第2章4 ユウキ
人が少なくなってきたところで俺は歩みを遅くした。
ちなみに、創った刀は腰に提げている。
刃丸出しは危ないので鞘を即席で創り、納刀している。
(やべー。あそこから逃げたはいいけど、ここどこー?)
完全に迷っていた。それに、俺はこの世界の通貨を持っていない。
しかも職もない。
あれ?俺ニート?
い、いや、そんなここことはない。冒険者組合にも登録したし、それが職業だ。そうだ。
まぁ、俺に通貨が無くても『創造』で、魔気量が許す限り、食材でも寝床でも、なんでも出せる。
なんてチートな能力なんだ。
通貨も作れるが!まぁなんだ。そこは俺の良心が痛むからなし。
ただ、通貨は欲しい。
確かに『創造』で創れるものは無限大だが、料理などの加工したやつは創れない。
ここ一年も、水は創ったが、食べ物は魔物を焼いて食べていた。味付けとかも創って。
料理は自分でしないといけない。
寝床は、野宿をしていたので創ったことは無いが、創れるだろう。
だから、プロが作る料理を食べてみたかった。
絶対美味い。
(あー。冒険者組合に戻って、なんか依頼でも受けようかなー?)
そんな考え事をしていると、俺の背中から泣き出す声がした。
先の戦闘から放りっぱなしだったからな。
前世だったら炎上ものだろう。
うんちもしてないし、これはお腹が空いたかな?
俺は『創造』で、事前に準備していた物を亜空間から取りだし、食べさせる。
ごくごくと、美味しそうに食べる様子を見ながら俺は微笑んだ。
やばい。この時間は幸せだ。
やっぱり、戦闘よりも、ほのぼのとした方がいいよな。
やがて、食べ終わり、俺は妹の頭を撫でた。
この一年でだいぶ大きくなった。
目をくりくりさせて俺を見ている。目の中はキラキラとしており、とろけるような頬。白い絹のような髪。
か、かわえぇー。
無意識に口角が上がっていた。
俺の妹が可愛すぎてつらい。
前世の妹も可愛いけどな!
この世界に来て一年。
改めて色んなことを思い出す。
色々あったが、この妹のおかげで寂しい思いをせずにいられている。
早く成長してくれないかなー。
妹も上級魔族なようで、魔族の年齢の上がり方は、10年で人間の成人くらいに成長し、500年経ってから急激に老いるらしい。
だから、最初の方は1歳で2歳分成長するようなものだ。
それにしても500年は、やばい。
俺、とんでもないおじいちゃんじゃん。
だから、妹は簡単な言葉を覚えている。
だが、あまり話はしない。
それでも、体で表現したり、泣くことで知らせるので困ったりはしない。
そう言えば名前ってあるのかな?
『状態認識』で確認したが、個体名はなしになっていた。
うーん。俺が名前をつけるか。
名前がないってことは生まれたばかりあの牢屋に入れられてたのか?それとも、俺達は捨て子なのか?
これに関しては『世界認識』さんに問いかけても、
《…》
といった感じで黙り込んでしまう。
どうやら相当複雑な家族なようだ。
名前を考えて、決めた。
「今日から、ユウキって名前だ。」
なぜユウキにしたのかは、俺の前世の名前が、勇心で、その勇の部分をとったって訳だ。
ユウキは、俺に名前をつけて貰えたのが嬉しいのかニコニコと可愛い笑顔をうかべた。
(ふふ。嬉しそうだ。)
俺はその笑顔を見ながら冒険者組合へと足を向けた。
ある程度歩いた後だった。
《先程からこちらを観測する個体を3名確認しています。》
やっぱりか。
俺もこの視線は感じ取っていた。
まぁ、『世界認識』さんが今言ったということは向こうに敵意は無いんだろう。
なら無視してもいいのかと言われれば、誰かに見られているってのは、それだけでストレスになるので放りっぱなしにはできない。
俺は路地裏に行く。
そして、歩きながら周りに人がいないかを確認した。
「君たち3人気づいてる。」
と話しかけた。
ふー。よく喋れた!
すると、その3人が俺の目の前にずっと現れた。
「失礼。気づかれていましたか。路地裏に入っていったのを見てもしやと思っておりましたが。」
という男。
3人は、みな175cmほどで、体型は標準並みだった。
「誰から命令?」
俺がそう問いかけると、
「…それはお答え出来ません。」
申し訳なさそうに謝ってきた。
「そう。…これからは、監視…しないで。」
「はっ。了解しました。ではまた。」
俺の要望に承諾し、どこかに消えてしまった。
てか、俺、喋るときの口調が女性っぽくなった?体が、女性の体だから無意識にロールプレイでもしてんのか?
まぁ、いいや。口調なんてどうでもいいだろう。
それよりも、冒険者組合に行くんだった。
俺は足取りを早くして、冒険者組合へ向かった。
冒険者組合の前まで来た。
ユウキは、ご飯を食べお腹いっぱいになったのかそのまま寝ている。
冒険者組合の中に入ると、大勢の人々が酒やら串焼きやらを持って楽しんでいた。
先程までの私兵団達が占領していた時と違い、きたない盛り上がり方ではなかった。なんと言えばいいのか分からないが、これが冒険者組合の本当な姿な気がした。
「あ!ヘティア様!」
受付嬢が俺を見つけ、こちらに駆けつけてくる。
それより、様?
