俺と幼馴染と昔と
ちょっと過去の話入れてみました。
楓は昔からこんなにあざとくなかった。
「ゆーくん! 鬼ごっこしよーぜ! 僕が鬼やるから!」
幼稚園の頃はこんな感じで女の子ってよりも男っぽさの方が勝っていた。しかも希少なボクっ娘である。
それに今みたいな髪の毛じゃなく完全なショートカットで可愛いというよりもカッコイイ系だった。
そして幼稚園生ながら女の子なのにカッコイイというギャップで惚れてしまっていた。
まぁ幼稚園生の話なのであの時の感情が本当に恋だったのかは分からない。
今はそんな気持ち持っていないし、あの時そんな感情を抱いていたなという記憶だけで具体的な心情は全くもって記憶にない。
そんな楓が変わったのは幼稚園を卒園して小学校に入学するちょうど境目であった。
俺と楓はいつもと変わらず鬼ごっこをして飽きたら戦隊モノごっこをする。
まるで男友達と遊んでいるかのようなサイクルで色々な遊びをこなしているとニコニコと楓のお母さんがお菓子を持ってやってきてくれた。
「ママ! ありがとー!」
「楓ママ。今日もありがとう!」
俺たちは焼きたてのお菓子を受け取り競走だと言いながらパクパクお菓子を食べていた。
「かえちゃんはさ。そろそろ女の子っぽくならなきゃダメなんだよ? 小学校に入って『ボク』なんて言ってたら皆からイジメられちゃうし、そんなに短い髪の毛じゃ男の子だって勘違いされちゃうからね。かえちゃんは髪の毛を伸ばせるんだからしっかりと伸ばさないとダメよ」
「ボク髪の毛長いの嫌だもん。邪魔だし!」
「女の子なら女の子らしくいなさい。小学生なんでしょ?」
「女の子らしく……」
この1件から楓は変わった。
一人称は『ボク』から『楓』に移り変わり、自分を大好きな女の子みたいな性格を上書きしていた。
最初はそんな楓が気持ち悪かった。まるで違う人と話しているみたいで嫌だった。
それでも何年も何年もその楓と過ごしていると『楓』と呼ぶ楓が本当の楓だと思うようになっていた。知らないうちに俺の中に居た楓も上書き保存されていたのだ。
それから楓は確かに女の子らしくなったしモテるようになった。
俺が知る限りだと全部断っているがそれでもモテモテなのは間違いない。
本人はどんなことを思っているのか、本人は本当の自分を覚えているのかも分からない。
桜花や夏海たちは楓が楓だった頃の楓を覚えているのだろうか。
とにかく自分を自分で消しさり楓は違う楓を楓として生成していたのだ。
そして今その変化が原因でイジメられている。
イジメられないようにと変化したのにそれが原因でいじめられてしまうという本末転倒だ。
楓が何を思い、どうしたいのか俺には分からない。楓の決める道は俺や楓の親が指図出来るものじゃない。楓は楓自身が作るべきなのだから。
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