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別れと出会い(プロローグ)

初めまして、タロさです。


ゆっくり更新していこうと思いますが、宜しければお付き合い下さい。

俺の名は、白兎はくと 芳士ほうじ

多分17歳?


多分って言うのは、俺は施設育ちで、生まれてすぐに、

この白兎児童施設の前に捨てられていたからだ。

だから、年齢も誕生日も分からん。

名前も園長先生が付けてくれたんだけど、

放置されていたから芳士って駄洒落かよ!って思ったけど

案外、気に入っている。


でも、あと3日もすれば、俺は18歳になる(たぶん・・・)。

そうしたら、この白兎児童施設から、出て行かないといけないのだが・・・・・・

今、俺の前には、園長先生が難しい顔で座っている。


「芳士、お前、本当に出て行くのか?」


「ああ、仕事も決まったから、大丈夫だよ」


「そうか・・・・・」


園長先生が、難しい顔をしているのには訳がある。

17歳になった時から、俺の仕事を探してくれていたんだけど、

住んでいる所が、田舎と都会の中間みたいなところで、

噂話や、過去の出来事などを、よく覚えている。

だから、『あの子は、捨て子だった』とか、いつまで経っても消えない。

それに、その様な者達とは、関わりたくないと拒絶されている。

それについては、どこも一緒かも知れないけど、この街は、それが他よりも酷く、

万が一、そういう子を雇ってしまえば、

周囲の噂の的になり、生活し難くなるんだ。


だから、この白兎児童施設には、誰も関わろうとしない。

それに、今回は、捨て子の俺。

この施設に来た時から有名人。


誰も、雇ってくれる筈が無かった。

だから、さっき言った『仕事が決まった』と言うのは『嘘』。


ここを出て行った人達も、そう言ってこの施設から去っていく。

その後は、皆それなりに夜の街で暮らしているみたいなんだけどね。



そして、俺が、この白兎児童施設を旅立つ日。


「芳士、体には気をつけるよ」


「ああ、園長先生、今迄有難う。

 すっげぇ感謝してる」


「この先、何があるか分からないけど頑張るんだぞ」


俺は、頷いてから、園長先生と別れて歩き出した。


「先ずは、泊まる場所を探さないとな」


俺の財布には、5万円がはいっている。


園長先生が、園を出る時に、餞別代りにくれた5千円と、

15歳の時から、アルミ缶を集めて貯めた4万5千円があるから

当分は生活出来ると思う。


俺は、街を離れて、もう少し都会の隣街にやってきた。


「ここなら、寝る所、見つかるだろ」


街を彷徨いながら、寝床(橋の下、公園)を探したけど、

先客がいたりして、良い場所がない。

仕方なく、深夜、人が(ホームレス)集まっていそうな場所を探す。


その時、小汚いおっさんが声を掛けて来た。


「兄ちゃん、こんな時間に荷物を背負って何をしてるんだ?

 家出か?」


「違うよ、18になったから施設から出て来たんだよ」


おっさんは、少し考えこむ。


「仕事と寝床なら、この先のバスターミナルで待っていたら見つかるぞ」


「おっさんは、行かないのか?」


おっさんは、悲しそうに笑う。


「儂は見ての通り、足が不自由での、雇って貰えん。

 兄ちゃんなら、若いし、大丈夫だ」


「有難う、行ってみるよ」


俺は、財布から1000円を取り出し、おっさんに渡した後、

バスターミナルに向けて走った。

暫く走ると、バスターミナルが見えた。


俺は、走るのを止め、歩いて人の集まっている所を探した。

すると、ガラの悪い人達の集団に出くわした。


――こいつ等は、違うよな・・・・・


そう思って、目の前を通り過ぎようとしたのだけど・・・・・絡まれた。


「おい、兄ちゃん、此処を通りたいなら通行料払えよ」


一番弱そうな男が、声を掛けて来た。


「ごめん、お金持っていないんだ」


――関わるだけ損だ・・・・・・


そう思い、頭を下げて通り過ぎる。

だが、逃がしてくれる事は無かった。

俺を弱いと思ったのか、一番弱そうな男に、いきなり殴られた。


俺は、頬を殴られたが、あんまり痛くなかった。


――もう、反撃していいよな・・・・・


喧嘩は、園長先生に止められていたけど、もう、いいよね・・・・・・


俺は、反撃に出る。

殴って来た一番弱そうな男の顔面を殴った。

男の鼻が変な方向に曲がっている。

男は、流れ出した血を見て、青ざめる。


「ひぃ!」


それまで『ニヤニヤ』と見ているだけだった男達は、

笑いながら近づいて来る。


「兄ちゃん、慰謝料払えよな」


俺は、走って逃げようと思ったけど、周りを囲まれていた。


――仕方ない・・・・・


俺は、正面の男を睨む。


「はぁ・・・・・先に絡んで来たのは、お前達だろ!」


俺が、口答えをした時、鈍い音と共に、後頭部に衝撃を受けた。


「!?」


その後は、一方的に殴られ、蹴られた。

段々、意識が遠くなる・・・・・。


倒れた俺から、男達が何かを探している。


「あったぜ、なんだ、結構持ってるじゃん」


男達は、俺の財布を取り上げると、その場から去っていった。

意識が朦朧とする中、俺は、その様子を見ている事しかなかった。


――園長先生・・・・・ごめん・・・・・


そして、意識を失った・・・・。




芳士が意識を失い、暫く経った後、そのバスターミナルの方角から、

1台の黒塗りの車が芳士の横を通り過ぎる。


「止まりなさい」


後部座席に乗っていた少女は、芳士に気付き、車を止めさせる。

車から降りて来た少女は、ゆっくりと芳士に近づいた。


「あら、生きているわね、それに・・・・・いい匂い」


少女は、芳士の顔に付いていた血を拭った指先を口の中に入れる。


「あら、それに美味しいわ」


少女は、満面の笑みを浮かべた。


「【セル】、この男を車に運んで」


「畏まりました、お嬢様」


セルと呼ばれた男は、芳士を抱きかかえて車の後部座席に乗せる。

その後に少女が乗り込むと、車は走り出した。


車の中では、もたれ掛かる姿勢で座らされていた芳士だったが、

曲道で体勢が崩れ、少女の太腿に頭を乗せる形になった。


「申し訳御座いません、お嬢様、大丈夫ですか?」


「セル、気にしなくていいわ、そのまま走らせて」


膝枕をしている少女は、芳士の髪をかき上げて優しく撫でた。


――この子、私の物にするわ・・・・・

  だって、いい匂いもするし、血も美味しいんだもん・・・・・


少女は、恍惚した表情で口を開く。

その口には、小さな牙が見えた。


『カプッ・・・・・・チューチュー・・・・』


暫くすると、少女は、芳士の首筋から口を離した。


「お嬢様、彼は重体です。

 あまり吸い過ぎますと・・・・・」


「分かっているわよ、ちゃんと、私の下僕にしたから大丈夫よ。

 だって、そうしないと連れて行けないでしょ」


「そうですね、お嬢様がこの地に来て100年、

 やっとあの世界に戻れるのですから」


少女は、不貞腐れた表情を見せる。


「本当よ、こんな面倒くさい決まり、誰が作ったのよ!」


「さぁ、私にも判り兼ねます」


「まぁ、いいわ。

 もう帰れるのだし、お父様とお母様、お元気かしら・・・・・」


少女は、芳士の頭を撫でながら、窓の外を眺めた。



相変わらずの不定期投稿ですが、宜しくお願い致します。


更新に関してですが、月に3本程度とスローペースで、書いていこうと思います。


タロさ。

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