俺と呼び出しと
「可愛い楓ちゃんを呼び出してどうしたの? あ。もしかして同情して気付いたら恋しちゃった?」
楓の言う通り俺は呼び出した。
放課後に俺のクラスへ。今は俺と楓しかいない静かな空間だ。
「……ないから」
「ちょっと溜めるのやめて! 本当に惚れちゃったのかと思っちゃうじゃん」
ムーっと口をふくらませてあざとく怒る。
いや、コイツ。本当にあざといな。
「明後日なんだけどさ」
「うん」
楓はスカートの裾をギュッと掴む。
裾にクシャッとシワができており力強く握っているのが三者の目から見てもわかる。
「放課後教室に残っててくれないか?」
「え? 楓が?」
「あぁ。そうだ。やること済ましたら一緒に帰って作戦でも練ろう」
「……分かった。明後日の放課後だね」
楓はコクリと頷きスマホを弄り始める。
多分カレンダーにでも記帳しているのだろうが明日明後日のこと記帳する必要ないんじゃないかと思うのは俺だけなのだろうか。
とはいえ、人それぞれの事情があるわけで安易に突っ込むわけにもいかずスマホを弄っている楓をただただ見つめるというシュールな図が完成していた。
これ外から見たらだいぶ滑稽な図なんだろうなとか思いながら楓を待つ。
「楓ちゃんのカレンダーみたいの?」
「は? 興味ねぇーよ」
「えー。少しぐらい興味持ってよ。これじゃ楓悲しい人じゃん!」
「あー。そーだなー。予定が知りたいなー」
「んー。なんだか心変わりしちゃったから教えてあげなーい!」
ぷいっと楓はそっぽを向く。
楓本人は今の表情を見られていないと思っているのだろう。
だが、甘い! ガラスが反射して満面の笑みを浮かべている楓が写っているのだ!
「まぁなんだ。楽しそうでなによりだ」
「明後日……楽しみにしてるから」
「そか」
楓は笑顔を崩さずそのまま教室から飛び出した。
少しやり方を間違えてしまったかもしれないという罪悪感に襲われる。
あの笑顔を見た上でこれから起こることを考えると申し訳なくなるし、今泣けと言われたら号泣出来る自信がある。それぐらい悲しい気持ちに包まれた。
「ごめん。楓……でも、もう少しだから。もう少しだけ頑張ってくれ。俺も全力を尽くす……」
誰も居ない教室で俺は気持ちが昂った自分に言い聞かせ落ち着かせる。
楓は1人で物事を抱え込んでしまっていたがこうやって俺も現に次々と物事を抱え込んでしまっている。結局似た者同士なんだなとどこか柔らかな気持ちになった。
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