俺と図書館とアレ
日を跨ぎまた日を跨ぐ。
長かったようなでも短かったようなそんな不思議で矛盾ばかりな2日間。
そんな日ももう終わりを迎えようとしており放課後になる。
俺は涼太と約束をしていた図書室へ向かう。
重い扉を横に引き図書室の中へ入る。
図書委員のメンバーは前回と全く違うがそれでも環境は変わらない。ザワザワしてとても図書室とは思えない。そんな環境である。
図書室を見渡すと涼太は座ってスマートに本を読んでいた。
ベストセラーコーナーに飾られていたであろう有名な文庫本。
涼太はそれを閉じて俺を見つけると微笑んだ。
その微笑みはお世辞でも綺麗なものとは言えない。
何か裏があるなと相手に思わせるような笑みだ。
きっとそれに気づける人が少数だから涼太は持ち上げられモテまくる。
そして涼太は良い人だ。真面目な人でかっこよくてモテまくってなんでも出来ちゃうすごい人だ。そういう思い込みが各々で起こり涼太が何かを企んでいるという認識を無意識下で否定し更に気付きにくくなる。
周りの空気がそういう取り繕った涼太というものを形成したのだ。
「その作り笑い嫌いですね」
「やだなぁ。僕はいつも本気で笑っているよ。それよりも僕は敬語使われたくないだよね」
「はぁ……そうですか」
「君のせいで僕の評価が下がってしまう。そうすると僕は楓ちゃんから嫌われてしまう。君のせいでね。君が僕のおねがいを承諾してくれたのなら敬語はやめて欲しいな」
本性はただの性猿。好きな女子にモテようと必死で食らいつき大きな周りの目には敏感になるが小さいことには目もくれない。
俺のことはきっと楓と仲の良い物だとしか思っていないのだろう。
恋は盲目とは良く言うがまさにその通りだ。
自分が突っ走っている時は間違っていかもしれないと考えることすら怠ってしまう。自分が走ることに精一杯なのだから致し方ない。
ここで冷静になる人間こそが恋を制する。
「分かった」
とはいえ、ここで粘って帰られても困るので素直に受け入れる。
俺の作戦さえ終わってしまえばコイツは言わば用済み。適当にあしらっておけばそれで良いのだ。
「……それで良いよ」
やはり胡散臭い笑顔だ。
1度鏡の前で笑顔を作ってみた方が良い。反吐が出そうなぐらい胡散臭く気持ちが悪い。
「それで君からのお願いは図書室に来て欲しいってことだったけれど。本当のおねがいはきっとここからだよね?」
間違ってはいないが一言一言を決めゼリフみたいに言うので寒気がする。
「うん……時間的にもそろそろだから着いてきて欲しい」
「そっか……あくまでも君は目的を言わないか……」
そう言いながら涼太は荷物を持って立ち上がった。
こういう所は流石野球部。機敏だ。
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