俺と家主と
家から人が出てくる。
「お。全員集まってたんだ」
出てきたのは由梨だった。
姉はさも自分の家かのように「ささ。入った入った」と入るよう指示する。
良いんですかね。ここ貴方の家じゃないですよね。
人の家へ勝手に招き入れるって大問題だし、仮にここが姉の家ならばそれはそれで大問題である。
だが、他のみんなは何も違和感もなくズカズカと上がっていく。
もしかしたら女子ってその辺案外ルーズなのかもしれない。
置いてかれてたまるかという謎の闘争心が芽生え家に上がる。
どこに向かうのが正解なのか分からないのでとりあえず姉に着いていく。
リビングらしきところに出ると家主らしき人がソファーで寛いでいた。
「連れてきたよ」
「どうもいらっしゃ……」
相手は俺たちを見て言葉を失う。
俺もこの空いてしまった間を埋めようするが言葉が出てこない。
「ん? もしかしてこの中に知り合いでもいた?」
姉貴は悠長にそんなことを口走る。
別になにかやましいこたがあったわけではない。単純に驚いて、そしてどこまで踏み込んで話して良いのかを探りに探ると喋れなくなってしまう。
だって、目の前にいるの美浜さんなんだもん。
表札をしっかり確認すれば良かった。
美浜なんて苗字そこらにいる訳じゃないから表札を見れば気づけたはずだ。
田中とかさ佐藤とかありふれた苗字だったらきっと疑いすらしなかっただろうが、美浜だ。疑いはしたと言いきれる。
「久しぶり」
メイド服からはかけ離れたカジュアル系な服を身にまとっている美浜さんはソファーから立ち上がり俺の元へ寄る。
「あぁ……お久しぶりです」
美浜は視線を桜花の元へ向けるとそれに気づいた桜花は首をゆっくりと横に振る。
「んーとね、ちょっと色々とあってね会ったら挨拶するぐらいの仲にはなったんだよ。ね?」
「え、あ、そうですね」
物凄い圧力を覚え、俺は流れるままに頷いた。
「そうだったんだ。なら、言っておけば良かったね。知らないと思ってたから名前も言わなかったし」
「驚いたけど別にそれだけだから大丈夫だよ」
「そう?」
「うん。それよりも花火でしょ? 2階案内するから着いてきな」
メイド喫茶じゃないからこそなのだろう。
敬語は一切使わない。なんか凄く距離が近くなったような気がする。
俺らは美浜さんに案内され2階の寝室らしき部屋に通される。
そこにある窓から花火が見えるらしい。
まだ陽が沈むか沈まないかというような具合なので花火は始まらない。そもそも時間でもない。
「ベランダからも見えるから好きに使って」
「ありがとうございます」
桜花は一目散にお礼を言い俺達も続けて頭を下げる。
やっぱり上下関係が目に見えるわ。上司と部下だもんね。仕方ないよね。
「気にしないで。1人で寂しく見るより全然良いから」
「佳奈ったらね、この前彼氏にふら――」
「皆花火楽しんでね。後、由梨ちょっと来て」
由梨は美浜さんに首根っこを掴まれながら退出する。
俺の姉貴やっぱり口軽いよな。口軽女も良いところだ。そのうち殺されても文句は言えねぇーな。
いつもありがとうございます。
ブックマークや評価ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします!




