俺と夏祭りと
地域の大きな祭り。大祭と自ら名乗っているだけあり本当に大きい。
駅前の道路を塞いでざっくり一駅分ぐらいずらりと屋台が並ぶ。
駅前なので有料駐車場なんかも結構ありその駐車場にも余すことなく屋台が並ぶ。
花火は駅の裏にある大きな山で行われる。
山で花火とかダメだろうと思うだろうがその考えは甘い。
東京なのに田舎だ。山にだって広大な土地はある。
広大な土地があるということは花火を打ち上げるのに困らないぐらいの広さを持った広場だって存在する。
そしてそれだけ大きな祭りなわけであり人混みがえげつない。
多分どっかの某夢の国と良い試合が出来るぐらいには人がいる。
いつもならうんざりする所なのだが、今日は幼馴染4人と姉を連れても人に紛れて悪目立ちしないのでむしろ有難い。
「まとまって行動しても好きなところ行けないだけだから集合場所と時間だけ決めて自由行動にしよう」
ザワザワとしている中俺はそう提案し受諾される。
この人混みだと集団でうろちょろするのは逆に迷惑だろうという判断だ。
そもそも迷惑になるとかの前に普通にはぐれてしまうような気もする。
何にせよこうやって終着点だけでもきっかりと決めておけば後々混乱するようなことは早々起こらない。
「お姉ちゃんの知り合いがこの辺に住んでてね。2階貸してくれるって言うからそこ集合ね」
「いや、どこだよ」
「うーん。そうだ。とりあえず皆に住所だけ送っとくねー。どうせ口で説明したって分からないでしょ」
この姉貴すげぇー適当な人間だなと思ったが口で説明するより効率的なのは間違いない。
だから変に突っ込んだり出来ず仕方なしに頷く。
「そういうことだからー。それじゃーねー」
姉貴はやることだけやるとさっさとどこかへ行ってしまう。
人混みの中を突き進まれるともうどこに行ったかは分からない。
「楓たちはどうしようか」
「んー。とりあえず端から回ってく?」
「あー。それ良いね」
楓と夏海もワイワイしながら姉貴とは逆方向に立ち去る。
雪と桜花はどうするんだろうかと思っていると既に雪の姿は見えなくなっていた。
隠密すぎる。いつ居なくなったんだよ。
一方桜花は1人残されてアワアワしている。
まぁ、そりゃそうなるよな。可哀想に。
「ゆーくん。一緒に行かない?」
ジーッと目が合った後に言われる。
何か桜花の中にある何かを押し殺してたような間に見えたけど俺と2人で祭り回るのってそんなに葛藤しないとダメなの? 泣いちゃうよ?
「良いけど。俺は焼きそば買ったらやることないぞ?」
あれだけ葛藤されると反応に困るわけでとりあえず逃げ道を作ってあげる。
俺が同情したように桜花も俺が1人だと同情して嫌々誘ってくれた可能性だって有り得る。
だから、逃げ道を作る。そしてこの逃げ道を使わないならもう知らない。俺悪くないもん。悪いのは逃げなかった桜花。
こうやって責任を全て人に擦り付け自分の心を保つ。
「大丈夫。あたしもどこ行きたいとかはないから」
桜花はえへへとハニカミながら応える。
こうして俺は桜花と夏祭りを楽しむことになった。
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