俺と迷子
お好み焼きを食べ終え俺は歩く。
何だかんだお好み焼きを食べるだけで30分も消費できた。デカすぎる。
あと30分ぐらいならゆっくり歩けば集合場所に到着するかななんて思いながら歩いていると道路の脇で声こそ出していないが泣き顔をしている女の子を見つける。
「うわぁ……迷子だよ。迷子」
声をかけるかどうか悩んで足を止める。
だが、周りのカップルも大人もファミリーもみんな見て見ぬふりをする。
なんなら「お父さん。迷子!」、「お前は迷子になるなよ」と反面教師にされていたりもする。酷い話だが、この世の中だ。
変に声をかけて変質者扱いされてしまうぐらいなら心を鬼にして見て見ぬふりをするのが自分を守るという点においては正解だろう。
俺も見て見ぬふりをしようとするが目を逸らすと頭にあの女の子の泣き顔が浮かんできてしまう。
そして気付くと目であの子を追っている。何度も何度も繰り返し見ては逸らし見ては逸らし……もちろん女の子の方も視線に気付くわけで、うるうると今にも決壊しそうな目でこちらを見つめてくる。
幾ら心を鬼にしようともそんな顔をされては手を差し伸べない訳にはいかない。
あ、別にロリコンじゃないからね。うん。確かにアニメとかの妹キャラは可愛いなって思うけど決してロリコンじゃないから。
「君どうしたの?」
仕方ないので近くまで行きしゃがんで話しかける。
やっぱり目線は同じじゃないと怖がらせちゃうからね。
「……誰?」
うるっと可愛い目をしつつ睨んでくる。
警戒されているようだがその一挙一動が可愛い。
「んー。誰って言われると難しいなぁ」
迷子を保護しようとした人間ですと真っ当なことを口にしたってきっと理解はして貰えないだろう。
理解してもらえて且つ怪しくない方法を探さなくてはならない。
「泣いてる子を放置出来ない大人だからさ」
周りの大人を利用する作戦でいくことにした。
大人と名乗っているのは高校生と素直な話をしたところで信用を得られないと思ったからである。
中途半端な学生であれば大人と名乗った方が安心感も段違いだろう。
「なんで!? 泣いてないもん!」
プクッとフグのように頬を膨らませる。
口ではそう言っても身体は素直なもので涙腺がさらに崩壊しかけている。
ここで思いっきり抱きついたら大泣きしそうなレベルでじわじわと目を潤わせている。
いや、抱かれるのが嫌だから泣かれるんじゃなくて安心感で泣いちゃうんだよ?
抱きついて「抱きつかないでー」とか叫ばれたら精神的にも社会的にも裕貴死んじゃう。生き返れない!
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