俺と好きな人
「あの4人の中だったら誰が好きなの?」
美浜さんは俺のことは見つめずにただ花火をみながらそう口を開く。
誰のことが好きなのか。
そんなこと考えたことはない。
幼馴染というひとつの括りでしか思ってもいなかった。
大体俺が恋愛感情を抱いたってあの4人は高嶺の花過ぎて告白するのも烏滸がましいぐらいだ。
多分そんな意識が知らないうちに芽生えていたのだろう。
だから恋愛対象として考えてもいなかった。
「誰が好き……」
「そう。少なくともあの子たちは裕貴くんに対して悪いイメージは持っていないはずだよ。ほかの3人は分からないけれど旭さんなんかはもしかしたら恋愛感情持ってたりするかもね」
美浜さんはそんなことを言ってくれるがどうなのだろうか。
雪はきっと俺の事嫌いだろうし、桜花が俺に恋愛感情を持っているだなんて以ての外だ。
幼馴染たちは全員俺が美咲と付き合い始めた時は自分の事のように祝福してくれていた。果たして好きな人が他の人と付き合い始めて快く祝福できるのか。
少なくとも俺は出来ない。嫉妬心塗れるに決まってる。
「ないですよ」
だから俺はそんな答えを出す。
「そうか。まぁ、私よりも裕貴くんの方が肌で感じてるわけだしそう思うのならそうなのかもね」
美浜は立ち上がり椅子を片付ける。
そして空を指さした。
「多分そろそろキャラクター花火が何発か打ち上がるよ。そして最後に間隔開けずにドバドバ花火が上がって花火はおしまい」
「はぁ……そうですか」
「じゃあ、私は中戻ってるから……あ、旭さんはメイド喫茶のこと言って欲しくなさそうだったから私の事はただの知り合いってことで通しておいてね」
「大丈夫ですよ。分かってますから」
「うん」
美浜さんは部屋に戻った。
誰もいないベランダで俺はボーッと花火を眺める。
すると有名なゲームのキャラクターやアニメのキャラクターらしき花火が何発か打ち上がった。
打ち上がる度に歩きながらみている人達からは「あー!」だの「おー!」だのと歓声が上がる。
その反応で花火に興味を示していなかった人たちも足を止める。
注目が空に集まっている最高のタイミングでフィナーレだと言わんばかりに花火が連発される。
空には鮮やかな花が咲きまくって、激しい音が耳を刺激してくる。
「すげぇ」
思わず言葉が漏れてしまうぐらいの長さ花火が打ち上がったあと空には白い煙が漂い、静けさが戻る。
どうやらこれで花火は終わりらしい。
締めとしては相応しい連発花火だったと思う。
満足した俺は部屋の中へ戻った。
「帰るぞー!」
部屋に戻った瞬間に由梨はそんな掛け声をかけた。
ラストの花火を見て夏祭りは完全に終わりらしい。
まぁ、夏祭りも花火も充実感のある1日だったと思う。
「うし。帰ろう」
こうして俺たちは美浜家を後にしたのだった。
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