俺と頼み
次の日、俺は教室に入ってそうそう悟の席に向かった。
まさか来ると思っていなかったのだろう。不思議そうな顔をしながら俺の顔を無言で見つめる。
もしこの教室に腐女子がいたら1人で盛り上がっているのかもしれない。
そう考えるとなんだかゾワゾワしてきた。
「おはよう」
「おう……珍しいな」
「悟に用事があったからな」
昨日楓と一緒に帰ったあと俺はちっぽけで無能な頭をフル回転させ楓のイジメを消滅させるにはどうするべきかということを考えていた。
担任に相談する。これが手っ取り早く簡単に解決出来る方法だろう。だが、それを楓は望まない。
仮に無理矢理強行すれば解決こそしても楓は学校に来なくなってしまう可能性だってある。だからこれは後に引けなくなった時に引く最終手段だ。
今回のイジメは原因が明確だ。
楓がモテすぎるのが原因。そのモテすぎるという楓の原因を取り除けるのなら良いがそんな簡単にはいかない。
だが、1つだけそれに近い状況でま楓の評価を下げることなくイジメを解決する方法を俺は思いついてしまった。
「なぁ。涼太ってやつ知ってるか? 楓と同じクラスらしいんだけど」
「佐倉さんと同じクラス……あぁ。柏涼太か? アイツなら知ってる……ってか野球部」
「は?」
「いや、お前信じてないだろ。4番キャッチャーの柏涼太。俺の正妻」
「本当か。じゃあ会わせろって言ったら会わせてくれるか?」
「んー。アイツが頷けばな」
悟はそう言うなりスマホを出して指を滑らす。
しばらくスマホと睨めっこした後悟は顔を上げて親指を立てて笑顔を見せる。
「急になんだよ。気持ち悪い」
「なんでだよ。流石にそれ酷くねぇーか?」
「すまんすまん。で、真面目になに?」
「会ってくれるってさ。今日の昼休みで良い?」
「レスポンス早すぎだろ……昼休みで構わん」
「じゃあ決定だな」
また悟はスマホと睨めっこする。
そしてまたすぐに顔を上げる。
「許可もらった。昼休みラウンジで待ち合わせにしたから」
「悟は行かないの?」
「は? 俺行く必要ある?」
「いや。俺を知らない人の所に放り投げるなよ。俺萎縮してお金渡しちゃうよ?」
「カツアゲなんてされねぇーから大丈夫だ」
「着いてこい」
「やだ」
「着いてこい」
「はぁ……分かったよ。行けばいいんだろ」
ため息混じりな返事を聞いて俺は自席へと戻った。
知らない人と2人っきりとか考えただけで冷や汗出てきちゃうよね。
ただでさえ人見知りなのに陽キャと2人っきりとか陰キャの良くないところ全部出しちゃうし作戦も成功しなくなっちゃうよ。
「うわぁ……すげぇ緊張してきたぁ」
高鳴る鼓動を胸に俺は担任が入ってくるの待った。
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