引っ越しは、ある意味、大変です。
馬車は止まり、俺は1人で先に行く事になった。
――ホントにドSだな・・・・・・
仕方なく先に進む。
――ヴァンパイアの攻撃の仕方・・・・・・やってみるか・・・・・
魔力感知を試みると、反応があった。
敵の正体は、判らないけど数は、20。
真正面から戦うには分が悪い。
ならば、空から・・・・・。
空に上がり、分散している敵の背中に降りる。
魔物の正体は、オーガだった。
この場にいたのは、5体。
『血液操作!』
某アニメで見た事がある、これなら・・・・・
・・・・・反応なし・・・・・
そして、芳士の魔力反応で気付かれる。
「ウガァァァァァ!」
襲い掛かるオーガ。
「無理無理無理!」
慌てて、逃げようとするも、囲まれた。
こん棒を振りかぶるオーガ。
不味い!
「霧!霧!霧になれっ!」
振るわれたこん棒は、空を切る。
霧に変化した俺は、視界が広がり、360度、隙の無い視覚を得た。
次は・・・・・
俺は、戦い方法を探す。
霧のまま殴る。
効果なし。
魔法を使う。
使い方が分からない。
噛みつく。
噛みつけない。
何も出来ない!!
最後の手段として、霧のまま体当たり。
しかし、失敗してオーガの口から、体の中に入ってしまった。
「えっ!」
慌てて脱出を試みるが、何故か失敗して、オーガを乗っ取る。
「これなら!」
乗っ取ったオーガで、他のオーガに攻撃を仕掛ける。
俺は、オーガのスキルを使う事が出来た。
『ファイヤーボール』
他のオーガに攻撃を仕掛け、次々に撃破。
こちらも攻撃を受けるが、俺に痛みは無かった。
「これ、いいな」
4体のオーガを倒した後、次の集団に向かう。
「場所は、判っているんだから・・・・・」
相手を発見すると、透かさず『ファイヤーボール』。
「グワァァァァァ!」
叫びが聞こえて来たところで、接近戦に変更。
取り敢えず、こん棒で殴る。
殴られても痛くないので、反撃で殴る。
やっとの思いで、4体のオーガを倒す事には、成功したが、身体はボロボロ・・・・・・。
左腕は無くなり、首は曲がっている。
もう無理だな。
だが、問題発生。
どうやって元に戻ればいいのかが分からない。
焦って、ズレた事を念じる。
――分身っ!
――分裂っ!
変化がない・・・・・どうしよう。
焦って暴れていた為に、他のオーガに気付かれてしまった。
慌てて死んだふり・・・・・。
――気付かれませんように・・・・・。
現れた5体のオーガは、全く気が付かない。
よしよし、これで『霧化』すれば・・・・・。
そう思った瞬間、オーガから、離れる事が出来た。
――『霧化』を念じればいいのか・・・・・
その事を理解した俺は、透かさず近くのオーガの体を乗っ取り、
攻撃を仕掛けた。
20体のオーガを屠る事に成功した俺は、馬車に戻る為に、林道を歩く。
目の前に、馬車が見えたので、手を振る。
だが、帰って来たのは、優しい言葉ではなく、攻撃魔法だった。
「ちょっと待って!
俺、俺だよ!!」
馬車が止まり、『ホッ』としたのも束の間。
馬車から降りて来たティナの手には、剣が握られている。
「どういう事?」
「1体で、襲いかかるとは・・・・・ただの馬鹿か・・・」
ティナの目は、本気だ。
一瞬にして間合いを詰めると、剣を振り下ろされる。
「うわぁ!」
おれは、思い出したようにオーガから離れて、姿を見せた。
すると、ティナの動きも止まった。
「ん、芳士か、あまり驚かすでないぞ」
ティナは、剣を収めた。
「助かった・・・・・」
元の姿に戻る事に成功した俺は、馬車に乗り込む。
王都に到着すると、市場に立ち寄り、必要な物を揃えてから、屋敷に向かった。
貴族街に入り、密集した屋敷街を抜け、一段高い丘の上の屋敷に向かう。
「あそこが、お嬢様の屋敷で御座います」
同行しているエーリカが答えた。
馬車が、屋敷に到着すると、先行して、オスカー、クロウ、ザムが中に入った。
誰もいない事を確認出来ると、ティナとメイド達が屋敷に入る。
「芳士、早く来なさい」
「はいはい・・・・・」
ティナとメイド達と一緒に、屋敷内を探索し、一部屋ずつ見て回った。
2階の角部屋。
部屋は広く、ベランダも付いている。
ベランダからは、王都の貴族街が、一望できた。
――凄いな・・・・・まるで領主の屋敷だな・・・・・・
芳士が感心していると、ティナがメイドに伝える。
「この部屋が気に入ったわ、私、この部屋にするわ」
「畏まりました」
シーラが、一礼して部屋を出る。
芳士も便乗して、部屋を出る為に、扉に向かって進む。
「芳士、何処に行く気なの?」
「えっ?
俺も部屋を決めようかと・・・・・」
ティナは、不思議そうな顔をする。
「何を言っているのかしら、
貴方は、この部屋で私と一緒に住むのよ」
「いや・・・・年頃の娘さんと暮らすのは、ちょっと・・・・・」
ティナは、怪訝な顔をした。
「何をいっているの、貴方の部屋は、あ・そ・こ」
ティナが示した方向にあるのは、確か・・・・3畳程のウオーキングクローゼット。
「嘘・・・・・だよね?」
「私、嘘は嫌いなの」
「えっと・・・・・俺、道中、頑張ったよね」
「そんなの当然じゃない、私の安全の為に働くのが、下僕の役目よ」
俺は仕方なく、ウオーキングクローゼットを覗く。
「それと、空いたスペースに、私の服が入るから、汚さないでね」
――最悪だぁ・・・・・
その後も俺は抵抗を試みたが、無駄な努力におわり、今は掃除に励む事にした。
翌日の朝。
3畳の狭い部屋?の俺の布団の上に、覆いかぶさる影。
何かが触れた感触。
ゆっくり目を開けると、そこには、いつもの光景が待っていた。
「カーリアさんっ!」
「やっと起きましたか。
早く着替えて、朝食を」
「わかりましたから、そこをどいて下さい」
「何故ですか?」
「いや、上にいられたら起き上がれませんよ」
「そうでした」
俺から、離れたカーリアは、布団の横に立つ。
「あの・・・・・着替えたいのですが・・・・・」
「どうぞ、気になさらずに・・・・それと、急いで下さい」
「俺が、気にしますっ!」
3畳のクローゼットで、『バタバタ』騒いでいると、扉が開く。
「五月蠅いわよ!
芳士!
早くしなさいっ!」
「はい・・・・・」
顔を出したティナの一言で、その後は、無事に終わる。
着替えを済ませた俺は、ティナとカーリアと一緒に食堂に向かう。
「ところで、カーリアさんは、どうして此処にいるの?」
「昨夜の内に、お嬢様が、この屋敷で使用する家具を、運んできました」
「1人で?」
「違います。
私は、何かの化け物ですか?」
「いえ、すみません」
――全員、化け物ですよね・・・・・
そんな内心を隠しつつ、足早に食堂に向かった。
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