第2章7 対話
白い塔の前に着く。
無駄に高く50mはあるであろう塔を見る。
そもそも町の中になんでそんなにでかい塔があるのだろう。
《この塔には、町を監視する役目があり、町の人のレベルUPの為の経験値を吸い取っています。》
と世界認識さんが言う。
なぜそのような機密情報を持っているのだ。ま、世界認識さんならそういうこともあるか。
これで片付けられる世界認識さん、恐ろしい。
てか俺も経験値取られるんじゃないか!?
《いえ、それはもう対策済みです。》
えぇー!?
って思いながらも心の中にはそうだろうなという心もある。何やっても驚かなくなったんだよな。
だって最初からこれだもん。頼りになるし、いいけどね!
ま、相棒みたいなもんか。
《相棒……。》
っと。入口と思われる門にいる門番がこちらを睨んでいる。
しかし、ステータスを確認してみて余裕で倒せるのを確認する。
俺が門の前にきても何もしてこない。
入ってもいいのかね?
俺はいやーな視線を無視し中に入る。
中に入ると、レッドカーペットが奥まで続いており、その奥にいる人物がこちらを見ている。
その人物の隣にはあの巨漢もいる。
おそらく、あいつはアルベルトだろう。
その容姿は、デブンより体が大きく、嫌な目で俺を見てくる。下から上まで舐めるように見て、そして唇を舐める。
きっも!キモすぎて吐きそうになるわ。
「ヘティアさん!どうして来たんですか!」
そんな甲高い声が聞こえ、その方向に見ると檻に入れられたカレンがいた。
その体はところどころボロボロで、いたぶられたような傷跡が見える。
そんな体なのに第一声は助けてでは無く俺を案じること。俺がカレンを損得で考えていたのに対し、カレンは俺の事を優先している。
はっ!
俺がどれだけクズか分かったな。もちろん、この世界に来て人間ではなく魔族になったことにより考え方が変わったことは認めるがだからといって日本での人間の価値観が無くなる訳では無い。
人を殺した時もそうだが、俺はとことんこの世界の魔族の考え方に侵食されているらしい。
俺はその声に手をかざし問題ないといった意味を込めカレンを見る。
それで察したのかカレンは黙った。
察しがいい人はいいね。俺だったら首を傾げたところだったよ。
そうしてアルベルトの前に出る。
「小娘。ワシはドルン=アルベルトだ。貴様について話をしたいのだがいいだろうか?」
そんなことを言うドルン。
思ったよりも知性はあるようだ。
「それよりもカレンを返してもらっても?」
俺はロールプレイモードに入ってるからすらすらと会話が出来る。
カレンはそんな俺を驚いた顔で見ている。こんなにすらすら喋れるのか!っと。
いや、喋れるけど…。
「ふむ。よかろう。」
そうしてカレンは、檻から出てきた。意外にもあっさり出してくれた。
そして、俺に抱き着いてきた。
「ありがとうございます!ですがどうして罠と知ってて来たのですか?」
そんなことを言うが、どうしても何も気まぐれだと言うしかない。しかし、それ以外にもある。
「気まぐれだが、俺はカレンに感謝することがあったから。」
と言う。カレンは驚いた顔でこっちを見てくる。
ん?なんか変な事を言ったかな?
って、ロールプレイで喋っちゃった!
やべー。なんかカレンは一瞬怯みはしたけどさっきより力強く抱き着いてきた。
おうふ。素晴らしい双丘が…。
「イチャイチャはそこまででワシの話をしてもよいか?」
と、呆れてそうな声で俺に喋りかけてくる。
俺のせいじゃないのに!
ま、いいか。
そして俺はドルンとの対話を始めた。
「さて、まずは何を聞こうかな?ふむ。まずは、なぜこの町に来たのかな?ここは王国の中でも辺境にある町だ。何か用がないと来ないと思うのだが?」
と問うドルン。
まぁ、確かにここは王国の中でも最東の町らしいからな。
何か用がないとこないだろう。
しかし、俺が転生したと言っても信じられないだろうし、こいつに言う気がおきない。
「ただ通りかかっただけだ。それと、冒険者組合で登録しておきたかったからな。」
嘘は言ってないし、大体あってる。
「そう簡単には口は割らないか。では次の質問だが何故ワシの部下に手を出すのだ?」
「は?」
一瞬何を言っているのかわからなかった。
何故手を出すのかとこいつは言ったか?
