俺とツンとデレ?
『全て解決だ。良かったな』
無駄のない文章を打ち込み夏海へ送信する。
何がとは言わないし、どのようにしてという過程も言わない。
あくまでも報連相の報告をしっかりと行っただけでありそれ以上でもなければそれ以下でもない。人として当然の報告をしただけだ。
スマホのバイブレーションと共に夏海からメッセージが送られてくる。
『は?』
当然のメッセージである。
だが俺はこれ以上メッセージを送らない。
メッセージ上だと誤解を生む可能性があるからだ。
直接面と面向かって話さなければならないことだからこそ俺はこうやったメッセージを強制シャットアウトする。
嘘です。眠いだけです。寝ます。
朝。
小鳥のさえずり……なんか聞こえるはずもなく原付が頑張ってエンジンをふかしている音で目が覚める。
不快感だけはピカイチだ。
そんな中俺はいつものように朝の支度を済ませ学校に行こうとして気付く。
「はぁ。土曜日じゃん」
制服を着たまま俺はベッドに飛び込む。
このまま不貞寝してやろうかと思った瞬間スマホが鳴り始めた。
メッセージなんか無視してやると決め込んだがメッセージではなく電話だ。
仕方ないので出る。
「はい。もしもし」
我ながら精気の欠けらも無い声だなと思うがもう手遅れなのでこのまま通そうと思う。
「アンタさ! 昨日あんな意味深なメール送ってきてなんで無視までするわけ? ありえないでしょ」
夏海はどうやらご立腹なご様子。
まぁ見えないんだけどね。
「気になってまともに寝付けなかったんだから……」
今の言葉だけを切り取ってしまえばラブコメが始まりそうだと思うようなメッセージだが奴の裏の言葉を読み取ればそんな気は一瞬で皆無となる。
『考えに考えたけど答え出なかったわ。私の睡眠時間返せよコノヤロウ』
大体こんなようなことが裏の意味として存在している。
恐ろしい。
「だから今アンタの家来たから」
「は?」
その言葉と同時にインターフォンがなる。
すぐにガチャりと扉の開く。
夏海との電話は知らないうちに切られてしまう。
ドンドンドンドンドンと階段を昇ってくる音を聞いていると俺の部屋の扉が開く。
勝手に開いた訳じゃない。
不敵な笑みを浮かべた夏海がそこには立っていた。
完全なオフモードの夏海だ。
あれだけ俺のファッションに文句を言っていただけあり中々可愛らしい服を着ている……
「どういうこと?」
扉をバタンっと閉めるなり俺のベッドに迫ってくる。
流石に色々とダメな気がしたので「落ち着け」と一言だけ声をかけ夏海をその場にストップさせる。
だらんと制服を着崩しているのだが夏海はそれについて何か口を出してきたりはしない。
そんなこと気にしないそれよりも早く話せというスタンスなのか単純にファッション的にありなのか……
とにかくこれ以上待たせる訳にはいかないのでふんわりと伝えることにする。
「お前と別れた後ストーカーの犯人とばったり会った」
「は……?」
バチンという音の後、左頬にヒリヒリとした感覚が襲う。
別に難しい状況ではない。突然夏海にビンタをされた。ただそれだけである。
「なんでそんな大事なこと先に言わないの? これでも私アンタのことそこそこ大切に思ってるんだから……」
夏海は目に涙を浮かべながら鼻をすすりつつ喋る。
ここで初めてまた俺は選択ミスをしてしまったのだと理解した。
「すまん。もう解決したことだったから」
夏海は何も言わず目を擦りながら頷く。
「紆余曲折あってストーカー行為をもうしないって約束させたから安心してくれ」
「……分かった。もう帰る」
夏海は立ち上がり部屋を出て扉を閉める前にこちらを振り返る。
「私の泣き顔なんか忘れろ! バーカ! あと……あんがと」
それだけ言うとパッと晴れた表情を作って扉を閉め去って行った。
夏海史上最大級に可愛い笑顔だったと思う。
あと少しで惚れてしまうところだった。
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