俺と笑った親友
次の日。
いつものように教室に入ると悟がこれ以上に無いぐらいニコニコしながらやってくる。
机に荷物を置いて座り悟の対応をする体勢に入った。
「よう」
「おう」
簡単な会話を交わす。
この1瞬1秒も嬉しそうに笑みを浮かべる。最早ニコニコしすぎて気持ち悪いと思ってしまうレベルだ。
「なんだよ。そんな変な顔して」
「は? 変な顔? 俺の笑顔ってそんなに変か?」
悟は顔をぺちぺちしながら焦りを見せる。
女の子だったらすげえー可愛いんだろうなと思いながらその一連の行動を眺めた。
しばらくしたら満足したようでペチペチした頬を赤く染めながら口を開く。
間違ってはいけないが別に惚れているわけでも怒っているわけでもない。
単純にペチペチと叩く力が強すぎただけだ。
俗に言うアホである。
ぶっちゃけ桜花と悟どっちが天然かと言われれば迷える。男の天然とか需要ねぇーけどな!
「変ではないだろ」
「まぁそうだな。かっこよすぎてウザイぐらいだ」
「おっ。ついに裕貴がデレ期突入か!? いやぁ。ついにですよ。お義父さん」
「やめろ。腐女子を喜ばせる必要は無いんだ」
「しゃーないな。裕貴の幼なじみの誰かを紹介して」
「嫌だよ」
「裕貴は裕貴だなぁ」
まだ表情を崩すことなく楽しそうに笑う。
そんなに終始笑顔だと本当に気味が悪い。冗談とかじゃなく本気で。
「それよりなんでそんなに嬉しそうなんだよ。彼女でも出来たか?」
「彼女出来たら女紹介しろだなんて言わねぇーだろ」
至極真っ当なツッコミが返ってくる。
悟に突っ込まれたという事実は受け入れたくないがあまりに綺麗なものだったので俺の負けだ。
「じゃあなんだよ。宝くじでも当たったのか?」
「当たったら学校来てねぇーから。それより聞いてくれよ!」
悟は興奮したのか俺の肩をガシッと掴む。
本人はそんなつもりないのだろうが力が強すぎて輩に絡まれたのかと思ってしまうほどだ。
少しぐらいは運動部だっていう自覚を持って欲しいものである。
「なにがだ」
「涼太のやつ振られたらしいぜ! 昨日部活で散々嘆いてたわ。あんな涼太久しぶりに見た」
フラッシュバックするように昨日のことが蘇る。
『楓の好きな人は人の観察が上手で、でも人と話すのは苦手で、なのに周りに可愛い女の子がたくさんいる人だよ。難しい物件なんだ!』
こんなに楽しそうな声で話す楓は久しぶりだ。
楓をこんなに幸せな思いにさせることの出来る人はきっと楓の隣に居て見劣らない人なのだろう。
「そうか。まぁ、楓は楓で幸せになって欲しいしな」
「いやぁー、にしても佐倉さんと涼太はお似合いだと思ったんだけどなー」
「そりゃねぇーよ」
悟は「えぇ!」と本気で驚いている。
もう俺は驚いたりしない。こいつは恋路に関しては使い物にならないのだ。感性がおかしすぎてお話にならない。
「そうだ……涼太が言ってたんだけれど『ありがとう。機会を作ってくれて。でもまだ諦めたわけじゃないから』って伝えろって」
「まだ諦めないんだな」
「初恋らしいしな。あぁー。俺も恋したいなー!」
露骨にチラッチラッと見てくる。なんなら「チラチラ」と声に出していやがる。
「俺は紹介しねぇーから」
「知ってた」
そんな会話を繰り広げているうちに担任が教室にやってきたのでお開きになった。
いつもありがとうございます!
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