俺と幼馴染と図書室と
放課後。俺は雪を図書室に呼び出していた。
別に図書室である必要も放課後である必要も無い。
なんなら対面で話す必要さえないと思う。
だが、さっさと処理しなければならない。そして周りに聞かれると少し分が悪いそんな話。
なので、スムーズに話が進められそうな図書室を選定した。
今目の前に雪は座っている。
まぁ、物凄く機嫌が悪そうだ。
特に俺の足なんかを踏んでいるところとか不機嫌ポイントちょー高い。
なに? このご時世で暴力系キャラ目指しちゃってるの?
「急に呼び出して何かしら。振られた私を慰めて落とそうと思ってるのなら先に言っておくけど無理だから諦めて」
「なんでそうなるんだよ。告白する気なんてさらさらねぇーわ」
「そう。それじゃ何?」
口では言わないが早く話を進めろというオーラを全開にする。
「まだ好きなんだろ?」
「どういうことかしら?」
「話の流れ的に海くんの話に決まってるだろ」
「そうね」
雪は手を顎に当て唸る。
この反応から考えるに雪本人は自分の思いに蓋をしていることすら気付けていないのだろう。
無意識のうちに塞いでしまいもう好きじゃない諦めたんだと自覚する。
そしてその蓋が外れたその時に思いは爆発してしまうのだろう。
「好きじゃないわ」
雪は悩みに悩んだ末その結論を出す。
だが、その答えは偽物だ。蓋をしてしまっている本来の答えではない。
「それは嘘だ」
「嘘じゃないわ」
「じゃあ、海から告白されたらどうする? 付き合うだろ? 嬉しいだろ」
「そんなありもしない仮定なんて意味ないわ。考察するだけ無駄よ」
「逃げてるだけだ。自分の思いから逃げて見て見ぬふりをしているだけ」
「違う」
「違わない」
俺は一つ一つ丁寧に捻り潰し逃げる道を塞ぐ。そして同時に雪自身に自覚させるのだ。
本当は好きなのだと。
「雪は海くんのことが好き。まだ諦めきれてない。違うか? 好きならもう一度告白をしてこい。どっかのストーカーみたいにならないうちにな」
名も知らない夏海のストーカーを思い出す。
あのオタクみたいに拗らせた雪がストーカーしないとも限らない。だからここで完全に心を折らせておく。
蓋をこじ開け無理矢理気持ちを向き合わせる。
自分の心を保つためにきっと蓋をしているのだろう。
正直多分俺だってそうだ。
美咲に振られてからずっと自分というものを保つために蓋をしているのだと思う。
そんな自覚はさらさらない。でも、美咲に告白されて何も思わなかった。嬉しいとも悲しいとも何も。俺は俺できっと封じ込めているのだろう。
「だから、雪。もう1度ぶつかってこい」
悟を使って既に状況は作ってある。
きっと今頃悟が教室で海と話足止めしているはずだ。
大会前なのに手伝ってくれる悟はやっぱり親友だね。
「なんで私がもう1度告白しなきゃならないのよ」
「成功するかもしれないからだ」
「え、そうね。それなら考えてあげないこともないわ」
「だから。レッツゴーだ」
このチョロインをさっさと教室に連れていく。
成功なんてしないだろう。本当に申し訳ない。そして……玉砕してこい。
いつもありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。




