第2章9 戦いが終わったあと
うっ。
あれ?俺、てかここどこだ?
意識が朦朧とするなか、俺は周りを見た。
身に覚えのない天井や、部屋の造りだった。
あれからどれくらい経ったんだ?
どうしてここに居るんだっけ?
あの悪魔を倒した後、世界認識さんからの要望で塔に触ってそれから…。
あ、経験値を回収して、塔の機能を停止させたんだ。
種族Lvも上がったし、久しぶりにステータスを見るか。
・個体名 :ヘティア
・種族 :上級魔族
・種族Lv34
・HP :33257/33257
・EP :52486/52486
・知力 :48513
・物攻 :32749
・魔攻 :16239
・物防 :18652
・魔防 :9865
・素早さ :10285
・取得能力
・希少能力
『賢王』『英雄』『色欲』『破壊者』『空間支配』『創造』『狼王』『竜』『竜殺し』『土魔法』『光魔法』『刺突無効』『殴打無効』
・普通能力
『HP超上昇Lv6』『EP超上昇Lv2』『自動HP回復Lv7』『自動EP超回復Lv1』『痛覚激減Lv1』『苦痛耐性Lv8』『火耐性Lv9』『属性付与・光』『属性付与・闇』『属性付与・火』『属性付与・水』『属性付与・土』『属性付与・草』『狩人』
・種族特性
『睡眠無効』『自動再生』『魔気上昇』『狂乱』
・称号
『森林の破壊者』『英雄』『竜殺し』
………。
驚きすぎて何も言葉がでてこない。
え?何このステータス!
以前とは比べものにならないほど成長している。
ほぼ全てのステータス万越えなんだけど!
これ強すぎじゃね?
レベルが上がったことにより、能力が伸びた。
『HP上昇Lv10』になり、その進化能力の『HP超上昇』になった。
後は、『自動EP超回復』になったり、『痛覚耐性』が進化して『痛覚激減』になった。
こんなの、俺に勝てるやついないんじゃないかと思うくらいだ。
まぁ、前世のアニメ情報から考えると俺を越してくる敵がいるって考えるのは当たり前だよな。
俺は妹を守らなければいけない。
だから、現状に満足せず、これからも強くなり続けないとな。
ま、最近戦いすぎたから休んでもいいのかな〜?って思うけどね。
火竜すらも余裕で上回るステータスだからな。
そんな簡単にあれの上回るのは無いだろー!
フ、フラグじゃないよ?
それと、前から思ってたんだが、種族特性の『狂乱』ってなんだ?
世界認識さんに聞いてみる。
《ある一定の感情を上回ると理性をなくし大幅なステータスアップをする。》
ステータスアップはいいが、理性をなくすのかー。
それに一定の感情を上回るってなんだ?
よく分からない基準だなー。
「どうだ?気分はいいか?」
お?
その声はフゲンか。
「ま、気分がいいわけないか。ははは!」
一人でなんか会話してる。怖い。
「そんなに引くなよ。」
え?
なんで心読めてんの?
「こっわ。」
「おい。声出てんぞ。」
やべ。
こころなしか顔がほころんでるな。
俺が寝ている間にちゃんと親とのあれこれを終えたんだろうか。
「で、どうだ?調子は。」
調子か。
てか、俺喋るの?
う〜。
厳しい。
なんで喋らないといけないんだ〜!
喋るの嫌なわけじゃないよ?
ただ、喋る時の疲労がな。
「ふっ。いつも通り調子は良さそうだな。お前は喋らないがなんとなく言いたいことは分かる。」
え?何この人怖。
ストーカー?
警察呼ぼうかな?
「おい。顔に出てんだよ!嫌そうな顔すんなよ!」
と、笑いながら言う。
顔に出てたのか。
なるほどな。
よーし。
顔に出るのは駆け引きの時にあんまり良くないな。
《能力『無表情』をスキルポイント3消費して獲得しました。》
ふふふ。
なんか良さそうな能力あったから取ってやったぜ。
俺のスキルポイントは残り26ポイントある。
今んとこ欲しい能力はないな。
「今、どのくらい?」
「ん?どのくらい……?…………。」
え?ちょっと沈黙嫌なんだけど?
「あ〜。お前が寝てから三日が経ったな。その間に、俺と部下の怪我は治したし、ドルン達が殺した冒険者達の供養などをすませたりしたな。」
フゲンが報告してきた。
いやー、有能な人がいると楽だね。
俺に関係あるのはあまりないが、冒険者達か。
…………あ!
