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間話 ラリア王国

やっぱり本編にしました。

 ハヤトが銀の部隊を撤退させた。

 王国会議をしていた所にその報告が上がった。


「ハヤト様が言うには、奴はかなりの難敵。ケント達では歯が立たなかった、と。ケント達の借りを返してくる。だそうです。」


 一般兵がそのように報告する。

 その声には緊張が混じっており、今にも倒れそうなほど青ざめた顔色をしていた。

 それもそのはず。今ここには、女帝を始めとして、ラリア王国の重鎮6人がいるからだ。一般兵が決して見れるはずも無い光景だ。


「ふむ。もう下がっていいぞ。」


 重鎮の一人、髪の毛が赤色の特徴の若者が声を出す。

 声を掛けられた一般兵は、急いで部屋から出ていった。

 その部屋には重い雰囲気が漂っていた。


「ケント達は失敗したか…。」


「ちっ。俺の部下を痛めつけやがって…!」


 シルバーの声には隠しきれない怒気と、殺気が溢れていた。


(確かにシルバーの性格からして、今すぐにでも殺したいだろうな。だが…。)


 横目で、会議室の最も奥に座っている女帝に目を向ける。

 その顔には不気味な程楽しそうな笑みを浮かべていた。


(仮にも仲間だぞ?なのにそれをどうでもいいと考えてる…。人をなんと思っているんだ。)


 赤は女帝の狂ってる一面を垣間見て、唖然としていた。



ーーーーーーーーーー



 前々から女帝には不満があったのだ。

 前王が退き、不自然な程に横から割り込んで来ており、民や国の上層部から不満が出ていたんだ。

 それを…。


『我に逆らうと皆こうなるぞ?それでも、逆らうと言うなら我が相手になろう。』


 その言葉と共に、当時王国最強であり、俺の師匠でもある、マゼンタ=ノールンの首が晒された。

 しかも、国王披露の場でだ。

 当然民は騒ぎ出したが、それをまたたった一言で片付けた。


『今から喋った奴は殺す。』


 その場に静寂が一瞬で満ちた。

 そこからは、女帝の独裁政治が始まった。




ーーーーーーーーーー


 当時の俺は復讐に身を焦がし、鍛錬を続けた。そして、女帝に挑んだが、結果は今もまだ女帝がいるということから想像できるだろう。

 あの頃から、この国は腐敗していった。武を持ったものが上へと上がり、弱者は淘汰されて行った。

 言葉だけでは、上に行くことは出来ず、武力だけが一番となった。

 それが今この会議に参加しているメンバーの意味だ。

 王国トップの軍の将軍。武力が全てとなった王国の上に立つものだ。

 武力だけを重視しているから、性格に難があるやつばかりだ。

 女帝は、何故か俺に目を付け、皆のまとめ役になった。


(正直言って、苦労する。けど、皆よく言うことを聞いてくれるが…。)


 さて、女帝はなんて命令を言うのか。


「ふむ。それは妥当じゃろうな。ハヤトのことはどうでもよいが、これ以上は何の意味もないからのぉ。撤退せよと伝えるのじゃ。」


「ま、待ってくれ!何が面白いんだ!俺の部下がやられたんだぞ?!」


 シルバーが女帝に糾弾する。その声が会議室に轟く。


「だからどうしたのじゃ?部下などたくさん代わりがおろう。ましてや、ぽっと出の魔族にやられるなどそんな部下はいらないじゃろうて。」


「なっ…。」


 会議室が動揺に包まれた。

 その驚きには二つの意味が込められていた。

 まずひとつは、女帝が仲間のことをなんとも思っていないこと。これについては、先程も言った通り、血が通ってない女帝ならば、察せることが出来る事だ。だが…。


「女て…女王様。魔族というのはどういうことでしょう?」


 思わず俺は問いかけた。

 そう、魔族。

 人族の敵にして、この世の悪。

 太古の昔から人族と争ってきたという種族。

 上位の魔族となると一個の街を壊せるという能力を持っているとされている。

 だが、今は昔の勇者と魔王が停戦協定を結んだはずだが…。


「なんじゃ?言ってなかったかの?ケント達と戦ったのは、上級魔族じゃ。」


「上級…!」


「どうして上級魔族が現れたのでしょうか?」


 そこで最高司祭様が、女帝に質問をする。

 最高司祭様は、昔からこの国に仕えており、国教の、ヴィヌアヌス教の教祖として長年王国にいる古参勢だ。

 俺はその最高司祭様をあまり信用していない。

 昔から扱いにくい男であったし、女帝が王国の王になった時も1番に従順していた。

 王国などどうでもいいと考えているような節が時折見える。

 なので俺はあまり信用していない。


「ふむ。それについては我もまだ分かっておらんのじゃ。元より、魔族とは人族と停戦協定を結んでおり、東と西の土地で別れているのじゃがな。こちらに来てもメリットがないのじゃ。考えられる理由としては、魔族領から、迷ってこちらに来たか、魔族領で転移魔法でこちらに来させられたかのどちらじゃな。」


