俺と似たような去り方と
「ゆーくんだよね?」
目の前には美咲がわたあめを持って立っていた。
ふわふわそうでまるで雲みたいなわたあめ。
美咲がパクっと口にするとその部分だけフワッと口の中に消えていく。
わたあめなんて久しく食べていないなと見つめていると美咲はニコッと笑う。
「あー、ゆーくんもしかしてわたあめ食べたかったりする?」
「いや……懐かしいなとは思ったけど」
「んー。私のわたあめ少しぐらいならあげても良いんだけどねー」
美咲は俺の回答を待たずにホイッとわたあめを差し出してくる。
幾ら元カノとはいえこんな所で躊躇なく口にはしない。
「いらん」
「んー。ゆーくんダメだなぁ……昔は照れながら食べてくれたのに」
「そりゃ関係が違うからな」
「そっか……」
美咲は少し寂しそうな顔をする。
中身が幾ら腐っていようが見た目だけはピカイチだ。
そんな美咲が公衆の面前で寂しそうにすると俺が悪者扱いになる。
別にその周りの人を責め立てるつもりは毛頭ない。だって、俺だってそうすると思うもん。
まだ寂しそうな顔をするだけならセーフかもしれない。泣かれたりしたら取り返しがつかなくなる。
良くて振ったと思われ、最悪の場合だとセクハラだの痴漢だったりと犯罪者だと思われて集合場所に行くどころか警察署に行くことになってしまう。
「でも、わたあめ美味しいよ?」
見せつけるかのように美咲はわたあめをパクリと食べる。
「あー……」
食わなかったら美咲はどんな顔をするのだろうと思うと言葉が詰まる。
言いたいことが無いわけじゃない。ただそれを口にすると色々な面で分が悪くなりそうなのだ。
出来れば上手く回避したい。
だが、上手く回避出来そうな言葉が出てこない以上素直に従ってわたあめを口にするか、心の中で美咲に思っていることをぶちまけるか、食わないの一点張りをするかの選択肢しかない。
どの選択肢を選んでも最終的に俺が苦労することになる。
逆にどれを選んでも俺が苦労する未来が待っているのなら変わらないような気もする。
それならワンチャンに賭けて食べないの一点張りをしようと思ったその時ふと頭から降りてくる。
「俺お好み焼き食ってるからいらんわ。結構お腹いっぱいなんだよね」
我ながら完璧な回避術だと思う。
お腹いっぱいだなんて嘘だしそもそもわたあめ一口ぐらいならお腹いっぱいでも食べられる。
でも、会話のキャッチボールをしている最中だとそのことには気付かないだろう。
「そっかー。残念」
美咲はそう言って軽く微笑むとまたパクリとわたあめを口にした。
「……あれ?」
美咲は左右を軽く確認して首を傾げる。
その後、後方確認をしてもう一度左右を確認した。
「ヤバい……」
美咲はそう小さくつぶやく。
「ゆーくんごめんね。急用が出来ちゃった」
美咲はそういうと突然走ってその場を去った。
何が何だか俺には理解出来ないがまぁ、どうにかなったようだ。
冷めきったお好み焼きを口に入れホッとした。
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