俺は異空間からカレンと妹を出す。
異空間に入れたままなので眠ったままだ。
「な!お前それは?」
ちょっとガヤがうるさいが、妹とカレンをベッドの上にのせる。
「はぁ。ほんとになんも言わないな!」
俺はそんなことを言うフゲンを横目にベッドから出る。
「もう大丈夫なのか?」
「うん。」
一応返事をしておく。
同じベッドで寝る訳には行かないからな。
今の俺は女性の姿だけど、さすがに中身は男性だからな。
「フゲン達は大丈夫?」
「あぁ。幸い、部下達は特に怪我をしたわけじゃないし、俺もお前が助けに入ってくれたおかげで軽い怪我ですんだからな。」
そうか。
それは良かった。
後は特に心残りもないし、何しようかなー。
とりあえず妹達が起きるまで待っておくか。
「そう。妹達待っておく。」
「ん?妹……、あ、こいつの事か。妹、妹だったのか。はぁ、聞いてないんだが。」
俺はそれに返事をせず、起きるまで待つことにした。
「ん、んー。ここはどこ?」
お、この声はカレン、やっと起きたのか。
体感時間は、1時間くらいか?
《3時間です。》
3時間か。
全然惜しくないな。
あれから、フゲン達はこの町でやることがあるって言ってこの部屋を出ていった。
相も変わらずユウキは寝ている。
そう言えばユウキのステータス見てなかったよな。
どれ、見て……。
「ヘティア様ー!!」
「ぐべしっ!」
痛ってぇ!
痛覚激減あるから痛くないけど。
急にカレンが抱きついてきた。
今ので俺が倒れたらどうすんだよ。
「ヘティア様!ここはどこですか?もしかして、私達は初めての夜を……。欲を言えば意識があった方が良かったんですけどね!まぁ、ヘティア様は普段喋らない照れ屋さんですもんね。私に意識があったら恥ずかしくて何も出来ないからですよね!」
は、はえぇ。
くっそ早口なんだけど。
てか、こいつなんかすげぇ勘違いしてないか?
なんかムカつくから顔をおしのけよう。
「いや〜ん♡ヘティア様のエッチ!」
う、うぜぇ〜。
俺はこいつを無視することにした。
急に俺がいなくなったからか床にへと倒れた。
痛そうな音がしたがまぁ大丈夫だろう。
この世界の人達丈夫だしな。
「カレン、体調はどうだ?」
「へ、ヘティア様?もしかして、私のことを心配してるんですかー?!私嬉しすぎて死んじゃいます〜!」
こ、こいつ。
「冗談ですよ〜!そんな怖い顔で見ないでください!私は大丈夫ですよ!ただドルンにいたぶられただけですから。」
!!
ここは深く追及するようなことはしないが、察しは出来る。
おそらく…。
「ふふ。やっぱりヘティア様は優しいんですね。」
カレンが優しい笑みを俺に向ける。
ぐっ、ダメだ。
俺はそんなやつじゃないんだ。
「俺は優しくなんてない。」
ぽつりと、独り言のように口から漏れてしまった。
「いえ、優しいですよ。」
そんな俺を頭ごなしに否定する。
俺の心の中を知らないだろうし、俺の表だけを見ると確かに優しいのかもしれない。
だが、俺はカレンを平気で見捨てようともするし、人を殺めたりもした。
魔族になったからじゃなくて前世からいじめを見ても行動しようとしないし、俺に関係ないならどうでもいいと思ってた。
他人の評価なんて気にせず、自分の思うとおり生きてきた。
いつも独りで、周りから必要とされてなかったが。
「あなたが、私を助けようとして助けた訳ではないと思います。ただ通りすがりに倒してくれただけだと思います。ただそれでも、私が救われたのは事実です。それだけじゃなく私がさらわれた時も私を助けに戻ってきてくれました。」
「それだけだ。それぐらいしかない。」
「それでも、そこからどんな人かは分かります。」
純粋な目で俺を見ているカレンに、何も言えなくなってしまった。
それからどのくらい時が経ったのか分からない。
長かったようにも思えるし、短かったのかもしれない。
「俺は、カレンが思ってるようなやつじゃないよ。」
それだけ言い、宿屋を後にする。
後ろのカレンが何か言いたげだったが結局何も言わず、無言で俺を見送った。
「はぁ。なんであんなに好意を持ってるんだか。」
俺はカレンが俺に対して好意を持っていることは分かっている。
鈍感でもないし、逆に敏感なほどだ。
だが、どうして俺に好意を抱いているのかは分からない。
前世では俺に好きな人というのはいなかった気がする。
それよりも妹の方が大事で、あんまり女の人に余裕がなかったもんな。
それと、3人でって、俺のはどうでもいいが、そんな俺だからか、なぜ好意を持っているのか分からない。
考えつくのは顔だが…。
確かに俺は美形だ。
しかし…。
うーん。考えても無駄な事な気がする。
しっかし、周りを見ると、忙しそうに働いてるなー。
でも、どことなく元気っぽい。
これも、ドルンがいなくなった作用か。
でも、なんでドルンがああなったのか気になるよな。
少なくとも考えなしでこんな後々自分が不幸なことをするわけないと思うし、あのルシファーの依り代となるためのあの物体を一人で手に入れたとは考えにくい。
絶対裏で誰か糸を引いてると思うけどな。
「お主は、この世界の者ではないな?」
…ッ?!