 女帝は、今までにない饒舌な口調で事の考察を語った。その表情はどこか楽しそうに見えた。


「そんなのは、どうでもいいんだよ!なぜそれを知っていて俺の部下を向かわせた!」


 女帝に盾付き吠えるシルバー。

 こいつは短気だ。いつもは余裕を保った口調だがこういう緊急な時は口調が粗暴になる傾向がある。

 が、部下を大切に思う良い奴だ。

 そんなシルバーが部下の事を心配しない事は出来ないか。


「あらあら。部下がやられたのはあなたの訓練が訛っているからではないの?」


 シルバーを嘲笑するのは、さっきまで黙りこくっていた白。


「上司が無能だと下が大変わね。」


「てめえ。あんまし調子乗んなよ。」


 一触即発の空気になる。

 はぁ〜。こいつらは前から何かがあるとすぐ喧嘩する。逆に仲が良いのもしれん。


「おい。お前らそこまでにしとけ。」


 俺は溜息をつきながら二人に言う。


「分かったよ。赤さんが言うなら。」


「はいはい。分かったわよ。」


 そういうと二人とも大人しくなった。

 ただ話すだけでこんなに苦労するのか。慣れたとはいえ疲れるのには変わらない。


「申し訳ありません。それで、その上級魔族の処分はどうしましょうか。」


「ふむ。ハヤトに撤退命令を下せ。もう手遅れかもしれんがの。」


「それはどういう-?」


 俺が女帝に聞き返そうと思った時。


「ハヤトッ!ちっ。」


 急にシルバーが立ち急いで空間転移でどこかへ行った。


「何あいつ?急に出ていって…。」


「まぁまぁそう寂しがさんな。」


 金が白に向かってそう茶化す。


「そういうんじゃないわよ!」


「ハヤトの足が吹っ飛んだからじゃの。」


「ッ!」


 女帝が何気ないように言った言葉に俺達は驚愕した。最高司祭様は、動揺していなかったが…。

 ハヤトと言えば、銀の部隊でシルバーの次に強い隊員だった。

 副将はケントだが、実力だけならハヤトの方が上だ。

 俺ら将軍の実力には届かないが、それでも十分な戦力だった。


「結構良さそうじゃな。シルバーには殺すなと言っておかなければ。ふふふ。」


 その報告をしても尚、楽しそうな顔に俺は背筋に冷たい汗を感じた。


◇◇◇◇◇◇


「ハヤトッ!ちっ。」


 俺は急いで空間転移を使う。

 横目で女帝を見ると、こちらをニヤニヤと笑って見ていた。

 クソが…。

 女帝は、全部分かっていてなんの手助けもやらないつもりだ。

 ここで何かを言っても意味が無いので無視して空間転移を使った。


 景色が変わり、とある森の場所に移動していた。

 そこには、黒色の髪が特徴な女が立っていた。

 毛先は白く顔立ちは見たものを虜にするようで、ただの美少女だった。

 ある一点をと除けば。

 俺は懐の剣を抜き、女に目掛けて放り投げた。

 音もせず女の真上へ行きそこから一直線に下へ行く。

 しかし、それを気付いたのか後ろへと飛んだ。

 思ったより勘のいい奴だ。

 女が隼人から距離を取ったので俺は隼人に近づく。

 女は警戒してか俺を見ているだけだった。


「隼人大丈夫か?」


 俺は隼人に声をかける。

 隼人に高級ポーションを与える。

 隼人の足が完全に治った。

 隼人はこちらを見て、安心したのか、戦いの疲れが出たのか、気を失った。

 俺は感情を抑えずに女を見る。

 女はそれに脅えもせずこちらをじっと見つめていた。

 隼人の足を切断したクソ野郎。

 今すぐにでもぶっ倒したい。

 そう思って、俺は行動に移そうとした。


『もし殺そうとしたらあやつを殺す前にお前を殺すぞ。』


 俺の頭の中に、あの冷血女が声をかけてきた。

 ちっ。どこから見てるんだか。

 こんな俺でも魔法抵抗は、高いんだが。


「女帝からは、殺すなと言われてるがやり返すなとは言われてない。」


 俺は全速力で女に近づく。

 文字だけで見たら、俺ヤバいやつだな。

 いや、気にしない。気にしない。

 そして顔面を殴る。

 そのままあいつは身を流して吹き飛ばされた。

 砂埃が舞う。

 やったか…?

