幼馴染たちは理解する。
パタパタと足音を立てながら桜花はやってくる。
その後ろからあざとさ全開で楓もやってきた。
「ゆーくんさ。みっちゃんと別れたの?」
桜花は心配そうに顔を覗き込む。
目の前に桜花の顔があり不覚にもドキドキしてしまう。
「あぁ……別れたよ。別れた」
バクバクしている胸を抑えながら平然を保つように淡々と事実を述べる。
「いつ!」
桜花は気にしないのかグイグイ攻め込んでくる。
やっぱり俺って男としての魅力ゼロなのかもしれない。
「ついこの間だよ。まだ1週間も経ってない」
「へー。本当なんだー」
楓はニヤニヤし始める。
良いネタ仕入れたとかでも思っているのだろう。
悲しくなるよりイライラしてきた。
「じゃあ、裕貴はフリーってわけだね」
「まぁ、そうとも言えるな」
「じゃあ、裕貴。可愛い可愛い楓ちゃんと付き合っちゃう? 美咲には劣るけど楓も中々良い物件だと思うんだよねー」
「おい。知ってるぞ。これで頷いたら全力で馬鹿にしてくるんだろ」
「バレちゃった」
テヘペロと楓は舌を出す。
こいつゆるふわ系でもなんでもないわ。ただの悪魔。デビルちゃんだわ。
「バレちゃった。じゃねぇーよ。ただでさえ傷付いてるんだからさらに深堀しようとすんな」
「傷付いてる……ふーん。つまり、裕貴が振られたのかな?」
楓って昔から勘が鋭い。
しかも隠したかったことをズカズカと踏み込んできて図星をついてくる。
ここであーだこーだ言って逃げても結局バレて弄られるのがオチだ。
これだから来たくなかった。
「そうだよ。俺が振られたんだよ。恋人として見れないってキッパリ振られたわ!」
吹っ切れた方が良い。これは俺の経験則である。
「そうなんだー。楓ちゃんが慰めてあげよっか」
「いらん。本当に泣いちゃう気がする」
「良いよ。楓ちゃんは裕貴の全てを受け止めてあげちゃうから」
良い雰囲気が流れたところで桜花がバンッと1度手を叩き大きな音を出す。
「2人で良い雰囲気になって……付き合っちゃえば!」
「桜花……いやだなぁ。裕貴と付き合うなんて天変地異が起こってもありえないよー」
「おい。なんか俺振られてないか?」
「うーん。気のせいだよ。気のせい」
楓はウィンクを決めると流れるようにサーッとママさん達の元へ帰っていく。
桜花と2人っきりになりまたなんとも言えない微妙な空気が流れる。
特に何があるわけでも無いが桜花と2人っきりになりなるといつもこうなる。やっぱり突拍子もなく変なこと言い出したりするから緊張しちゃうのかも。
「ゆーくん……」
「どうした?」
「私はまだゆーくんのこと振ってないから」
「まだってなんだよ。まだって」
桜花は桜の花びらのように頬をピンク色に染めて走りってママさんの元へ向かう。
なんなんだろうか。なぜ、俺は今日幼馴染2人に振られたんだろうか。
告白すらしていないのに振られるとかもしかしたら俺は失恋のギネス記録を狙えちゃうかもしれない。
「はぁ……」
悲しいものは悲しいわけで。
俺は幸せが逃げそうなため息を吐いてジュースをゴクリと飲んだ。
パパさんたちのビールが無性に美味しそうに見えたのはここだけの話。
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