俺は咄嗟に戦闘態勢に入り、後ろへと下がった。
しかし、周りを見ても誰もいない。
というか、周りの人達が動かなくなっている。
これは時が止まっている?
でも、なんで俺は動いて…いや!こんなことを考える場合じゃない。
こんな芸当ができるのは半端なやつでは無い。
「これはかの神の差し金かね?」
俺が知覚した時にはやつは目の前にいた。
これはやばい。
そう、俺の心が警鐘を鳴らしている。
見た目はただのおじいちゃんだが、その中身は得体の知れないもの。
ただそう言うしかない。
「なぜこのような弱い者を?これで足りると思われたのは少々舐めすぎなのでは?」
流暢に独り言を喋っているが、俺には止めるすべがない。
逆に返り討ちにあうと分かっているからだ。
「まぁ良い。ルシファーがしくじったのは少々予想外であったが、これも全て悪魔を信じてしまったワシの責任。最初からワシがむかっておけばよかったか。さらばだ。会ったばかりですまないね。」
そう言い目の前の老人が消えた。
あ、死んだ。
そう覚悟をした。
なんで俺いつもこんなにインフレに呑み込まれるんだろうなー。
そんなことを考えていたが、俺の意識は未だ消えない。
不思議に思っていたら、老人はまた元の場所にもどっていた。
んー?
「ほっほっほ。そういうことですか。手出しは出来なさそうですね。……なるほど。ではそれまでに倒されることを祈ります。」
そう言い、老人が消えた。
「まっ、待て!」
しかし、そこには誰もいなかった。
周りを急いでみると、町は何も無かったように元に戻っていた。
今のやつは?
ちっ!
また、何も分かんねぇ。
力を持ってると思ったのに、井の中の蛙なのかな。
今のやつにも戦えるようにならないと。
戦えるビジョンが思い浮かばないけど。
だか、俺に、妹に危害を加えようとするやつは倒す。
そのためにも頑張ろう。
まだまだ、考えないといけないことがあるが、それは置いといて、フゲンの元へ行こう。
世界認識さんに聞いてフゲンの居場所を教えてもらおう。
《この間の塔にいます。》
おーけー。
そこで何してるのか分からないけど行こう。
ーーーーーーーーーーー
そろそろ着く頃か。
フゲンは何してるのかなー?
たのもー!
「………。」
そこには、フゲンを囲んでいるおじさんやおばさん達が何やら話していた。
その人達が俺を見ている…。
……失礼しました〜。
「………。」
俺は静かに扉を閉めて、外に出た。
なんだよあれ!
めちゃめちゃ注目されてたし、あんな空気今の俺でも耐えきれない!
はぁ。
宿に戻るか。
俺は塔を後にした。
「おい。」
と思っていたらフゲンが扉を開けて俺に声をかけてきた。
何やら嫌な予感がしなくもないが、流石に無視することは小心者の俺にはできない。
「なに?」
思ったよりも低い声が出ちゃった。
「そんなに怒んなよ…。というかもう帰るのか?もし、この後用事がないなら、来てくれないか?」
はぁ。
やっぱり嫌な予感はあってた。
どうして俺が重要そうな会議をしなくちゃいけないんだ。
「……んー。無理。」
よし、退散。
さっさとどっか行った方が吉とみた。
「おい。ちょっと待ってくれよな?」
わっ。
肩を掴まれた。
力を出せば振り払えるけど、そうしたらこいつ吹っ飛ぶしな。
「俺はお前から名前も聞いてないし、ドルンを倒したよな?おかげで、この町は混乱してんだ。責任を持ってくれるよな?」
くっ…こいつ俺の嫌なタイプだ。
しかも、俺が手を出さずともドルンを倒す予定だっただろうに。
「ヘティア…。」
「ん?なんて?」
「俺の名前はヘティアだ…。」
小さい声だったのか聞き返された。
そんなに小さかったか?
