俺といじめと
俺は悩んでいる。
逃れられなかったからとはいえ俺がイジメなんか解決出来るのか。
大体俺だっていじめる立場じゃなくていじめられる立場なのだ。
悟が不思議と俺の方にいつも回ってくれるから虐められずに済んでいるだけであり、悟さえいなければきっと俺はいじめられっ子まっしぐらである。
「なぁ」
「どうした」
俺の机に全体重掛けている悟に俺は問う。
「お前ってなんで俺と仲良くしてくれてんだ?」
「あー……そういわれるとなんでだろうな。まぁ裕貴と居るのが楽だからってのは少なからずあるかな」
悟は「あとはー」と気だるげに立ち上がるとドヤ顔をし始めた。
なにか喋ったりはしない。無言でドヤ顔だ。意味がわからない。
微妙な間が二人の間に流れた後悟はやっと口を開いた。
「後は裕貴の幼馴染の誰かを紹介してもらうためだな!」
漫画であればキランという効果音が描かれてそうに綺麗な白い歯を見せ親指を立てて笑う。言ってること凄いのにそんな笑顔見せられるとかメンタル鬼かよ。ダイヤモンドかよ。
流石にエースだなと思いながら俺は悟の頭をピシッと叩いた。
「は? なんで叩くんだよ!」
言葉こそ強いが顔は満更でもない笑みを浮かべている。
相手が嫌がればこれはイジメになるが悟も俺も互いにこれを一種のコミュニケーションだと理解出来ているのでじゃれ合いという括りに入れられる。
「誰もお前には紹介しねぇーよ。ってか、何回も言ってるけどお前が告白すればイチコロだろ」
「自分からじゃないんだよ」
悟はお前わかってないなと言いたげな表情でため息混じりに文句を垂れる。
理不尽極まりないが俺もここで文句を垂れると収拾つかなくなるので大人の対応をしておく。
「そうだ。楓っていじめられてると思うか?」
「なんだよ突然」
ビックリしたというような反応を悟は見せたがすぐに顎に手を置いて考える。
「佐倉さんだろ? まぁ、あのキャラだし一定数佐倉のこと嫌いでもおかしくはないわな」
てっきり「そんわけないだろ」という軽い返事が返ってくると思っていたので思わず口を開けっぱなしにしてしまう。
それと同時に俺よりも楓のことを詳しく知っていることに悔しくなる。
別に楓は俺のものじゃないし、悟のものでもない。でもなぜか嫉妬心が芽生えてしまう。
「何かの拍子に火が着いたら一瞬で燃え広がったとしてもおかしくはないわな」
「なるほど」
嫉妬嫉妬頭の中でグチグチ言っても仕方ない。
少なくとも周りで楓がいじめられてもおかしくないと思っている人間がいるということは実際にいじめられていてもおかしくないという訳だ。
いじめられているのは楓の言葉、そして悟の言葉2つから見て確実だとしてじゃあ俺に何が出来るのか。
どっかのラノベの主人公みたいに話し合いで和解しようだなんて出来やしない。そんな統率力俺にはないし、そもそも統率力があったとしても話し合いで解決するのなら自然消滅するはずだ。
簡単に和解できない。だからこそこうやってイジメという形で残りズルズルと苦しむ人間が出てくる。
「まぁあの人がいじめられる立場になることなんてそうそうないとは思うけどね」
「俺もそう思ってたよ……」
悟は片手をヒラヒラとさせて自席へ戻るのと同時に担任がやってきた。
いつもありがとうございます!
ブックマークと評価もありがとうございます。
また感想欄開けたい欲とネタバレしそうという恐怖がせめぎ合っています。そのうち開けるかもしれません()
まだまだ続きますのでよろしくお願いします!