俺とあいつと
紆余曲折を経てまた1人になる。
これだけ人の入れ替わりが激しいと自分が一体何をしたくてここに居るのかすら見失ってしまいそうになる。
まぁ、実際問題やりたいことが無いんだけれどね。
桜花は1人で食べ歩きしているのだろうし、楓は今パーッとどこかへ行ってしまった。姉貴はどうせその辺で捕まえた男にあれやこれやと物を乞食しているだろうし、雪に関しては……予想すら出来んな。
順当に行けば夏海を誘ってまた目的もなくブラブラするべきだろうと思いスマホを取り出す。
「あぁ……電波届かなかったんだな。忘れてたわ」
連絡手段がないことに気付きそっとスマホをしまう。
「ま、1人で練り歩いたって変わらねぇーか」
1人で結論を出し1人歩きをすることにした。
集合時間まではもう1時間無いぐらいなのでその辺でダラっと座っているでもなんとか時間は潰せそうだが何せスマホが使えないのは痛すぎる。
スマホが使えれば1時間なんて屁でもないのにスマホが使えないとなると途端に1時間は拷問と化す。
それに周りからの目線も痛いだろう。
わざわざ祭りにきた挙句、周りに友達や彼女を連れているわけでもなくただただ意味もなくボーッと座る人が居たら悪目立ちする。少なくとも俺がその人を観測する立場であれば「なんだコイツ」という目線を送ってしまうだろう。
だから、座りたくはない。せめて何か食べるのであればきっと夏祭りの風景として溶け込める。
「うーん。そうだな。とりあえず何か食って時間潰すか」
とりあえず一番最初に目に入ったお好み焼きの屋台でお好み焼きを買う。
そしてすぐ近くにあった空きスペースに座ってお好み焼きを食べる。
わりとガッツリ系のお好み焼きなのでゆっくり食べれば平気で10分近く時間を潰せる。夢のような食べ物だ。
1口食べて前をぼーっと意味もなく見つめ、また口にする。
そんなことを繰り返していると目の前に今1番出会いたくない人間にそっくりな人が通り過ぎる。
会いたくない本人である可能性は正直かなり有り得るのでわざと俯き目を合わせないようにするが時すでに遅し。
相手は俺を見つけたようでこちらへと歩み寄ってくる。
それでもまだ距離的には遠い。
俺が自意識過剰なだけかもしれないし、そもそも見間違えかもしれないと思い俯いたまま視線だけチラッとその人がいる方向に向けると会いたくないランキング1位のあの人と瓜二つであった。もう確定だ。
もうこうなると俺に出来ることはただ一つで別人の振りをしてお好み焼きを食べることだけだ。
俺はあいつを知らない。うん。知らない。あー、お好み焼き美味しいなぁー。
いつもありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!




