俺と不思議な幼なじみ
ふと姉貴の言葉が降ってくる。
なぜ泣いていたのか問うべきか。それとも何も知らないふりをするべきか。
どっちが正解でどっちが不正解なのか分からない。
絶対に厄介事だというのは分かりきっている。なのに興味はふつふつと湧き上がってくる。
「昨日泣いてたらしいな」
気付いた時には訊ねてしまっていた。
「あら。知ってたのね。由梨姉から聞いたの?」
「あぁ。今日なポロッと零してた」
「そう……まぁあの人に黙ってろと言う方が酷だもの。仕方ないわね」
自分の姉貴の評価がだいぶ低いことだけは理解出来た。
一応自分の身内が貶されている訳だがまともな怒りも湧いてこない。
むしろ当然だろうと腑に落ちてしまう。
大体俺だってそう思っているのだから仕方ない。
「そうだな。ウチの姉はそういうヤツだからな。まぁ、なんだ。泣いたところ見られたぐらいで気にすんなよ」
どう話を続ければ良いのか分からなかったのでそんな適当なことを口走り間を繋ぐ。
雪はジトーっという重たい目線をこちらに送ってくる。
何かやらかしてしたったかと焦ったがやらかしたのは由梨であり俺は何もやらかしていない。あくまでも事実を淡々と述べただけだ。そう。決して俺にデリカシーが無いわけじゃない。きっとそうだ。そうに違いない。
「そう……鎌ヶ谷くんらしいのかもしれないわね」
「は?」
予想の斜め上な言葉が出てきて思わず言葉が漏れてしまう。
普通に引かれていると思っていたので感心しているようなニュアンスで言われて驚いた。
じゃあ、さっきのジト目はなんだったのだろうか。
ますますわけがわからなくなるがもう考えようとしたら負けなのかもしれない。
雪はクール系なだけあり何を考えているのか基本的に理解できない。理解出来たと思っても次の日にはチンプンカンプンなんてざらだ。
天然というわけではない。しっかり自我は持っており世間から外れていない常識も持ち合わせている。
単純に持っている自我が俺たちとは違う方向へ伸びているだけだ。
一言で言ってしまえば不思議ちゃん。そう片付けられる。
「こういう時って普通は理由を聞いてくるものなのよ。でも、鎌ヶ谷くんはしてこなかった。面倒事には首を突っ込まないで逃げようとするその姿勢変わっていないなと思っただけよ」
「そうか」
俺は鼻の下を指で擦り少し冷静になって全く褒められていないことに気付く。
最初から最後までずっとやんわりと貶されていた。
雪の言葉を訳すと「お前は昔と変わらないでヘタレだな」というようになる。
つまるところ、雪なりの罵倒という訳だ。
「じゃあ聞くけどなんでお前泣いてたんだよ」
「人に何でもかんでも聞いてるとバカになるって言うわよね」
「聞けって言ったのお前だろ」
「仕方ないわね」
面倒臭いと言いたげに肩を落としながら溜め息を吐く。
多分何も無いいつもの状態であればイラッとしたのだろうが今は暑すぎてそんな所に体力を割いている余裕はなかった。
「振られたのよ。それだけ」
「へー。そっかぁ……は?」
右から殴られると思ったら真後ろからローキックを喰らったような不意打ちを喰らって理解する前に変な声が出る。
ちょっと時間を置いてもやっぱり何を言っているか理解できなかった。
いつもありがとうございます!
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16:00に投稿するの忘れていたので17:00(これ)、18:00、19:00で投稿することにします!