俺と親友の親友
俺は涼太を後ろに引連れて歩く。
きっと放課後じゃなければジロジロ見られていたのだろうが、放課後で部活に行ったり帰宅したりで校舎内にほとんど人は残っておらず見られたりはしない。
2年生のフロアへやってきてそのまま楓たちのいる教室の近くまでやってきてしゃがむ。
「どうし――」
「黙れ」
俺は咄嗟に涼太の口を塞ぐ。
静かな空気が流れる中、楓のいるクラスから話し声が聞こえてくる。
扉に遮られはっきりとは聞こえないが全く聞こえない訳でもない。
「あのさー。アンタまだ学校来てる訳? 喋り方も変わってないし」
「紗英かわいそー。何度も何度もお願いされてるのに聞いて貰えないわけっしょ? これはいじめだわー」
「マジでアタシって寛容なんだけれどそろそろ限界だよ? 良い? アタシはアンタ佐倉のことが大っ嫌いなの。アンタのせいで周りの男はアタシに惚れないで皆アンタに惚れる。いい加減にして欲しいわけ」
「そんなこと……」
「あー。佐倉がなんか言い訳しようとしてるっしょ。だいたい紗英の言うことは何も間違ってないし」
「そういうわけ。これは女子の総意。アンタは嫌われ者。そしてアタシはアンタをぶっ潰す」
俺だけじゃなく涼太にも聞こえているようで眉をぴくぴくさせている。
涼太は俺の手を解こうとするが俺はまだ塞ぐ。
発進させるにはまだ足りない。言葉が足りない。
「アンタは男に好かれれば誰でも良いわけ?」
「だからあんなぶりっ子してるんっしょ」
「違う……楓には好きなひ――」
「ほら! それ! ウザイって何回言わせれば良いわけ?」
「キモいよねー」
「アタシはね。涼太が好きなの。涼太が好きで振り向いてもらえそうだったのに……気付いたらアンタみたいな邪魔者がノコノコとやってきて涼太も他の男も全部虜にしちゃった……ありえない!」
俺はそこで手を離す。
手を離すと涼太は時が止まったかのように固まる。
「ここで助けに行くのがヒーローだろ。惚れられたいんだろ」
俺はコソッと耳打ちする。
涼太のおねがいを聞くのはどう腹を括ったって無理だった。
それならば元々計画していた作戦の中で組み込んでしまえば良いじゃないかという考えだ。はっきり言って思いついた時は天才だと自画自賛したくなった。
どちらにせよ涼太には向かわせなければならなかったわけで俺にとってなんの不利益もない。
仮にこれで楓が本当に惚れてしまったのなら俺の作戦がそもそも不味かったと諦めることの出来る特典付きだ。
「僕は楓ちゃんを救う!」
キラッとウザイ笑顔を見せた涼太は走って教室に向かった。
俺は陰からそっと見守ることにします。
いつもありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!




