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第2章2 フゲン

だいぶ久しぶりだ!すいません。

 また1ヶ月歩き続け、やっと目的の町へと着いた。


「ここがゴループ町…。」


 その場所は異世界ファンタジーでお馴染みのような町だった。レンガ造りの家や、整備された道路を走る馬車。

 能力(スキル)をとった時や、狼王(ウルフキング)と戦った時や、ケント達との戦闘の時も思ったが、やっぱりこういうのも「異世界来たー!」って改めて思う。

 俺は感動で身動きが取れずにいた。

 テレビなどで、世界遺産の特集があっても何も感じなかったけど、こうして実際見ると全然違う。

 そこに俺がいると実感出来るし、心にくるものがある。

 そうして俺は感動に浸っていたが、何かおかしいことに気がついた。


(町の人の様子がおかしい。こんなに発展してそうないい町なのに、元気がない。顔に覇気もないし、なにより、町に活気がない。)


 元々がこんな町なのかもしれないが、それでも不気味な、嫌な感じがする。

 その辺にいた親子に話しかけようとした。だが。


(や、やべ〜。話しかけようにもその勇気が出ない。前の世界から元々人と喋ってなかったからなー。あのケントとか言うやつと話した時は、ロールプレイしてた経験から話せてたんだけどなー。)


 そんな事を考え、その親子の前でしどろもどろになっていた。

 当然そんな様子を見たら気味悪がられる。


「ごめんなさい!」


「あ…この…。」


 結局何も言えなかった。


「はぁ。」


 ただ、不審者に思われたというような感じではなかった。話す事を元から嫌がっているように見えた。


「何かおかしいな。」


「そんな深刻な顔してどうした嬢ちゃん。」


 考え事をしていた俺に突然話しかけられた。


「うおっ!」


 俺は驚いたと同時に咄嗟に後ろへ距離をとった。

 確かに、俺が考え事をしていたのもあるが、存在を感じさせずに近づけるとは。こいつ何者だ?


「悪い。驚かせるつもりはなかったんだ。ただ、困ってるように見えたから声をかけただけだ。」


「……。」


 ふむ。今は敵意はないようだ。警戒を解くか。


「…。」


「何か困ってることはないか?」


「…。」


「喋りずらいかもしれないが、役に立てるとは思う。」


 やばい!めっちゃ話しかけてくるけど、それに俺が応えられない。やっぱりどうしても緊張して声が出ない。だが、こんなに親切にしてもらってるのに何も言わないというのは失礼だ。


「この町に来たのは初めてなんだが…。…どうも…この町が静かなのが気になって。」


 俺は、気持ちを振り絞り答えを捻り出した。

 よく頑張った!そこそこ長いセリフを言えた…。


「お!やっと喋った!いい声してんな〜。それはどうでもいいとして、やっぱり気になるか。」


 待ってたばかりに声に少々明るみが含まれていた。


「実はな、最近ここの領主が亡くなって、領主が変わって今の領主になってからこの様子でな。無理な税収集に、市民に不利益な法の設備。領主だけでなく、領主直属の私兵たちも、やりたい放題にやっている。おかげで、この町の民は疲弊しきっているんだ。」


(…!今、一瞬薄暗い感情が見えたような…。)


「確かに…酷いな…。でも、町の人達はここを、出ようと、思わないのか…?」


「はは!確かにな。他所から来た人には分からないか。しかもこんな田舎にな…。」


 そこまで言って、なんとなく察した。この近くに村や町はなかった。逃げようと思っても逃げるには準備が必要だ。


「この辺は村や町がない。まぁ、それに領主がこの町を出る事を許してないからな。」


「なるほど…。町から人が減ったら金も、労力も少なくなるからな…。」


「お!そこまで分かってるか。思ったよりも頭が回るようだな。」


 やべ!心の声が漏れてた。


「いつもよりスラスラ喋ってたし、心の声でも漏れたのかな?」


 こいつも頭回るな…。


「それにしても嬢ちゃんにしては、きさくな喋り方だな。」


「そうかな?」


「まぁ、世の中にはそんな口調の奴もいるか。」


 そう言ってがさつな笑い声をあげる。

 何故そんなにも笑えるのか。あぁ、そう言えば俺の今の格好は美少女姿だったか。

 こんな美少女がこんな口調だったら、びっくりはするか。

 ただ、すぐに受け入れる所を見ると、あまりこの世界は男女差別がないようだ。

 こいつがないだけかもしれないが。

 こいつの認識を不審人物から改めるか。

(それよりも、こいつこいつって言うのいやだな。)


「名前。何?」


「ん?あぁ…。急だな。俺はフゲンだ。」


「そう。よろしくフゲン。」


「ふっ。この町は小さいからまた会えるだろうよ。それより嬢ちゃんの名前はなんて言うんだ?」


 名前か…。どうしよう。

 前世での名前でもいいが、それだと新しい世界で新しい体になったのに味気がない…。

 アジ食べたい…。

 うーーん。


「人にもそれぞれ事情があるよな。すまない。」


 俺が黙っているとフゲンが謝ってきた。何か勘違いされてるが、ここは甘えよう。


「あぁ。大丈夫だ。」


「そうか。ありがとう。」


 この世界初の町だったが、いい出会いも出来た。なんだか一癖ありそうな予感がする。


「ところで…。ギルドは…どこ?」


「ん?ギルド?ん〜、ギルドってのはどんなものなんだ?」


 もしかしてギルドはないのか?

