主人公と混沌と
ガラガラという音ともに涼太は教室に飛び込む。
俺もバレないギリギリまで教室に近寄り近くの壁に座り込む。なので中がどうなっているかは見えない。
ただ、涼太がドアを開けてそのままにしてくれたのもありさっきよりも中からの音がくっきりと聞こえてくる。
きっと中は混沌としているのだろう。
俺は中の確認ができないので推測しかできない。
ただ好きだと言ったら相手が現れた紗英、リーダーであるジンベエザメが危機に瀕しコバンザメこと優香、イジメられている中更に陽キャが出てきて困惑している楓、怒りが頂点に達している涼太。
この4人がマッチングするとか面白くないわけが無い。
正直この目でしっかりと見届けたい気持ちはある。
だがそれをすると作戦が崩れに崩れる可能性があるのでそっと盗み聞きだけしておく。
「え……涼太?」
まず最初に声を上げたのは紗英だった。
てっきり涼太が雄叫びでも上げるかと思っていたのでビックリしたというのが率直な感想である。
「何処から聞いてた?」
紗英は続けて語りかける。さっきまでの敵を潰すような鋭く重たい声ではなく自分を取り繕う可愛らしい声だ。
裏を隠しているもの同士案外2人はお似合いなのかもしれない。
「『アンタまだ学校来てるわけ』ってところから……かな」
「そっか。ほとんど聞かれちゃっるわけか……もういいや」
「紗英?」
「アンタもアンタ以外の男子も! 全員コイツの作り出した嘘の魅力に惑わされすぎ。なんで? アタシの方が可愛いのに。なんで皆コイツなの! なんで皆アタシを見てくれないの……おかしいじゃん」
声が所々震えている。
「楓はただ――」
「うるさい! そうやって言われてもまだ続ける……そういう根性も、受け入れられないアタシも全部! 全部! 全部嫌いなの!」
「紗英……」
「それからアタシはアンタにしっかりと伝えなきゃいけないことがあるから」
「は? 僕に?」
「そう。アンタに……」
誰も何も喋らない。シーンという間が流れ何も起こらずに何も進まない。
そんな1瞬1秒がむず痒い。
しばらく静かな間が流れたあとでまた紗英が喋り出す。
「アタシはアンタが好き。柏涼太が好き。どれだけ離れてもこの気持ちは同じだった。だからアタシと付き合って欲しい。こんな女に惑わされないでアタシと一緒に先へ進んで欲しい。アタシを……選んで」
まるでラブコメアニメの最終回のような大胆な告白。
場違いだがなんだかアニメを流し聞きしているような感覚に陥った。
結局イケメンは主人公ムーブ出来るんだな。悟にしろこいつにしろ。
そう考えるとちょっと虚しくなってきた。帰りたい……




