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俺とママと

 「とりあえずママはどこだ?」


 「ママ居ないよ」


 「そりゃ俺だって見りゃ分かるさ。どこからどうみたって迷子だもんな」


 「迷子じゃないし!」


 謎のプライドを持ちふんっとそっぽを向く。

 なんだコイツ? 夏海か? 夏海だろ。


 「じゃあなんだよ」


 「……お姉ちゃんが迷子?」


 あー。なんだろう。言いたいことは分かる。

 姉貴って好き勝手ブラブラ歩くから気付くと居なくなってんだよな。

 それで何故か俺が迷子になったことになっちゃうし。少しは気を使えっての。

 まぁ、世間一般的には明らかに小さい方が迷子だから致し方ない。


 「そうか。そりゃ気の毒だな」


 「うん」


 「それで名前は?」


 「名前は聞く前に自分から言うんだよ。そんなことも知らないの?」


 突然勝ち誇ったかのようにドヤ顔される。

 一切勝負なんかしていなかったがそんな反応をされると負けたような気持ちになる。


 「はぁ……鎌ヶ谷裕貴だ。よろしく」


 「かのん」


 「そうか。うし、じゃあかのん。交番行くか」


 声をかけたのは良いが俺にはあまり時間が無い。

 後2時間ぐらい早く遭遇していればきっと手厚くサポートしてやれたのだろうが集合場所に行かなくちゃならない。

 だから、さっさと交番に連れていき迷子ですとかのんを突き出す。


 「やだ。交番行きたくない」


 「は? んなワガママ言うなよ」


 「交番やだ!」


 せっかく涙が引いていたのにまたうるうるし始める。

 このままだとまた泣き始めるなと察する。本当に勘弁して欲しい。


 「じゃあどうすんだよ。かのん1人にする訳にも行かないだろ」


 「裕貴と一緒にいる」


 「は? 今は良いけどお母さん心配するぞ」


 「だから、ママ居ない。お姉ちゃんと来たの」


 「じゃあ、姉ちゃんが心配すんぞ」


 かのんはフルフルと首を振る。


 「大丈夫。心配しない」


 「本当かよ」


 「うん。本当。多分お姉ちゃんはかのんが居なくなったことにすら気づいてない」


 姉への評価低すぎやしませんかね。

 由梨への評価ですらもう少し高いぞ。まぁ、気持ちだけどな。


 「でもなぁ。俺にも用事があるから面倒は見れねぇーんだよ」


 「じゃあその用事までお姉ちゃんを探して」


 「そりゃ構わんけど。見つからなかったらどうすんだ?」


 「そしたら交番行く。仕方ない」


 「なら最初から行ってくれ」


 「それはやだ。交番には行きたくない」


 頑なに交番へ行きたがらないかのんを仕方なしに引き連れてかのんの姉を探すことにする。

 と言っても俺はかのんの姉に会ったこともないし、そもそもどんな人かも分からない。

 写真ぐらい見せてくれと言おうとしたがスマホを持っていないだろうから写真も無いだろうと自己完結した。


 「まぁ、30分だけな。それ以上は付き合えん」


 「うん。裕貴ありがとう」


 今ふと思ったが年下に呼び捨てで呼ばれるのも悪いものじゃないな。

 流石に下すぎるけどな。

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