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どうしてこんな事に?

校舎に入った俺とティナは、教室を見て回った。

その中には、授業中の教室もあり、出来るだけ静かに廊下を歩いた。


「校長室へ行くわよ」


「えっ!?」


「知らなかったの、今日は、挨拶をする為に来たのよ」


――聞いてませんけど・・・・・


そう思いながらも、ティナに従い、後ろを歩く。

ティナの足が止まる。


「ちょっと」


「はい?」


「早く、案内をしなさい!」


初めて来た場所で、突然の無茶ぶり。


「俺も、知らないけど・・・・・」


「はっ?

 あんた、聞く事も出来ないの?」


俺は、辺りを見渡した。


「聞こうにも誰もいないと思うけど・・・・・」


ティナが、指を差す。


「いるじゃない」


指の差された方向には、授業中の教室。


「いや、邪魔になるよ」


当然の文句。

しかし・・・・・。


「生徒に聞けって言っているんじゃないわ。

 先生に聞けばいいでしょ」


同じ事だと思う。

だが、ティナは、『早くしろ!』といわんばかりに俺を睨んでいる。


『はぁ』とため息を吐き、仕方なく教室に向って歩こうとしたその時。


「見つけたぞ!」


声の主は、先程のグループ。

復活したドゥンガもその中にいた。


ドゥンガは、仲間を増やし、こちらに向かって走ってくる。


「逃げましょう」


おれは、ティナの手を掴み、走り出す。


「ちょっと、痛いわよ!」


ティナは、そう言って抵抗するが、俺は無視して走る。

校内を追いかけまわされ、今、どこにいるのかさえも、分からなくなった。


しかし、偶然にも、校長室を見つけた。


「ティナ、着いたよ」


俺は、足を止めた。

同時に、ビンタを喰らう。


「痛いって、言ったでしょ!」


怒りながら、手首を擦っているティナに伝える。


「取り敢えず、入りましょう」


ティナの背中を押し、校長室のドアを開けた。

奥の机に、耳の長い男が座っていた。


「騒々しいが、なんだね?」


男はこちらに、顔を向ける。

すると、ティナは、態度を変えた。


「騒がしくして、申し訳御座いません。

 校舎の入り口で、こちらの生徒に絡まれまして・・・・・」


謝罪のついでに、『チクッ』と文句を言う。


「そう言う事だったのか。

 何分、血の気が多い者達が多くてな。

 その事については、謝罪しよう」


あっさりと『謝罪』という言葉で、受け流した。


「ところで、君達は?」


ティナは、カーテシをして、挨拶をおこなう。


「私は、ヴァン ツベス家の長女、ティナ ツベスと申します。

 こちらは、私の使用人、芳士ですわ。

 この度は、こちらの学校で、お世話になる事になりましたので、

 挨拶に参りましたの」


相手が校長だろうと、ティナの上から目線は変わらない。

だが、校長は、気にも留めていない様子。


「そうでしたか、貴女が、ツベス伯爵家の御令嬢でしたか、

 どうぞ、こちらにお座り下さい」


ティナは、校長に案内され、ソファーに腰を掛ける。

俺も、習って横に座ろうとした。

しかし、ティナに小声で注意される。


「馬鹿なの!

 あなたは、後ろ」


『馬鹿』は余計だと思うが、素直に従う。

おれが、襟を正して、ソファーの後ろに立つと、

校長が、『クスクス』と笑っていた。


――知らないんだから、仕方ないだろ!・・・・・


心の中で、文句を言っておいた。


「面白い従者を、連れているようですね」


「ええ、人間界で拾ったのよ」


――『拾った』って・・・・・・


確かに、それに近いものがあるが、もう少し、言い方を考えて欲しい。


その後、ティナと校長は、なにやら話しをし、

ティナが入学証明書とやらにサインをした。


「これで、貴方も、この学校の生徒です」


「?」


校長は、何故か、俺の方を見ていた気がした。


ティナと校長室を出ると、ドゥンガ達が、先生に捕まり、

何処かに連行されている最中だった。


――あっ、捕まったんだ・・・・・


俺は、軽く手を振っておいた。

その途端、向こうが騒がしくなったけど気にしない。

ただ、ティナが俺を睨んでいた。


「もうしません・・・・・」


校舎を出た俺とティナは、校門に向かって歩く。


「明日から、学校よ」


「わかっているよ」


「なら、いいわ。

 でも、余計な事はしないでね、それと、生徒になっても、

 あんたは、私の従者なんだからねっ!」


「ん?

 生徒になっても?」


「そうよ、貴方もこの学校に通うのよ。

 勿論、生徒としてね」


俺は、まだこの世界の読み書きが出来ない。

なのに・・・・・


「あの、俺、字が読めないけど・・・・・」


「勉強しなさい。

 私の従者が、字も読めないなんて恥だから、

 明日までには、何とかするのよ」


「絶対無理!」


「そこを何とかするのよ、

 授業料は、私が出してあげるんだから、しっかりしなさいよね!」



俺は、突然この世界に連れて来られ、字も読めないのに、

学校に通う事になるなんて・・・・・


どうして、こんな事になったんだぁ!!!



不定期投稿の短編小説です。


お付き合い、有難う御座いました。


タロさ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 芳士頑張れ、君の苦労は続くぞ。 作者様お疲れ様でした。
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