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俺とツンツン野郎

 1人になったから何をする訳でもない。

 ただ適当に練り歩き時間を潰す。


 集合時間までざっと2時間ぐらいはある。

 2時間ずっと何の目的もなくだらだらと歩くのはさすがに苦行だ。

 駅前のベンチでも陣取って大人しくしていようかと思い駅前に向かうと夏海がこちらをギロっと睨んでいる。

 自意識過剰過ぎるかと思ったがあれは明らかに俺だ。


 理不尽にキレられるんだろうなと思い踵を返そうとした時には夏海が走ってこちらに来ていた。

 捕捉されるだなんて悠長なこと考えていると夏海は足が引っかかったのか俺の目の前でよろける。

 流石にここで転ぶのは周りの目もそうだし、浴衣も汚くなると思い咄嗟に手を出す。


 「あっ」


 夏海が俺の手を上手く掴んだのでそのままの勢いで夏海を引き寄せ抱きしめるような形になりながらも体勢を立て直させる。

 どうにかなったなと1人でホッとしていると夏海にバシンと背中を叩かれる。


 「アンタなにどさくさに紛れて抱きしめてるわけ? 変態なの? 痴漢なの? 警察呼ぶよ?」


 顔をカーッと赤くした夏海は勝手に俺を犯罪者に仕立て上げる。

 確かに抱きしめちゃったのは俺が悪いけれど助けてその仕打ちはちょっと悲しい。裕貴泣いても良いですか。


 「ちげぇーよ。それよりも怪我はしてないか?」


 「大丈夫。ありがと」


 さっきまでの罵声は嘘だったかのように勢いが消滅する。

 急に勢いが無くなるのはそれはそれで反応に困るからやめて欲しい。


 「それでアンタいつまで抱きしめてるわけ? 周りの目線もあるからさっさと離してくれない?」


 「あぁ。すまん」


 俺はそう言われてやっと離す。

 まぁ、少なからず女子を抱きしめてる高揚感を味わっていたってのもあるが1つどうしても気になって考え事をしていた。だから夏海を抱きしめっぱなしだった。

 弾力もあって悪くなかったよ。


 「楓はどうしたんだ? 一緒にどっか行ったろ?」


 「あー……アンタ変なところだけ鋭いよね」


 夏海は人差し指で頬を掻きながら気恥しそうに照れ笑いをする。

 道の中央で話すのも邪魔になるので夏海を道路脇に誘導しながら話を聞くことにした。

 話せと諭さなくても自分で喋り始めたのできっと大喧嘩したとかでは無いのだろう。

 喧嘩の仲裁をしてくれみたいな厄介事は勘弁だからね……違うよね。


 「あれが欲しいこれが欲しいってあっちこっち好き勝手2人で回ってたらはぐれちゃったんだよね」


 「んだよ。てっきり喧嘩したのかと思ったわ」


 「アンタね。私たちのこと舐めすぎ。私たちもう喧嘩なんてしないんだから」


 ムフンと夏海はドヤ顔をしてみせる。

 昔はあんなにしょうもない事でさえ喧嘩していたのにね。人って成長するんだな。


 「合流しないの?」


 「うーん。したいんだけどさ。連絡出来ないんだよね」


 夏海はそういうとスマホを見せてくる。

 そこには我が物顔で居座っている圏外の文字。

 どうやら人混みすぎて電波の入りが悪いらしい。

 時々圏外じゃなくアンテナマークが1つだけひょいと現れたりするがすぐに圏外になるのでメッセージを送信したりは出来ない。

 メッセージの受信は出来るのだが楓も状況は同じだろうと考えるとメッセージが来ることはないだろう。


 「それに楓と回ってても一緒にいるようで別行動だったし良いかなって。多分あっちもそう思ってるだろうから」


 「そうか? 案外泣きながら探してるかもしれねぇーぞ」


 「楓はどうせ『まぁ良いか。それよりもチョコバナナが食べたいなぁー』とか言って今屋台に並んでるはずだね」


 んなわけないだろと突っ込むつもりで居たのだが安易にそんなことを言って並んでいる楓が想像出来たので突っ込むのはやめておく。


 「まぁ、それにアンタと回るのもありかなって思ってたしね。私に少し付き合いなさい」


 「はぇ」


 「は? 別に一緒に回りたかったわけじゃないから。あくまでも恋人ごっこしてた時ちょっと楽しいなと思っちゃってもう1回ああいうのアンタとやりたいと思っただけだから。勘違いすんな!」


 早口でそんなことを言い切ると俺袖を優しく掴み前を歩く。

 仕方ないので俺も夏海に着いていく。

 今のって俺褒められてたのかな。それとも貶されてたのかな。マジでわかんねぇーや。

いつもありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 夏海は典型的的ツンデレですなぁw ある意味安心します。
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