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俺と親友と未開の地

 放課後の教室で俺はニヤついていた。

 なぜニヤついているのか。答えは1つしかない。

 あのメイド喫茶に行くことが出来るのだ。

 腐っても東京都民である俺がメイド喫茶1つでワクワクするなんて恥ずかしいだろと思う気持ちがある一方で東京という名の田舎に住んでいるのだから許されるだろうという気持ちが混ざり合い結果ニヤついている。


 「おーし。裕貴行こうぜ!」


 俺の机の前にやってきた悟は俺以上にニヤニヤしていた。

 まぁ、鏡を持っているわけじゃないので俺がどのレベルのニヤつきを公衆の面前に晒していたのかは分からないが少なくとも「イケメンが台無しじゃねぇーか」とガチなトーンで心から漏れてしまうぐらいにはニヤついていた。

 でも仕方ない。だってメイド喫茶に行くのだから。

 メイド喫茶とは男のロマンが詰まった店である。

 それと同時にハードルの高い店でもあるのだ。


 1人秋葉原、1人焼肉、1人カラオケ、1人映画と1人〇〇を網羅している俺でさえ1人メイド喫茶は躊躇しまくった挙句手を出せていない。

 いや、普通に男子1人で見知らぬメイド喫茶に入るのは敷居高すぎるでしょ。


 一緒に行ってくれる人と近いメイド喫茶という2つのポイントが組み合わさった今ニヤつかない男子の方がおかしいのだ。

 つまるところ、俺も悟も男子としてごく普通の反応をしているというわけである。


 「あぁ。行こう……夢の世界へ」





 どうやら駅前にあるらしい。

 高校の最寄り駅にあるのは非常にありがたい。

 もしかして客層高校生狙ってたりするのかな。まぁ楽しければなんでも良いか。


 悟がスマートフォンと睨めっこしつつメイド喫茶があるらしい場所へ案内してくれる。

 少し不安になるがビラに書いてあった住所をしっかりと打ち込んだので迷うだなんてことはないだろう。

 大体この辺りは俺たちの戦場だ。迷ったところで痛くも痒くもない。


 あっちだこっちだと右往左往する。

 あれ。さっきこのコンビニの前通ったなと思いながらも黙って悟に着いていくとまた同じコンビニが目の前に現れる。

 たまたまだろうと自分に言い聞かせ悟に着いていくとまたコンビニが現れる。


 「おい。なんで何度もここ来るんだよ」


 「いや……ちげえーんだって」


 悟は謎の弁明をしつつ俺にスマホを見せてくれた。

 悟の言いたいことが一瞬で理解出来てしまう。


 「は? ピン立ってるのここじゃん」


 「そうなんだよ。なんか分からないけどここなんだよ」


 不思議なことに指定した住所はこのコンビニがある所であった。

 もしかして悟は騙されてしまったんじゃないかと思いつつビラを見るとそこに答えが書いてある。3Fと。


 「んだよ。ここの3階じゃねぇーか。しっかりと確認しろよ」


 「悪い。浮かれてた……でも、こんな雑居ビルみたいな所にメイド喫茶なんてあるのか? 外観だけじゃメイド喫茶じゃないけれど」


 良く言えば雑居ビル。悪く言ってしまえば大麻栽培でもしてそうな建物である。

 1階にコンビニが入っているおかげでだいぶ見栄えとしては良いがコンビニが入っていなかったら心霊スポット扱いされてもおかしくないぐらいな雑居ビルだ。


 ただ、男というのはこういう雑居ビルに謎の興奮を示すもので、それに加えてメイド喫茶という付加価値まである。


 「階段はどこだ」


 俺たちの頭の中には引き返すという選択肢など毛頭なく雑居ビルの入口を探し始めた。

 コンビニの外壁に沿って歩くと裏の裏に階段を見つける。

 とても客を連れ込むような階段ではない。非常階段という言葉がぴったりな階段だ。

 しかし、軽く探した感じここにしか階段はない。


 「ここか?」


 「行くしかないだろ!」


 不安な俺とは相対的に悟は謎に張り切っている。

 まぁ、こうやって秘密基地を探すみたいな感じが楽しいから仕方ないっちゃ仕方ない。


 「メイド喫茶か。どんなもんなんだろうな」


 俺は急勾配な階段を登りつつそんなことを呟いた。

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