主人公と幼馴染
告白された涼太は中々答えない。
他の人が喋るタイミングでもないのでまた沈黙が流れる。
告白されておいて黙るとかどんな贅沢だよと思いながら腹を立てていると涼太が喋り始めた。
「僕は付き合えない」
きっぱりと断る。
ふんわりと逃げるようにでは無くキッパリとシャットアウトするようにストレートにぶつけた。
「僕は人をいじめるような子と付き合いたいとは思わない……それに僕には僕で好きな人がいるから」
「そっか……知らなかったわけじゃないけど……やっぱりそう言われると悲しいかも」
「紗英……」
しんみりとした空気が流れる。
楓の存在を忘れてしまいそうなぐらい雰囲気がラブコメであった。
だが、涼太がすぐに楓の存在を思い出させてくれた。俺のもっとも嫌な方法で。
「僕は。僕は楓ちゃん。君が好きなんだ。楓ちゃんを見ているだけで胸が苦しくなって切なくなって……自分のものにしたいと思うようになって……今までこんな感情抱いたこともなかった。だから最初は自分が楓ちゃんに恋をしているだなんて思いもしなかった。だけれど分かったんだ。僕は楓ちゃんに恋をしている。だから! 付き合って欲しい」
目の前に振った女性がいるのに違う好きな女性に告白するという畜生過ぎる行為。
涼太本人が何を考え告白したのかは分からない。だが、今ここで告白するとは思ってもいなかった。
動揺し過ぎて教室に飛び出そうになるが楓が喋り始めたおかげで踏みとどまることが出来た。
同時に楓の返答にまるで俺が告白したかのような緊張感が走る。
「ありがとう。その……告白してもらえるのは凄く嬉しいです」
「それじゃあ、僕と――」
「でもごめんなさい。楓はあなたと付き合うことはできないです」
「え」
腑抜けた声が聞こえる。
涼太本人は本気で成功すると思っていたのだろう。膝から崩れ落ちるような音こそ聞こえないが「え」という一言から全ての心境を察することが出来てしまう。
「ずっと楓思ってたんだ。柏くんって喜怒哀楽の表情全部薄っぺらいなって。楓は柏くんの裏の顔を知らないから分からないけれど多分楓、柏くんの裏は受け入れられない気がするから」
「……そっか」
楓は気付いていた。柏涼太という人物の裏側があることを。
楓は気付いていた。柏涼太という人物が胡散臭いことを。
「それに楓には好きな人がいるから」
「名前聞いても良いかな」
「そうだね……名前は分からないと思うからどんな人か教えてあげるね」
人を振ったのに弾んだ声。
とても楽しそうに話す。
「楓の好きな人は人の観察が上手で、でも人と話すのは苦手で、なのに周りに可愛い女の子がたくさんいる人だよ。難しい物件なんだ!」
誰だよそのラブコメ主人公。マジで俺と変わってくれ。
そんなことを思いながらこれ以上は聞いてても意味がないと判断し早急に立ち去った。
楓や涼太とバッタリ出会っても困るからね。
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