俺と策士と
「とにかくこの子の姉ちゃんを探そうと思ってな」
「それで裕貴とお姉ちゃんを付き合わせるの!」
「何言ってんだ」
「そうね。それはあまりにおかしな理論ね。鎌ヶ谷くんが良くても貴方のお姉さんはきっと拒否するわよ。きっと付き合うぐらいなら切腹するわ」
「そこまで言われるのも悲しいんだけど」
「お姉ちゃんの元カレ裕貴みたいな顔の人だったし多分付き合えるよ!」
かのんは勝手にひとりで盛り上がる。
まぁ、俺なんて量産型男子高校生なわけだしそこらに似たような人はいる。
むしろ俺の価値は外見より中身だ。それは量産型男子高校生全員に言えることだろう。
見た目では良くも悪くも平均点なので勝負できるところは中身しか残っていない。
だから、量産型男子高校生は全員中身を磨くのだ。特にスマホの検索履歴とか見ると悲惨なことになっていると思う。
モテる方法だとかモテる性格だとか女子ウケなキャラとか強欲な検索履歴がワイワイ湧いてくるはずだ。
昔の俺がそうだったからね。仕方ない。
「でも、鎌ヶ谷くんはもう少しで集合場所に行かなければならないはずよね」
「あぁ。だから時間いっぱいまで探して見つからなかったら交番に連れていくんだ」
「なら、最初から連れていけば良いじゃない……まさか、それを口実に誘拐でもする気じゃないでしょうね」
「そんなわけないだろ。大体俺はロリコンじゃない。むしろ年上好きだ」
「そう。由梨さんに言っておくわね」
「面倒なことになるからやめてくれ」
こんなやり取りを見てかのんは「わー。リアル痴話喧嘩だー」と楽しそうにしている。
本当にこの子どこからそんな言葉覚えてくるわけ? 痴話喧嘩とか小学校高学年ですら分からないと思うんだけれど。
どんな家庭なの? 常にドロッドロな昼ドラがテレビで流れてる家庭なの?
しかも痴話喧嘩じゃないしな。
「これは痴話喧嘩ではないわよ。あくまでも私が一方的に鎌ヶ谷くんを痛みつけているだけだもの」
「いじめー?」
「そうね。人によってはそう見えるかもしれないわ。だから否定はしないでおくわね。でも、鎌ヶ谷くんはそういうことをされて喜ぶ寂しい人間なのよ」
「待って。勝手に俺をドMにしないでくれる? マゾじゃないから」
「マゾ……?」
かのんはちょこんと首を傾げる。
その後「マゾ……? 魔女……?」と混乱し始めた。
「あら。鎌ヶ谷くんは子供の前でも平気でそういうことを言っちゃうのね」
「クソ……はめやがって……」
かのんがワイワイ騒ぎ、雪が俺をひたすら言葉の暴力を振るっているカオスな状況の中「あ……かのん!」と女性の声が響いた。
どうやらお姉さんが迎えに来たらしい。
ゆっくり歩きながらで良かったよ。このある種修羅場な状況からも抜け出せるし、集合場所にも間に合いそうだし、ロリコン扱いも受けなさそうだし完璧だね。
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