俺とオムライス
「メイドさんって良いよなぁ」
「あぁ。そうだなぁ。桜花じゃなきゃ色々妄想捗ったんだけどなぁ」
「俺は旭さんでも妄想捗るぞ」
「お前は桜花を同級生としか思っていないからだろ」
「そうだなぁ」
「ご主人様おまたせしました」
ゴゴゴゴココゴゴと恐ろしいオーラが見えそうな勢いで桜花はオムライスを2つ持ってくる。
声が怖い。怖すぎる。絶対に今の会話聞かれてた。
「オムライス失礼します」
ガチャンという皿が割れてないか心配しちゃうような音が鳴り響く。
接客という観点だったとしてもマイナスポイントなのにこれがメイド喫茶とか……俺はドSカフェにでもやって来てしまったのだろうか。
だが、仮に立場が逆だったらどうだろうかということを考えてみる。
俺がメイド喫茶でメイドの仕事をしている時に桜花と楓がやってきたとしよう。
「えー。裕貴何してるの? ウケるんだけど」
「ゆーくんがなんでここにいるし!」
あぁ。これだけで色んな感情が湧き出てくるね。
恥ずかしさ、惨めさ……他にも色々あるがとりあえず今すぐに消えてくれって本気で思っちゃう。
「桜花ちゃ〜ん。ご主人様にはもっと丁寧に対応しないと」
見られていたようで店長が駆け寄って桜花を注意する。
可哀想に。ご愁傷さまです。
「申し訳ございません」
店長は頭を下げた。
「あぁ。いや、頭あげてください。桜花は俺の幼馴染なので気にしないですよ」
「……そうか。なるほど。ふむ。面白い!」
タキシードの蝶ネクタイをクイッと整えるとギラギラ目を輝かせながら俺の右肩と桜花の左肩にそれぞれ手を置いてニヤつく。桜花は手を置かれ「ヒィッ」と可愛い声をあげた。
「あのぉー……俺は……」
完全に取り残された悟は申し訳なさげに出てくるが悟の声に被せる感じで店長はまた楽しそうに声を上げる。確信犯かもしれない。
「幼馴染だなんてそんなこと先に行ってよね。ご主人様も桜花ちゃんも」
「は……はぁ……」
「それで2人はどこまで行ってるの? 付き合っちゃってる? もしかして付き合っちゃってる?」
「店長。仕事の邪魔になりますので下がっていて貰えませんか? ご主人様も桜花ちゃんも困ってますよ」
後ろからいつの間にかやって来ていたメイドさんが店長の首元を掴んで厨房まで引き摺っていく。
俺は店長が連れていかれるのを見守った。
「はぁ……店長女の子っぽいでしょ?」
「女の子っぽいって恋バナ好きってことかよ」
「女の子っぽいって言ったらそれしかないし! とにかく。疲れたからちゃっちゃとやっちゃうよ……あ。忘れ物。ちょっと待ってて」
桜花はパタパタと走って厨房に戻った。
「なんだこれ」
悟は目の前に置かれたオムライスを見つめながらそう呟いていた。
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