俺と迷子と幼馴染と
探してやると啖呵を切ったのに俺たちの間でまたはぐれたりしたら笑い事じゃない。
それこそミイラ取りがミイラになる的な状況に陥る。
だからかのんとは手を繋いで歩く。
平凡な高校生顔のおかげで微笑ましい視線を周りから送られるのは非常にありがたい。
「それで何か特徴はあるのか? 俺にはかのんの姉なんか全く分からないんだけど」
「うーん。髪の毛が長くて細い! あとは……可愛い!」
「随分抽象的だな」
「かのんみたいに可愛い」
このあざとさ何なの?
どこでそんなの覚えてくるんだ?
もしかして姉がこんなあざといぶりっ子なの? やだん。恋しちゃう。
「……鎌ヶ谷くん。ついにそこまで落ちたのね」
「ひぃ……」
思わず変な声が漏れてしまう。
後ろから声をかけられただけだが誰が声をかけたのか。なんならどんな表情をしてどんな感情を抱いているのかまでわかってしまう。
「雪……違うんだ。これには深い事情があって」
「もしかして裕貴の彼女?」
「ちょっ……話をややこしくしないで」
俺の隣でかのんは楽しそうに「裕貴の彼女だー!」とワーワー楽しそうに騒いでいる。
この子さっきまで迷子で泣いてたんです。本当ですよ。今そんな様子1ミリもないけれど本当なんです。信じてください。
「とりあえず……110番と由梨さんどっちに電話をかけて欲しい? そのぐらいは選ばせてあげるわ。情ってやつね」
「早まるな。そしてどっちも選択肢として最悪だよ」
「あと、一宮って呼びなさい。下の名前で呼んだりするから勘違いされるのよ」
はぁと露骨に聞こえる声でため息を吐かれる。泣いても良いですか。
「一宮さん」
仕方ないのでそうとりあえず言っておく。
何故か満足そうな顔をしたのでとりあえずオッケーだ。マジで意味は分からない。
「それで裕貴この人は誰? どんな関係? 彼女?」
「とりあえず彼女ではない。俺に彼女はいないし、作る気もサラサラない」
「あら。彼女に振られた男が言うセリフとは思えないわね。彼女はいなくなったし、作れる気は全くないが正解だと思うのだけれど」
冗談だとしてもえげつないし、冗談じゃなく本音ならもっとキツい。
「じゃあ裕貴には彼女いないの?」
「そうなるわね。この男と一緒に歩ける人なんて限られているもの」
「ひっでぇな」
「それで鎌ヶ谷くん。この子はどこから連れてきたのかしら。さっさと返さないと110番しなくてもあっちから鎌ヶ谷くんを捕まえにくるわよ」
「ちげえよ。迷子だよ迷子」
「あら。にしては元気そうだけど」
「迷子が全員泣いてるとかいう固定概念は捨てろ」
「そうね。じゃあ、この子は迷子ね」
「迷子じゃないから。お姉ちゃんを探してるだけ」
「それを世間一般では迷子と言うのよ」
雪は俺と同じようなことを口にする。
やっぱり幼馴染なんだなぁと感心したが良く考えたら誰でも同じツッコミをするのでなんな恥ずかしくなっちゃった。
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