「お待ちしておりました!ヘティア様があいつらをやっつけてくれたおかげで皆さんの居場所が戻りました!」
そう言って俺に飛びついてくる。
なななななんで?ちょちょ、胸が胸がー!
俺はいきなりのハグにドギマギして何も言えない。それに、こういうのにはなれてないからなんて言えばいいかも分からない。
と、とりあえずこの状況をどうにかしよう。
「ち、近くないですか?」
「…。そうですね。」
そう言うと、受付嬢は、残念そうな顔をしながら離れてくれた。
それより、一応名前も聞いとこうかな。
受付嬢って言いにくいし。
「名前…何?」
俺がそう言うと、受付嬢はパッと明るい顔になった。
何それ急に怖い。
「それって、ナンパってやつですか?きゃー!私ナンパされちゃったよー!」
んー。よし。無視しとこう。
俺が無視をしたのが分かったのか受付嬢が落ち着きを取り戻した。
「もー冗談ですよー。で、私の名前はカレンです!カレンって呼んでくださいね!」
ふむ。カレンと言うらしい。
けど、喋るの苦痛だから、喋ることあんまなくない?これ聞かなくても、『状態認識』でステータス確認する時に名前確認せれば良くない?
あ。ま、まぁ、勝手に見るのはどうかて思うからね!
「は、はぁ。」
そうしていると、先程まで飲んでいた、冒険者たちも駆け寄ってきた。
「あんたがヘティアさんか。ありがとう!」
急にお礼を言って頭を下げてきた。
えぇ〜。急に怖いんですけどー。
「あんたのおかげで俺たちの居場所が戻った。俺達はあいつらに反抗する気もなく、ただただ言いなりになっていた。でも、今は違う。あんたのおかげで俺達も勇気をもらった。これからは俺達も戦うぞ!」
周りの冒険者達も「おー!」などと言い、それに同意し叫ぶ。
やばい。話が盛り上がってて俺が入る隙間がない。
あ、最初から話す気ありませんでした。
それにしても、なぜ戦う気満々なのだろうか。
とりあえず俺は、『状態認識』で代表して喋っている冒険者のステータスを見る。
HPが500くらいで、EPが200。その他のステータスは300前後くらいで、能力はそこまで多くない。
だが、それでもこのステータスなら私兵達にも勝てると思うんだが、なぜ今まで何もしてなかったのだろう。まぁ、数が多いし、ステータスも見れる能力もないなら戦う気も起きないか。
それまでに誰か一人行動出来たら良かったが、誰でも一番目というのは難しい。
それにデブンもいたら尚更だ。
そこまで考えていると、皆が俺を見ているのに気がついた。
やめて!そんな目で見ないで!
ボッチにその目は辛いのよ!
しかし、そのまま無視とは行かないので返事を考える。
よし、言うぞー。
「無理はしないように。」
それだけって?
これ以上何言えばいいか分かんねーんだよ!
なのでこれで許してくださいお願いします。
「はい!皆!頑張るぞー!」
「「おぉー!!」」
えぇー??なんでそうなるー?
あの言葉でこんなにテンション上がるの?
よく分からんわ。
《称号、『英雄』を獲得しました。能力『英雄』と、『光魔法』を獲得しました。》
久しぶりに聞く、天の声だった。相も変わらず綺麗だった。
んんー?何か凄そうな称号貰ったんだけど?
英雄?なんか俺に関係ある?
《称号『英雄』:ピンチに陥っている人を多数救い、多くの人から賞賛されることで得られる。》
ほへー。そこまでこの町にとって、あいつらは危険だったのか。
このままだったらこの町も終わってたからか。
それより、英雄の能力を見たい!
《『英雄』:全ステータス上昇、全耐性Lv1プラスする。なお、このLv1プラスはLv10にも適用される。》
強っ!流石英雄とまでついている能力だ。
しかも、『英雄』も『光魔法』も希少能力だ。
ちなみに、土と光の魔法を俺は持っているのだが、使えない。
どうやら、『魔気感知』と、『魔気操作』がないと使えないようだ。
でも、能力ってどう取得するんだ?
RPGとかだと、スキルポイントなるもので得られるのだが、この世界にはあるのだろうか。
『世界認識』さんに聞くか。
《この世界にもスキルポイントはあります。》
あ、あるんだ。どーれ?
頭の中で『魔気操作』というものを考える。どうだ?
《能力『魔気操作』を獲得可能です。スキルポイント5消費で可能です。》
おぉー。やった。しかも5!安いねー!
現在のスキルポイントは…。え?
9?
種族Lvと同じポイントしかたまらないらしい。
でも、魔法は使いたいから、獲得しちゃう!
《能力『魔力操作』を獲得しました。》
おぉ。取っちゃった。
これで、魔法使い、いや魔法少女ヘティアの誕生だね!わーはっはっは!
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