 そう思ったが、煙の中から影が見えた。

 タフな奴だ。

 仕留めるためもう1回全速力で殴りかかる。

 しかし、その拳を女は後ろへ下がり避ける。

 …!今のは偶然じゃない。分かっていて避けただと。俺のスピードについてこられるのか…。

 もう一度…と思ったが、これ以上やったら流石に女帝に何か言われそうだったので止める。


「…このくらいか。これ以上はあいつに目を付けられてしまうな。」


 そして、女を見て俺は忠告をする。

 女帝より先に俺が殺すために。


「あいつに目を付けられたらこれからの人生、苦難の連続だろうな。こいつらの借りは必ず返す。それまでせいぜい生き足掻けよ。」


 そうして俺は隼人を連れてラリア王国へと戻った。



ーーーーーーーーーー



 会議室へとまた戻った俺は、皆の視線を一身に引き受けた。

 隼人を一般兵に預け席に座る。

 皆何の表情も出てないが、女帝だけは笑っていた。


「シルバーよ。あやつはどうじゃったか?」


 女帝が俺に聞く。

 女帝ならば俺に聞かずとも分かっただろうに、俺の意見を皆に聞かせたいのか…。


「正直今の俺より弱かった。だが、戦闘センスは抜群だ。放っておけば、いずれ俺らの邪魔になると思う。」


 俺の言葉に皆様々な様子を浮べる。

 赤は…疲れてそうだ。いつも俺達に振り回されてるからなー。

 白は、俺を見てニヤニヤしている。なんだアイツ。………。

 金はそんな俺達を見比べて笑っている。何が面白いんだか。

 最高司祭様は、表情の変化が何も無い。

 肝心の女帝は…。


「そうかそうか。それはよいのぉ。今後も手だし無用じゃよ。」


 何か企んでいるような笑みを浮かべていた。

 それより…。


「聞いてなかったのか!?放っておけばたちまち人類の脅威となるぞ!」


「あぁ聞いておった。じゃがそれでいいのじゃ。」


 俺の糾弾をあしらい、人類にとっての脅威を見逃すという爆弾発言をした。


「女王様。それは俺も賛成できかねます。」


 俺に続き赤も否定的な意見を言った。


「ふむ。『吹き飛べ』」


 女帝が言葉に力を込めた瞬間、赤が吹き飛ばされた。会議室の特殊な結界が赤の体を受け止める。

 皆驚愕する。

 一瞬で、俺達4将のリーダーを吹き飛ばした。

 この俺をしても何が起こったのか分からなかった。


「カハッ、カハッ!」


 赤が、肺から上がってきた血をはき出す。


「我の言うことは絶対じゃ。それに歯向かう者は誰であろうと許さん。」


 女帝が有無を言わさない覇気で俺らを黙らす。しかし、納得出来ないことはまだある。


「それと、あの女額に角が生えてなかったぞ。魔族特有の角がねぇってことは魔族じゃないだろ。」


 とりあえずその事について確認する。

 魔族は大体角を持っていて、角が立派なほど魔族での地位は高いと言われてる。

 だがツノなしがいるってことは聞いたことがない。


「お、女って誰よ!」


 白が何か言ってるが構ってる暇は無い。女帝の返事を待つことにした。


「ふむ。そうか…。角が…。よし。ならば…。」


 女帝が独り言を終え、俺に命令を降す。


「お主達の任務失敗の責任を、賢人に負わせる。賢人は、南の方へ追放せよ!なお、転移結晶は取り上げよ。」


「ちょっと待ってくれ!元はと言えば、あんたが…。」


「なんじゃ?」


 その言葉に込められた明確な怒気が俺の行動を制限させた。

 言葉だけでこの力…。


「異論はないな。それじゃあ解散じゃ。」


 そう言うと、女帝はどこかへ行ってしまった。


「さて、私達も解散しますか。」


 白がそう言うと皆それぞれ解散していった。

 俺は赤に近づく。


「お、どうした?」


 赤は俺達の上司で、王国で女帝を抜き、一番強いとされている。


「女帝、どうにかならないですか?」


 俺はそう聞いたが、赤は困った様子で首を傾げる。


「俺もどうにかしたいが無理だ。昔俺が女帝に挑んだのを覚えてるだろ?」


 女帝に初めて立ち向かったのがこの赤だ。俺達は圧倒的な武力に打ちのめされていたのに、この人だけは立ち向かった。

 そんな訳で皆、赤のことを尊敬している。

 そして上司として俺達をまとめてくれている。


「そうですよね。すみません。また。」


 そう言って俺は立ち去った。


「俺もどうにかしないとと思ってるんだけどな…。」


 そんな赤の弱音は聞かなかった。



ーーーーーーーーーー



 「ツノなしか。どう反応するのか楽しみよのぉ。」

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