 ラノベとか、漫画とか、アニメとかならよくあるんだけどな。やっぱり、創作上の物なのか?


「えっと…。人がいっぱい。仕事やる。」


 やっべ〜。全然上手く喋れない。ここまで酷かったか?なんでこんなに喋れないんだっけ?


「んー。もしかして、冒険者組合か?」


 過去を思い出そうとした時、フゲンが思考を遮って話しかけてきた。

冒険者組合…。そっちか。知識の中にその言葉があったのを思い出した。たしかギルドとそう変わりはなかったと思う。


「そう。…それだと思う。」


「あそこ見てみろ。大きな白い塔があるだろ?そこが冒険者組合だから、そこを目指して進んでいけばいい。」


 なんとも大雑把な説明だ。

 それでも何も情報がないよりはいい。


「そうか。…ありがとう。」


「おう、またな。」


 そう言って俺は冒険者組合に足を向けた。


 

――――――――――



 俺は少女が冒険者組合に向かうのを見送った。


「あの子はとても強い。」


 俺の能力(スキル)を使ってステータス看破をしたが、看破出来なかった。俺の実力と同等かそれ以上でなければそうはならない。


「団長…」


 俺の部下が呼んできた。


「ああ。」


 それに応え、部下の元へ行く。


「何しに来たんだ。冒険者組合にしか用があるとは思えない。この町にとってどんな風となるかだな…。」



――――――――――



 ふー!ようやく一人になれた〜!やっぱり一人が気楽でいいよね!

 それにしても、あのフゲンとかいう奴気になるな〜。

 ここの人達より明らかに元気だったし、あいつから感じ取れる魔気(エナジー)は半端なものじゃなかった。

 ただの町民では無いことは明らかだが、まぁいま考えてもわかんないし後ででいいか。

 ここの町を見て、思った以上に現状がやばそうだった。

 ここの町の人は活気がない。

 それによそ者の俺に羨望の目を向けている。多分服が上等なものだからだろう。


(情報収集は難しいか?)


 そう思ってきたらやたらと高い塔が見えた。


(さすがにスカイツリー程はないが30mはあるな)


 町民はこんなにも苦労しているのにこんな塔。これはこの町が終わるのも近そうだな。

 そこへ向かっていると塔の横に、冒険者組合という看板が見えた。


(ん?文字は読めるのか。この世界はどこなんだ?ほんとに異世界だけで考えてもいいのか。)


 終わりのない考え事をしている。

 気がつくと扉の前に着いていた。扉の隙間から笑い声が聞こえてくる。


(ここを開けたら一体どんな景色が広がってるんだろう。やっぱりアニメとかみたいな感じかなー?)


 そう意気込んで扉を開けた。


「……」


 扉を開けるとそこには昼間から元気に飲んでいる冒険者であろう人たちがいた。

 一瞬で静かになり俺達を見てくる。

 まぁ、こんな美少女が、ましてや背中に赤ちゃんを背負っている俺に注目が行くのは当然だろう。

 その注目を無視し、俺は堂々と受付をしていると思われる女性のところまで行った。

 俺が向かっている途中で、汚い視線を感じた。


(前世で女の子が視線を感じるって言ってたけどホントのことやったんや〜。いや、この体だからか?)


 まぁ、どっちもかな?良い気分もしないな。


「こんにちは!何をされに来ましたか?」


 受付嬢の声には怯えや畏怖の感情がこもっていた。


「えっとー。冒険者になりたいんだけど…どうすればいいかな?」


 受付嬢のことを考えて出来るだけ優しい声で話しかけた。

 これ以上怯えさせないために。


「は、はい!でしたら、こちらの鑑定道具〈アイテム〉で、ステータスを鑑定してください!」


 どこか安堵したように声を明るくして話す受付嬢。

 こんな可愛い顔をしているのに…。


「冒険者?あんたみたいな嬢ちゃんがそんな物騒な仕事じゃなくて俺たちみたいなやつらに奉仕した方がいいんじゃないか?」


 それを聞いてた冒険者達がガサツに笑う。


(うざい……。)


 受付嬢を見ると、また怯え始めた。

 こいつらが原因か…。

 俺は考え事をしていて注意が逸れていた。


「こんなふうによ!」


 その男が俺の胸を揉んできた。


(…!きっきもっ!!)


 俺はその生理的嫌悪感に耐えきれず、そいつをぶっ飛ばした。

 テーブルを倒しながらその男も吹っ飛ぶ。


(や、やっちゃった〜。)

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