幼馴染と俺と。
桜花が目の前にやってくる。
目の前にやってくるのは良いが話題がないのだろう。
なんとも言えない微妙な空気が二人の間を流れる。
しばらくそういう空気が流れた後、この空気を壊すように桜花は口を開いた。
「美味しかった?」
俺の目じゃなくて俺の手元にあるタレだけが残った皿を見て口を動かす。
「あぁ。美味かったよ。桜花も食べれば?」
桜花は首をちょこんと傾げる。
今の脈絡的におかしくなかったよね。何が謎なの。それが謎なんだけど。
「もう無いよ?」
「いや……貰ってきなよ」
「あぁ……確か――知ってたし!」
顔を真っ赤にしながら桜花はママさん達の元へ走って行った。
騒がしいやつだなと眺めていると肉を先に受け取った楓がパクパク食いながらこっちにやってくる。
楓はこっちへやってくるなり皿を差し出してくる。
「なんだよ」
「なんだよって……こんな可愛い女の子がお裾分けしに来たんだよ? その態度はないよー」
あざとさ全開で喋る。
「あー。そっか。裕貴には彼女がいるもんね。あんな美人さんと付き合ってたらそりゃ私に靡かないよねー。納得。納得」
コイツ……分かってて言ってるんじゃないだろうな?
俺の心を綺麗に抉りやがる。
楓は悪びれた様子なくパクパク肉を食う。
「はぁ……俺はもうお前らが来る前に肉かなり食わされたから要らない。あと、彼女も居ない」
「ふーん。そっか。せっかく可愛い可愛い楓ちゃんが持ってきてあげたのに……彼女も居ないもんね……ん?」
楓は唇に指を当てて「ムムム」と唸る。
ずっと悩むジェスチャーを見せた挙句答えが出なかったらしく踵を返した。
「なんかもう仕事した気分だ……お給料出ないかな……」
スマホを弄ろうとすると夏海が目の前にいた。
「今度はお前か……何の用だ。肉は食わんぞ」
「違うから! なんでアンタなんかに私の肉あげなきゃなんないのよ!」
おっと。今の流れ的に肉くれるのかなと思っちゃった。
それより夏海マジで怒ってるよね。なんか……ごめん。
「ジュース渡してこいって言われたの! はい」
「あぁ。そういうことな。サンキュー」
「はい。渡したからね! で、さっきの話本当?」
「さっきの話? 肉食わねぇーってこと?」
「は? アホ! 死ね! お前も一緒にバーベキューの材料にしてやろうか!」
「ごめんごめん。流石にそれはおぞましすぎる」
「ふんっ」
夏海は終始キレ気味でデレることなく帰っていく。
ツンデレはデレがあるから完成するんだなと夏海と話すと常に感じさせられる。
この流れだと次は雪が来るんじゃねぇーかと思い雪を見つめると明らかにため息を吐いた後何事も無かったかのように楓や桜花達のいる方へ向かった。
え。来ないの。準備してたからそれはそれで悲しいんだけど。
空の皿を椅子の肘置きに絶妙なバランスで置いて俺はスマホを弄り始めた。
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