俺と懐かしき女性
ただ海が騒がしいだけといういつもと何ら変わらない授業を受けダラっとSHRをして放課後を迎える。
悟はそろそろ地方大会が近いらしく「甲子園行くから見てろぉー!」と俺に向かって叫んでウォォォォとキチガイのように走って部活へ向かった。
取り残された俺はこの無駄に視線だけ集まったこの状況をどうしようかと悩んだが何も無かったかのように帰れば良いかという結論に至ったのでさっさと立ち上がり鞄を持って教室を出る。
教室は冷房が効いており涼しいが廊下は暑い。
突然赤道付近に転移しちゃったんじゃないかって思うぐらいには暑い。
「ヤバい……この寒暖差はヤバい……」
思わず言葉を漏らしてしまう。
自販機でスポーツドリンクを買おうと小銭を入れボタンを押す。
こういう暑い時に飲むスポーツドリンクほどおいしい飲み物はない。本当に生き返ったと心から思える素晴らしい飲み物だ。
温泉の後に牛乳レベルで素晴らしい。
ボトンと出てきたスポーツドリンクを手に取りそのまま身体に流し込む。
生き返っちゃうね。最高。
「あ、ゆーくんじゃん」
この名前で俺の事を呼ぶ人は限られている。
桜花か……美咲か。この二択だ。
そして桜花はこんな声じゃない。この声は美咲だろう。
振られてから一切顔すら合わせていなかったのでどんな顔をして美咲の方を向けば良いか分からない。
もう中身の入っていないスポーツドリンクを飲むふりをしながら固まる。
何も無かったかのように「久しぶりだねー」なんて澄ました顔で言えば良いのか? それとも赤の他人を徹底して会釈だけすべきなのか? そもそも「みっちゃん」なんて呼んで良いのか? やっぱり「美咲」いや……ここは「美咲さん」って呼ぶべきかもしれない。
高速で思考を巡らせていると美咲は歩いて俺の目の前にやってくる。
そして上目遣いでしばらく俺を見つめて口を開く。
「ゆーくん一緒に帰ろっ」
「え……あ、あぁ」
反応に困りどっちつかずな反応を見せると美咲にパシンと背中を叩かれる。
悟の攻撃に比べれば可愛いものだが痛いものは痛い。
「今までみたいに接してよ! 関係が変わっただけなんだから!」
美咲は白い歯を見せてニコッと笑う。
こうやって改めて見ると本当にどこかのモデルさんみたいで可愛い。こんな子を彼女にしていたんだと思うと俺ってすげぇーなと自画自賛したくなる。
「でも、突然みっちゃん俺に話しかけるなんてどうしたの?」
これは心からの問いである。
なんだかんだでもう別れてから数ヶ月経った。
別れてから今日まで話すどころか顔すらも合わせていなかったのだ。
だからこそ、なぜ今突然話しかけられたのかが不思議で仕方ない。
最初から友達で居るつもりなら別れてすぐに話しかけてくるはずだ。
「もう1回仲良くなりたいなーって。後は色々お話したいこともあるからね」
ニコッと笑うと美咲も自販機に小銭を入れてスポーツドリンクを購入する。
スポーツドリンクを買うと「行こっか」と微笑み歩き出した。
いつもありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!




