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俺と図書室と幼馴染と

「なんだよ」


 「んー。ちょっとだけ楓ちゃん思うところがあってねー」


 あざとさ全開で頬に人差し指をおく。

 多分夏海とか桜花と違って楓の場合はこうすれば可愛く見えるって分かっててやっているのだろう。性質悪いったらありゃしない。

 何が嫌ってそこそこ様になってるのがまたウザさを増す。


 「夏海のお願いを聞いて手繋いだりしてたんでしょ?」


 頬杖をつきながらニコニコと話しかけてくる。


 「あぁ。そうだな。結果的にお願いを聞く形になっちまったな」


 そう答えると楓はガタッと立ち上がりバシンっと机を叩いた。

 図書委員がハッとこちらを見たがまるで何も無かったかのように談笑に戻る。


 「なんだよ突然。うるせぇな」


 「不公平! だから裕貴は楓のお願いも聞いて!」


 腕を組んでそれだけ言うとストンと座った。


 「なんでだよ」


 「だって夏海のお願いは聞いたんでしょ? なのに楓のお願いは受け入れてくれないとか不公平じゃん!」


 お願いを聞くのは決定事項みたいな雰囲気を醸し出される。

 ここで断ったらどうなるだろうとシミュレーションするがうんと頷くまでここから帰らせてくれないという結論に至る。つまり、これはもう受けざるを得ないのだ。


 「あぁ。もう分かったよ。そのお願いとやらはなんだ。話だけ聞いてやる」


 髪の毛をくしゃくしゃっとしながら問う。

 逃げることが出来ないなら諦める。これが俺流だ。


 「え! 良いの!?」


 楓は笑顔で聞いてくる。

 無理矢理こうさせたのはお前だろと心底思ったがグチグチ突っ込んでても時間の無駄だと思った俺は黙ってコクリと1度頷いた。

 嬉々とした様子で楓は口を開く。


 「あのね。なんか虐められてるっぽいの」


 「へー。誰が?」


 「ん? 楓」


 楓は自分自分と主張するように自分のことを指さす。

 はっきり言って冗談にしか聞こえない。


 「冗談はやめとけよ。いくら何でもそれはねぇーわ」


 俺の中にある楓のイメージは周りからチヤホヤされて時々調子に乗る女の子。陽キャで周りの男子からモテモテでその影響もあって周りの女の子からも持て囃されクラスの中心人物。

 ざっと今思い浮かぶだけでもこれぐらいの陽キャ要素が出揃う。

 そんな楓のことを虐めるとかどんな度胸があろうとも不可能に近い。

 虐めるメリットよりデメリットの方が大きい。自分にどんな仕返しが帰ってくるのかも分からないのだ。

 よってこれは楓のついた悪質な冗談。俺はそう脳みそで処理した。

 だが、楓の表情はピクリとも動かない。ずっと真顔である。


 「消しゴム投げられたり、仲間外れにされたり、下駄箱にゴミ入れられてたりするけど……これってイジメじゃないの?」


 楓は唇をプルプル震わせながら訊ねてくる……言い逃れが出来ない完全なイジメだ。


 「大人に相談しよう」


 これは夏海と同じ匂いがぷんぷんと漂ってきたので同じ轍を踏まぬよう俺は先手を打った。

 これで何も問題ない。そう思ったのも束の間、楓は目をうるうるし始める。

 美人の涙には弱い。これは俺に限った話じゃなく全世界の男に共通していることではないだろうか。


 「イジメられてるの相談するの恥ずかしい」


 「はぁ? なんで俺には相談できるのに恥ずかしがるんだよ」


 「裕貴は裕貴だから……それとも楓のお願いじゃ聞いてくれない?」


 前のめりになって訊ねてくる。あざとさが半端ない。


 「分かったよ。分かった。出来ることなら手伝ってやる」


 「えへへ。やった」


 「うわ。演技かよ」


 「言質はとったから」


 楓はスマホでボイスレコーダーアプリの記録を見せつけた上にそれを再生する。

 はっきりと俺が手伝うという言葉を放っているのが記録されていた。


 「あぁ……しゃーないな」


 こうして俺は楓のイジメを解決することになった……俺に出来るのか?

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