勇者 1話
「勇者様が戻られました!!!」
会議中の沈黙を破ったのは一端の兵士だった。
今現在、ここラリア王国の都市、チェンパンにて人類生存をかけての対魔王軍の会議が行われていた。
ラリア王国、エスカリ帝国、インスタシア評議国、ガナト共和国の代表者及び護衛が集い会議を行っていた。
今までどの国も争いあっていたのが嘘のように一つの目的に集中していた。
それはこの会議の議題でもある対魔王について。
ここ近年、魔王軍の活動が活発になっている。今までは、沼地の奥にある山から出てこなかったのだが、どういう訳か、沼地をも超え、ラリア王国、エスカリ帝国の領地である砂漠やティストス森林、カスタル平野の半分が占領されている。
その事についての会議をする予定だったが…。
「ふむ。カエサルか。この会議を中断するわけにもいかないし、待っとくよう伝えとくのじゃ。」
ラリア王国の王、フーバ=ラリア=エレンは言う。
エスカリ帝国、皇帝、フェルン=エスカリ=エリウスはエレンに発言する。
「いいや、よかろう。人類生存をかけた会議だぞ?人類の切り札である勇者がいても問題あるまい。」
そう言うと、他の国の代表者達は無言でそれに肯定する。
「そうか。異論はないようじゃな。では勇者を入れよ。」
そうして、その会議室の扉が開かれた。
そこに現れたのは、男女合わせて10数名の若者達。
彼らは、15年前に生まれた勇者の仲間たち。勇者が、自らの意思で仲間を集めた者達だ。どういう基準かは誰も分からない。
その中の一人、金色の髪の爽やかなイケメンが前に出る。
「母上。フーバ=ラリア=カエサル。ただいま帰還しました。」
「ふむ。カエサル。そなたらもこの会議に参加する方向になったので席に座るのじゃ。」
「分かりました。」
そう言うと、勇者は椅子に座り、残りの10数名も、一般兵士が用意した椅子に座る。
皆、緊張か、空気を読んでか静かに座っている。
そして、中断した会議を再開する。
「ティストス森林や砂漠はもとより我ら人族の未開の土地であったからそこまで被害は出てないと国民らは考えているじゃろうが…。」
「エレン殿の思っている通りこれは非常にまずい。すぐそこまで来ているので拠点をそこに構えられるという最悪なことにもなりかねん。さらに、ティストス森林には町跡がある。そこをいいように使われる可能性が高い。平野には、建物も何も無いので対策はしやすいが…。」
帝国歴代屈指の知将と恐れられるエリウスは最悪の想定を考える。エリウスは22という歴代最小で皇帝となった人物。これは他国からしても異例だ。
「それで、勇者…カエサル殿はティストス森林へ向かったと思いますが、どうでしたかな?」
インスタシア評議国の代表が質問する。その質問を向けられたカエサルに視線が集まる。
「ええ…。私が向かった先は確かに魔王軍はいました。しかし…。」
「どうかされました?」
「なんというか…。敵が弱かったのです。統率もとれておらず、なんと言えばいいか、心ここにあらずという感じでした。」
そう言うと各国の代表者達に様々な驚きが広がる。主にそれは…。
(弱かった…?帝国の騎士100名を投入して1人も帰ってこなかったんだぞ?勇者…。いや、それだけでなく後ろにいる者たち。どれだけの力を秘めているんだ。)
という反応が主だった。しかし、そんなことを口にする程各国の代表者たちはバカじゃない。
すぐさま思考を切りかえ、勇者の疑問について考える。
「それは、相手が我々にそこまでの戦力がないと判断したということでしょうか?」
そう発言したのは、ガナト共和国の代表、プ=ナト。彼はガナト共和国の内乱を止めたガナトの英雄である。
「分からんぞ?まずは様子見として送ったのかもしれぬ。」
次に発言したのは、インスタシア評議国の代表、リーデン。評議国トップのネロ=インスタシアが欠席のため、代わりに出ている。
「魔王のことなど分からぬからな。考えても無駄じゃ。」
「エレン殿は魔王と殺りあったのでしたね。」
「そうよねー。私もエレンのこと分からないわよ。」
「「「っ!?!?」」」
エレンが、昔、今代の魔王と殺りあった出来事を思い出していた時、それは不意に聞こえてきた。
この場に場違いな呑気な声。
その声の元へ視線を向ける。
「皆さんこんにちは。魔王のスフィア=スピアです。」




