寧に頭を下げ俺に懇願する。
そんな態度とられちゃ俺も無下にできない。
「いいよ。俺に何か出来るのならば協力しよう。」
これが、俺とノエルの馴れ初めだった。
「まずは、何が起こったかを話したいと思います。」
そう言い、ノエルは語り始めた。
悲惨な現実を。
――――――――
「お父さーん!」
「お?どうしたノエル?やけに元気だな?」
「えっとねー、はいこれ!」
「こ、これはなんだ?」
「セミのぬけがら!取ってきたの!」
「は、ははは。」
そんな他愛もない日常を暮らしてました。
私達の村は、人里離れたティストス森林の、奥深いところです。
人族との交流も、少なかったですが、よく行商人が私の村の特産物を欲してやってくるのも少なくありませんでした。
私達は、どんな客であっても紳士に対応しようというようなルールを独自で決めてました。
ですが…
ですが…、!
―――――
「お父さん?あの人達誰ー?」
ある日、見覚えのない人族、数十人が村の中へ入ってきました。
先頭に立っていた人は、黒髪に、黒眼の男でした。
私の父は村の門番を役立っており、不審人物には父がで向かうことになっていたのです。
「む。ノリス、ノエルを奥の方へ。」
「どうしたんですか?」
「あいつらからは、邪悪な気が流れている。何も無ければ良いのだが…念には念をだ。」
「悪い人が来たの?」
「なーに、父さんがコテンパンにしてやるからな。」
「コテンパンコテンパン!」
「ははは!そうだ!……ノリス頼むぞ。」
「はい。気をつけて。」
そういい、父はその人達の方へ行きました。
しかし、父は…
父は…。
―――――
「がはは!おいお前ら!こいつみたいになりたくないなら、俺達の言うことを聞け!いいな?まずは、女だ!女を呼べ!そうだな…。おい、お前こいつの妻だろ?俺がこいつの前でヤったら、どんな反応するかなー?」
父はいきなり、襲われボコボコにされ、人質として村の皆の前に醜態を晒されてました。
「く、ノ、ノリス。逃げろ…。」
父はいきなり、襲われボコボコにされ、人質として村の皆の前に醜態を晒されてました。
父がそう言うと、母は急いで逃げました。
根性無しというわけではありません。
そうしないと、互いに不幸になるとわかっていたからでしょう。
しかし…。
「や、やめろ!」
「う、うぅ…。」
「いいね!いいの持ってんじゃねぇーか!ダークエルフの穴も捨てたもんじゃねーな!なんだ?締りが良くなってきたな?!まさか…興奮してんのか?なわけねーよな!がはは!」
母は、逃げれず捕まり、皆の前で強姦されました。
他の村の人は何も出来ずただただ恐れて”動きません“でした。
それから少しのことです。
父と母は同時に舌を噛みちぎり、自害しました。
私に謝って…。
それでも地獄は始まりに過ぎませんでした。
それから、私達は地獄のような生活が始まりました。
男は老若男女問わず奴隷のように扱われ、女は子供と、老人以外毎晩毎晩、一人ずつ夜に呼び出されていました。
何があったのか私には分かりませんが、朝帰る時いつもその子達の顔を見ると、希望を失ったように目から光が消えていました。
反逆をしようとしても、その人族の力でなぜか、無力化されてしまうのです。
恐らくですが、母達が捕まえられる前に皆んなで倒しに行っていれば…。
いえ、たらればはもうやめます。
自害をしようとしても、謎の力で自害が出来ず、逃げようとしてもなぜかその人族にバレており、酷い格好になり村の中央に晒されていました。
その地獄のような日々から、1年が経ったでしょうか。
私達からすれば永遠とも呼べる時でしたが。
私は、10歳になった頃です。
ある日、人族が私にこう言いました。
「さて、もう大人達は飽きてきたからな。少々子供だが、お前達、子供も食ってやろうか。」
