俺と残ったもの
日曜日を挟んで月曜日。
1人で学校に行き教室に入る。
「今日はおひとり出勤か」
「今日はってなんだ。これがデフォルトだろ」
ニヤニヤしている悟に喝を入れるような感じで突っ込む。
「成田さんは? 付き合ってるんだろ?」
「は? 俺そんなこと言ってなくね」
「は?」
「は?」
お互いがお互いの目を数十秒見つめ合う。
「あくまでも一緒に居ただけだ。まぁ言うなればカップルごっこをしてたってとこだな」
「はぁ……そりゃねぇーぜ。お詫びに成田さんを紹介しろ」
「却下」
適当に悟の相手をして俺の学校生活がスタートした。
時は流れ昼休み。
悟に弁当の唐揚げをつまみ食いされた腹いせに廊下を歩いていると桜花が前からやってきた。
特に用事もないし変に学校で絡まない方が良いと思っている俺は赤の他人を決め込んですれ違おうとするがすれ違いざまにベルトをぎっしり掴まれる。
この状況から逃げ出すのは流石に不可能なので大人しく止まった。
「なんだ」
「なんだじゃないし! ゆーくんスルーしようとしたでしょ」
「そりゃそうだろ。俺と桜花じゃ生きてる場所が違う」
「どういう意味だし!」
どうやら桜花はバカにされたと思ったらしく口をプスーっと膨らませる。
いやぁ。普通に可愛いんだよなぁ。特に夏海と濃密な接触をしたあとだと癒される。幼馴染界のオアシスだ。
「んで、なんだよ。わざわざ止めてまで」
「あっ! そうだ。夏海と別れたの?」
「は? 元々付き合ってねぇーよ」
「でもこの前メールで聞いた時は付き合ってるって言ってたし……」
あ。変なところで鋭いな。
でも大丈夫。押して押して推しまくればどうにかなる。
「気の所為じゃねぇーか? 俺と夏海は付き合ってないぞ」
「え、でも」
「付き合ってないぞ」
「……」
「付き合ってないぞ」
「なんも言ってないし……」
「えへへ。じゃあゆーくんには彼女居ないってことだね」
嬉しそうに笑ってくれる。
この話以外ならその笑みは嬉しいのかもしれない。でも、今は嬉しくない。
だってバカにされてるよね?
「とにかくそういうことだ。俺は付き合ってないし、夏海も付き合ってない。俺に彼女はいないし、夏海に彼氏はいない。以上!」
勝手に話を締めてその場から逃げるように教室にUターンする。
唐揚げ盗まれたけど悟の方がまだ安心だ。
頭良いのにこういうことだけは全く覚えてない鈍チンくんだからね。
俺のポケットの中に入っているスマホが振動する。
『裕貴! 可愛い可愛い楓ちゃんが放課後呼び出した! 放課後図書室で待っている!』
キャラがブレッブレなメールで呼び出しをくらった。
ツッコミどころしかないメールなのでそっと閉じる。
「メールだし……見て見ぬふりしても良いか」
気付けば5時限目開始まで5分もなかったので慌てて準備を始めた。
いつもありがとうございます!
ブックマークと評価もありがとうございます!
最初は幼馴染一人一人に焦点を当てた話を書こうと思っていたので一応夏海編はこれで終わりです。
でも、物語はまだまだ続きますので引き続きよろしくお願いします!




