俺と秘密
「鎌ヶ谷くんには難しかったかしら」
汗を拭いながら雪は微笑しつつ口にする。
そんな少しの微笑みが俺の体をゾワッとさせた。
暑いのに寒い。身体がバグりそうだ。
「告白をして振られたの。簡単な話でしょ」
「告白……誰にだ?」
「あら。今度は遠慮が無くなったわね。まぁ、悪くは無いかしら」
雪は少し頬を赤らめ寂しげな顔をする。
そして頬をバチンと叩き無理矢理笑顔を作る。
こういう時の笑顔って無理矢理過ぎて見るに堪えないというような展開が普通なのだろうが雪の場合は違う。
全てが吹っ切れたかのように晴れた表情を見せていた。
全てが吹っ切れたのならもう問題ないはず。なのに不思議と何かが引っかかる。
何が引っかかるのかは分からない。だからモヤモヤしてムズムズする。
「私も鎌ヶ谷くんと同類ってわけね」
「お前やかましいな。絶対それ言いたかっただけだろ」
「あら。そんなことはないのだけれど」
肩を震わせながらそんなことを言う。
顔も見せまいと逸らす。
絶対笑ってるよね。この子。
「それで誰なんだ?」
自分の中で引っかかる何かが見つからないので俺は話を引っ張る。
本来は人が振られた話題などさっさと逸らすべきなのだろう。
だが、ここで話を逸らすとこのモヤモヤは一生付きまとってしまうような気がした。
だから、俺はしっかりとこの気持ちを白黒させるために続ける。雪には申し訳ないが仕方ない。
「そうね。海くんよ。鎌ヶ谷くんと同じクラスのね」
「まぁた陽キャに告白したもんだな」
何部に所属しているのかも知らないがウチのクラスのムードメーカーだ。
正直悟以外には興味のきの字も無いので知らない。
だが、そこそこイケメンでそこそこ面白いヤツという印象はある。
でも、女を連れているイメージはない。彼女を持ってるという話も聞かないし、女子とワイワイ楽しく話していてもそれ以上は何もなさそうな雰囲気だ。
あれ。俺って意外とアイツのこと知っちゃってる?
「私がノートをなくしたのよ」
「はぁ……」
突然話し始めた雪にまともな反応をすることが出来ない。
「学校じゃなくて外で落としたし見つからないと思っていたのだけれど見ず知らずの私のノートを海くんは一緒に探してくれたのよ。放課後ずっと……そして見つかったの」
「そりゃ良かった」
「その時海くんにお礼を言ったら『気にしないで。こうやって良いことしてるっていう自己満足を押し付けてるだけだから』って言って立ち去ったのよ……なんか、カッコよくて」
「そう……」
今のセリフだけじゃ絶対的要素ではないので声を大にしては言えない。
だが、海は確実に捻くれ者だ。相手にすると面倒なタイプに間違いない。
「で、知らないうちに好きになってたのよ。まぁ、もう散ったのだけれど」
雪はカッコつけてそんなこと言うがただ振られただけだ。
結局俺の中に生まれた謎のモヤモヤは消滅しなかったが雪が恋をしたという面白い話を聞けたのでまぁ良しとすることにした。
いつもありがとうございます。
キャラアンケです。
最終回迎えてアナザーストーリー書く時参考にしたいのでよろしくお願いします。
追記
ここに貼れなかったのでランキングタグの所に貼り付けておきます。