とても、同じ地に足をつけている生き物とは思えない酷い笑い方をしながらそう言いました。
私はそこで悟りました。
あぁ、私はここでダークエルフとしての尊厳が死んでしまうんだと。
「お、お止め下さい。子供達だけは!子供達だけはやめてください。私達大人の責任です。なにとぞ。」
そう言い、村長を始め、村の大人達は私達のために土下座をしました。
「は?お前達とやっても気持ち良くなんねーから子供に手を出すだけだろ?俺に指図すんじゃねぇーよ!罰としててめぇをここで犯す。おい、お前ら3人で仲良くやれよ。」
「ふっ。いいっすね!」
「や、やめて…」
それは見るに耐えるものではなく、村の皆が目を背いていました。
そして、私ははっきりと自分が何をされるのか分かりました。
その日の夜です。
村長が、私達子供を集めて言いました。
「逃げなさい。」
しかし、村の皆を置いて逃げられないし、子供と言っても男の子は村にいるのに逃げれない。
「他のみんなに押し付けて逃げることは出来ないよ。」
私達子供はそう言いました。
「いや、これはワシらの責任。人族を信用してしまったのが間違えじゃったのだ。主らに責任はない。……。ノエル、他の子らよどうかお逃げ。助けを求めるのじゃ。外に、逃げるのじゃ。」
そう言う村長の目を見てしまっては私は断りきれませんでした。
それから、夜に私達はすぐさま逃げました。
何も道具を持たずに。
皆バラバラに逃げました。
一人でも助かるように。
逃げ出してから数時間経った時、私の前にあの下品な人族の一人が。
「よお、嬢ちゃん。俺達から逃げれると思ったのか?」
「な、なんで!他の子達は?」
「あぁ、一人残らず俺達が可愛がってあげるためにもう俺達の家にいるよ。」
私はそこで絶望しました。
あぁ、終わったんだなって。
ーーーーーーーーーーーーーー
「それからの記憶はありません。気が付いたらこの部屋にいました。ありがとうございます。あなたのおかげで私は助かりました。村の者を助けてとは言いません。しかし、どうか私を村まで送ってくれないでしょうか。あの者達を……。」
その目は闇より黒く、光は一切なかった。
しかし、その目にははっきりと復讐の灯火が宿っていた。
「殺したい。」
「そうか…。村まで行くのは全然いい。」
「そうですか!じゃあ早速…」
「だが。」
この歳で人殺しはさせない。
復讐しか頼れない生き方はさせない。
だが、今の話だと人を殺すような出来事は無かったが、なぜ称号に人族殺しがあったのだろうか。
俺に何かを隠している?
だが、それとは関係なしに、もう人を殺すのは
「殺しはダメだ。」
「ですが、アイツらは!あいつらだけは!」
その顔にはさっきまで大人しく話していたとは想像出来ないほど怒りの形相をしていた。
10歳の子がしていい顔じゃない。
「ただ、そいつらは俺が倒す。それで許してくれないか?」
「…!命の恩人であるあなたにそう言われたら断れません…。一つ、約束してください。」
「なんだ?」
「アイツらには、死よりも恐ろしいことをしてください。」
「…分かった。」
「あなたの名前はなんですか?」
「あぁ、名前言ってなかったか。俺はヘティアだ。」
「ヘティア様…。」
「ごめん、なんて?」
「い、いえ!なんでもないです。」
「そうか。」
俺はこれから沢山の人を殺すだろうが、果たして妹は許してくれるだろうか…。
ーーーーーーーーーーーーー
「ちっ。あのガキどこ行きやがった。俺らの仲間を殺しやがって。もう、性欲を満たすのは飽きてきた。…殺してやろうか。」
なぜこの人族達がダークエルフと話せるかは、この大陸では大体の国でエルフ語を覚えるからです。
ノエルはまだ小さいのでその辺を知らないし、人族は滅多に来ないのでエルフ語を覚えている人族は珍しいと思っています。