そんなもんは決まってるだろ。
「そんなもんは決まってるだろ。俺に手を出したからだ。それだけだ。」
そう。手を出されたから。
俺の平穏を邪魔されたからそれを取り戻そうとしただけ。
それ以上でも以下でもない。
この町の事情なんて二の次だ。
すると、腕の中にいるカレンが心配そうな顔でこちらを見る。
可愛い顔だが俺には何故そんな顔をしているのか分からない。
えー?んー。あー?
どうしたらいいんだ!
「大丈夫だ。」
と、とりあえず小声で話しかけておいた。
するとにっこりと笑ってさっきより力強く抱き着いてきた。
おふ。たわわのたわわが。
「…!」
思わず後ろを振り返る。
俺の背中からものすごい殺気が…。
『空間支配』でも後ろを確認するが誰もいない。
いるのは、俺の背中にいる妹、ユウキだけだ。
……まさかね。
俺はとりあえず未来のおれが刺されないように願った。
「手を出されたからか。ははは。自分中心というわけか。なるほどなるほど。」
その言葉に我を返す。
ドルンは、見た目とは裏腹に凄く頭がいいと判断できる。
言葉を交わす中でちゃんと考えて行動しているのが分かる。
多分ここに呼ばれたのも何か考えがあっての事なんだろう。
それが何かは俺には到底分からないが。
「ならばワシがすることを邪魔しないでもらってもいいかな?」
「いいよ。っと、前の俺なら言ってたんだろうけど、気が変わった。ちょっとの借りが出来たからな。それを返すまで黙って見てられねーよ。」
「そうか。それは残念だ。」
そう言うとドルンは手を叩いた。
ゆっくりと流れる時間の中で床が無くなったのに気が付いた。
そのまま物理法則にならい落ちて…
ない。
俺は『創造』により、床を作り出していた。
カレンは、何が起こったかもわからずに、俺の腕の中にいる。
ドルンは、首を傾げている。
ドルンも何が起きたのか分からないのだろう。
「貴様何をした。」
低い声で聞いてきたが俺は知らないふりをした。
いちいち言わなくてもいいだろう。
その様子がカンに障ったのか、顔を真っ赤にして、デブンに命令した。
「ワシがせっかく話しているというのに。デブン。やつを処罰せよ!」
そう言われるもデブンはなかなか動かない。
顔色がどことなく青ざめているような気がする。
部下たちも一緒だ。
俺にやられたからな。
それにしても腕なんで生えてんの?
回復系の能力持ってなかったよね?
《この世界にあるポーションというもので再生したと思われます。それと、先に言いますがドルンはデブンが負けた事を知りません。なので、あんなに強気でいられるのです。》
と世界認識さんが言う。
しかも、さらっと俺の考えを先読みして、その答えまで出しているあたり、世界認識さんはすごい。
俺の事を分かってきたのかな?
「どうしたのだ!さっさと捕らえんか!」
さっきは頭がいいと言ったが、戦闘面ではまるっきりダメみたいだな。
『状態認識』で確認したが町民とほぼ一緒だし。
「分かんないのか。もう詰みなんだよ。」
そこへ、ここからではなく、扉の外から誰かの声が聞こえてきた。
扉が開き姿を見せたのは、フゲンだった。
「よっ。また会ったな。」
フゲンがこっちを見て笑いながら言う。
後ろにはこの間会った2人もいる。
俺に監視の名を出していたのはフゲンだったか。
後ろの2人が会釈をしてきた。
俺も思わずそれに合わせ会釈をした。
「あぁ。監視してて悪かったな。ただ、良くも悪くもお前は目立つからよ。」
謝ってくるが俺は大丈夫だと首を振って伝える。
俺達がこうしている間にドルン達はざわついている。
「フゲン様。」
「フゲン隊長がどうして…。」
などなど。
しかも衝撃の事実!