「ふっ。そういうとこはちゃんとしてるんだな。よろしくな。」
ふん。
「…自己紹介も終わった事だし俺はこの辺で…」
「どこに行くんだ?」
にっこりと笑って俺の肩を掴んでくる。
くそ!やっぱり嫌いなタイプだ!
ーーーーーーーーーーー
「よ、こいつはドルンを倒した張本人のヘティアだ。」
「ども…。」
「おぉー!この方が!」
「ありがとうございます!」
「あなたのおかげでこの町は安泰です!」
わーお。
めっちゃ人が俺になだれ込んできた。
く、苦しい。
「はいはい。みんなここまでですよ。フゲンさん。この方を連れてきたのはそれだけですか?」
「ふふふ。ナブさんにはバレましたか。」
え、え、え?
どゆこと?
俺が馬鹿だからか全然分かんないよ。
有能な人達の話し合いはよく分からないな。
「彼には、町の人達に英雄として紹介し、この町を元気づけます。さらに、冒険者としてこの町にいてもらおうかと思います。」
へ?
いや、意味分かんねぇよ!
なんで俺に話を通さずそんなことを言うんだ!
「おい?聞いてないんだが?」
「そ、そんなに怒んなよ。お前今後どうするか決めてるのか?決めてないなら俺が言った提案を受けるのはどうだ?」
どうやら、『無表情』の効果を貫通して俺のオーラが出てたらしい。
それより今後か。
確かに考えてなかったな。
いま一番大切なのは妹の安全。
もう二度と家族を失わないために俺は守れる力をつけるのが最優先だ。
だが、この町を飛び出して別の場所に行こうと思ってもどうしても妹を亜空間に入れることになる。
それはできるだけ避けたい。
それに、同い年くらいの子達と一緒にいた方が良さそうだしな。
「お前の種族の事は内緒にしておく。他の町の人達や人族はいい顔をしないと思うからな。ここでは大きく不自由なく暮らせると思うぞ。」
そう、俺にだけ聞こえる声で言ってきた。
メリットは大きい。
デメリットもあまりない。
なら答えは決まったな。
「分かった。そうしてもらう。」
「ふ。決まったようだな。」
「はぁ。今決めるとは。これで領主を務められるのでしょうか。しかし、私達はあなたを領主と決めました。これからこの町をより良くできるようにしましょう!」
「あぁ。」
これで良かったのかな。
そう思うが答えは出ない。
世界認識さんに聞いても答えは出ず。
「では早速、今から英雄の紹介をやろう!」
「今ですか?!」
偉い人達がフゲンの発言に驚いている。
俺も驚いている。
そういうのは明日とか言うところじゃないかなー?
「良いことは早い方がいいと思うんだ!」
「はぁ。ま、それが領主の意見だと言うのなら従いましょう。」
えぇー?
あのー?俺の意見はー?
「ヘティアもそれでいいな!な!」
あ、はい。
ーーーーーーーーーーー
「おはよう皆。俺が今日から領主となった、フゲン=アルベルトだ。皆の意見を聞きながらこの町をいい町へとするつもりだ!さて、今回は、この町の英雄を紹介する。前領主の、ドルンを打ち倒し、さらには悪魔を退けたものだ!その名もヘティア!英雄の登場だ!」
「こ、こんにちはー。」
そんな大それた紹介されたら緊張するだろ!
声裏返ったし。
わー、1000人くらいから見られてるよー。
恥ずかしくて何も言えない。
「しかも、この英雄は今後もこの町に留まり、この町を守ってくれる!これ以上な朗報はないだろう!」
「「おぉー!!」」
わ、わー。
すごい注目されてる…。
《『苦痛耐性』が、Lv9になりました。》
おかしい。
8から9になるには大変なんだけどなー。
それほど俺には合わないってことだ。
「さて、これまでこの町はドルンという腫瘍があったわけだが、今は違う。」
フゲンが語り始めて皆が集中してきいている。
「今は俺が領主となった。俺は民の声を聞き、民の中の代表とこの町をよくすることを約束する!だからどうか、協力して欲しい!この町をより良くするため!」
「おぉー!!」
「フゲン様!」
「頑張るぞ!」
ふ、すげぇな。
あんな人がいる中、堂々と主張をして民を惹きつけることが出来るなんてな。
俺には絶対出来ない。
ま、俺は妹を守れればそれでいいから。
その夜、町は冷めない熱に包まれた。




