俺と違うメイド
「ご主人様はウチの桜花と幼馴染とか聞きましたけど本当ですか?」
「聞きましたってさっき盗み聞きしてたんじゃないんです?」
「あらぁ。バレちゃいました? でも中々店長の声が大きかったので丸聞こえだったと思いますよ」
「あの人うるさかったすね」
オムライスに夢中だった悟が手を止めたと思ったらそんなことを口挟み反応を待つこともせずまた執心にオムライスを口にする。
そんなに美味いのかと思い口にするとそこら辺のファミレスより美味いのでビックリした。
まぁ、そこらのファミレスにそもそもオムライスがあるのかは知らないが。
「でも、店長はそういう人ですから。変に堅くて怖い人よりマシですよ」
「そういうもんですか」
「そういうもんですね。ご主人様」
メイドのお姉さんは「はぁ疲れた」と素の声を出して近くの空いていた椅子を持って座る。
周りのメイドさんは立ち話なのに良いのだろうか。そんな視線を送りながら見つめているとメイドさんはニッコリと笑った。
「ここだけの話ですけど立ち話は基本的に何時でも逃げれるようにするためですよ。ウチには座ったお世話はNGなんてルールありませんから。気に入ったご主人様とは座ってゆっくり話すんです。仕事もサボれちゃいますし一石二鳥!」
この人堂々とサボるって言ったぞ。ご主人様の前でサボるって言ったぞ。
多分意識してお世話って言ったんだろうけどどっちにしろコンセプト崩壊しちゃってるよ。
「にしてもご主人様は桜花ちゃんと付き合ってないんだ。あんな可愛い幼馴染が居たら好きになっちゃいますよね?」
「違うんすよ。コイツ彼女居たんすけど別れたんすよ」
「なるほど。ご主人様は幼馴染の桜花ちゃんを置いて他の女の子と付き合っちゃったんですね」
メイドさんは何を理解したのか分からないがうんうんと頷く。
「そうなんすよ。しかもコイツの幼馴染旭さん以外にもいるんすけど全員可愛いんすよ。やばくないすか?」
その野球部が先輩に諂う時みたいな喋り方どうにかならんのかと言おうとしたが良く考えたらコイツ野球部だったので大人しく黙っておく。
「つまりご主人様は他の幼馴染の子と付き合ってたってわけですね。良いですね」
「あー、そうじゃないんすよ。全く関係ない可愛い女の子と付き合ってたんすよ。コイツ結構モテるんで」
「確かに。ご主人様の雰囲気はモテそうですもんね。優しい感じとか」
「優しい感じってそれ褒める言葉がない時に使うやつじゃないですか」
「んー。普段はそうなんだけれど、ご主人様の場合は本当に優しい感じがするんですよね〜」
「あー、それ俺もわかるっすよ。なんか寛容そうですもんね」
「そうですか」
「あ。そうだ。ご主人様は今好きな人とかいるんです?」
突然ぶっ込まれてオムライスが変なところに入る。
むせていると悟は楽しそうにゲラゲラ笑い始めた。
一旦ぶん殴りたい。マジで。
「……いないですね」
「へー。そうなんですね」
何か企んだかのような笑み。はっきり言って恐怖すら覚えるレベルだ。
「美浜さん。チェキ指名されたからよろしく」
「あ。はい。店長。んー。私かー」
店長に呼ばれ納得いかないような顔をしながらどこかへ去って行った。
「こんなに話さないといけないってメイドさんも大変だなー」
そんなことを言いながら悟はオムライスを食い終えた。
まだ俺のは残っているので処理するようにガツガツ食べ始める。やっぱりこのオムライス美味しいよ。
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