フゲンは私兵団の隊長らしい。
「フゲンよ。ここに来てどうするつもりだ。」
ドルンが重々しい口を開いてフゲンに聞く。
「決まってんだろ。お前達に罪を償ってもらう。」
そう言うと、近くにいた兵士たちが瞬時に倒れた。
ドルンは何が起こったか分からず混乱している。
多分、俺やギリギリフゲンの後ろ2人は見えたんじゃないかな。
今フゲンは、超越したスピードで敵にみぞおちをしていた。
何の能力か分からないが気配を薄くしたことにより、消えたと錯覚した。
俺がここに来た時に気配を感じなかったのはそういうことか。
「お前たちはこの2年間色んなことをやりすぎた。おかげで、この町に以前のような活力は無く、町人達は疲弊しきっている。もう、皆疲れているんだ。お前が領主をやめたらここの町は元に戻るんだ。」
フゲンは、そうドルンに言う。
「何を偉そうに言うか。誰がこの町をここまで大きくしたと思う!ワシがいなかったらここは町ですらなく村だったのだぞ!ワシが退いたところで誰がワシの後を継ぐんじゃ!」
「それは俺が継ぐ。俺は外の世界を見てきたし、お前の良いところも見てきた。悪いところもあったが、確かにお前の交渉術や政策にいい事もあった。……それに俺が継いでも問題なんだろ?」
何やらこの町の政治についての話だ。
やべー何もわかんねーよ。
俺だけ置いてけぼりだよ。
「フゲン様…。それはお父様の跡を継ぐということですか?」
っと、デブンがいきなり爆弾発言!
なんとフゲンはドルンの息子だったか。
「デブン!それ以上言ったら首が飛ぶぞ。誰がこんな愚息。」
「ふ。俺もお前を父と思ったことなんてねーよ。」
うんうん。
さっぱり分からん。
ま、俺にはもう関係ないし、カレンと一緒に帰ろうかな。
カレン寝たし。
ユウキも寝てるし。
俺だけぼっち……。
慣れてるけどね!
「という訳で、お前には降りてもらう。」
チェックメイトでもいいそうな顔だな。
「く、このままではこのままでは…!このままでは終われない!あの方に貰った物を…。」
《…!あれを止めてください!》
世界認識さんがいきなり叫んだ。
俺はその声を聞いて咄嗟に『創造』で作った鉄の塊を投げ飛ばした。
ドルンの腕ごと吹き飛ばした。
「おい!何やってんだ!」
フゲンは俺に叫ぶ。
なんだかんだ言っても親の両腕が吹き飛ぶのは嫌だったか。
「あ、さっきの持ってたやつが嫌な予感がしたので。」
俺はその勢いにしり込みして返事をする。
「……。お前がそう言うならそうなんだろうな。」
ふぅ。
すぐに冷静になってくれたみたいでよかった。
そう一息着く前に嫌な空気が流れるのが分かった。
「くっ。絶対許さないぞ。ワシが、ワシが。このままでは終われないのだ!」
《間に合いませんでしたか…。》
世界認識さんが悔み言を漏らす。
そこまでして止めたかったものだろう。
つまり、大変面倒なことか。
ドルンから黒い液体が漏れてるのが分かった。
俺はカレン達を連れ後ろへと下がる。
フゲンも後ろに下がった。
その液体が兵士達を飲み込む。
「ドルン様!私はまだ……。」
デブンもその液体に追いつかれ飲み込まれた。
その液体は黒い球体になった。
これは俺の体を作った時にも見たものだ。
つまり。
《はい。しかも核になっているものが厄介なものです。》
厄介?
その黒いものが形づくっている。
…。
本能がやばいと言っている。
誕生してはいけないものがこの世に誕生したということだけがわかる。
見た目は、細マッチョだが、俺よりも身長が高い。
背中から禍々しい翼が生え、しっぽが生えている。
その姿は前世で語られる悪魔のようだ。
「久しいな。肉体を手に入れれたのは。あいつに貸しを作るのは嫌だが肉体を手に入れることが出来たことは非常に嬉しい。」
この世界に最悪が誕生した。




