俺と幼馴染たちと
1つやることを終えるとまた目的もなくだらだらと歩く。
ソースの香ばしい匂いや油が弾ける音など視覚だけでなく嗅覚や聴覚から食欲を煽ってくる。
ある意味これこそ夏祭りらしさなのかもしれない。
「アンタこれからどうするの?」
「んー。行きたいところも無いしなぁ。夏海はむしろどこ行きたい?」
「そんなこと言われたってないものは無いから」
「強いて言えばなにか食いたいかもなぁ」
これだと本当にただただ練り歩くだけになってしまうと思い適当なことを口走る。
焼きそばは確かに食ったがあれだけでお腹が満たされるわけもない。何せ俺はまだ高校生だからね。
食べても食べてもお腹が空くお年頃。マジで成人したら一気に太りそうだって思うぐらいには食欲旺盛だ。
先人元い先輩の話を聞く限りだとそのうち食欲は落ち着いてくるから食えるうちにいっぱい食っとけと言っていた。
だから気にしてはいない。
「じゃあ何食べる? たこ焼き? お好み焼き?」
「結構ガッツリだな」
「は? アンタが何か食べたいって言ったんでしょ」
「すみません……」
クレープとかタピオカだとかそういう女子が好きそうな食べ物を引っ張ってくると思っていたので思わず言葉が漏れてしまい怒られてしまう。
「そうだな……」
なんでも良いなぁと思いつつもそんな優柔不断みたいな答えを出したらそれこそ夏海が怒りそうなのでとりあえず悩んでおく。
悩みに悩んだんだけれど答えが出なかったんだよっていう言い訳はかなり大切だ。
努力を表に出せば相手は認めてくれる。例え見せつけるための努力だったとしてもね。
「裕貴!」
なんの脈絡もなく誰かが後ろから抱きつく。
夏海は目を細め俺を睨み抱きついてきた人は俺に体重をグググッとかけている。
「誰? マジで誰?」
俺はしゃがんで抱きついてきた謎の人物を強制的に剥がす。
そして振り返るとそこには楓が満足気な顔をしながら立っていた。
「楓かよ」
「どうも。楓ちゃんです」
漫画だったらニヒという効果音が付いてそうな笑みを見せる。
「それよりも! 楓と離れたと思ったら夏海は裕貴とデートしてたんだけれどどういうこと」
「はぁ!? コイツとデートとかありえないんだけど。たまたま見かけたから一緒に回ってただけだから」
「えー。ずるい! 楓も裕貴と祭り回りたい!」
楓は子供のようにごねる。
「たまたまなら楓が裕貴を貰っても良いよね! デートじゃないんでしょ?」
「ち、違うから! 良いよ。あげる。楓にあげる」
勝手に無償トレードが成立しちゃったよ。
俺の意思は無いの? FA権は行使出来ますか?
「成立〜! じゃっ、裕貴はかわいいかわいい楓ちゃんと回ろー」
楓は躊躇することなく俺の手を掴みそのまま引っ張られた。
夏海も追いかけることなくただ呆然と立ちすくみ俺たちのことを見つめる。
ってか、せっかく2人は再会したのにそれで良いんですかね。
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