俺と解決と
考えても無駄だ。
そう理解してしても考えてしまうものは考えてしまう。
そしてありもしない再チャレンジの時に備えシミュレーションをする。
死に戻り能力でもあればこの思考は有用なのだが何せ俺はただの男子高校生だ。
だから役に立たない。
家の近くに到着し夏海の家の方をちらっと見ると夏海の部屋は電気がついていた。
無事家に着いていたみたいだ。
当初こんなめんどくさい事に首を突っ込むつもりは無いと断っていたのに気付けばここまで気にすらようになってしまっている。
だから関わりたくなかった。
「はぁ……なんで俺がこんなに悩んで苦しまなきゃいけねぇーんだろうな」
家の前に行くと謎の人物が玄関前で座っていた。
背が小さく横が大きい。ウチの学校の制服を着ているので同じ高校だというのは推測できる。
「誰だよ」
新しいアクシデントを処理出来るほど俺の脳みそに空き容量はなく考える前に口で問いてしまう。
俺の声に反応して玄関前にいた奴はハッと顔を上げてそのままの流れに乗って立ち上がる。
「お前……あの成田さんと付き合ってるのか? 孤高の花の成田さんと付き合ってるのか!」
思い出した。俺とぶつかった例のオタクくんだ。
実際にオタクなのかどうかは知ったことじゃないが見た目がオタクオタクしているのでオタクくんで統一しようと思う。
ここまで絵に描いたようなオタクくんも中々居ないけれどね。
今までであれば堂々と付き合ってると言えたのだが、今はどうだろうか。
今日で終わりだと言われた。付き合っていないと言ってしまって良いのだろうか。それとも別れたと言うべきか。はたまた堂々と付き合ってると高らかに宣言するべきだろうか。答えは分からない。
「無言は肯定……孤高の……いや、俺の。俺の! 成田さんを奪ったのはお前か!?」
オタクくんは顔を真っ赤にし1人でヒートアップする。
「どういうこと?」
この人怖いなぐらいの感情しか持ち合わせていない俺は冷静にきっぱりと思ったことを投げてしまう。今でさえ半分は夏海の対策を考えているのだ。
はっきり言ってコイツは邪魔者以外何でもない。
「俺は入学してからずっと。ずーっと成田さんを見てきた。成田さんを追いかけてきた。話しかけたい。喋りたい。一緒に笑いたい。そんな感情を抑えて後ろから隠れて見つめることしか俺には出来なかった」
「はぁ」
「そしたら……突然お前が現れて。お前が成田さんとイチャイチャし始めて。手まで繋いで……誰だよお前は! 成田さんとはどういう関係なんだ! 俺の成田さんを返せ」
「ちょっと待て……ずっと後ろから?」
ワンテンポ遅れて突っかかる。
「そうだ」
「ストーカーじゃねぇーか」
俺犯人分かっちゃった。
よりによってこうやって犯人と対面するのか。めんどくさいね。
「は? 俺は成田さんを追いかけて見つめていただけだ」
「あのな。それを世の中ではストーカーって言うんだよ。夏海は夏海で誰かに付けられてる。怖いって怯えてたぞ。怯えさせてたのは間違いなくお前だ。理解できるか?」
見た目からして頭弱そうだもんな。理解出来てれば良いけれど正直怪しい。
だって、無意識でストーカーしてるんだぞ。
「これが……ストーカー……」
「あぁ。紛れもなくストーカーだな。もしこの事が夏海に知られたらお前は百パーセント嫌われる。そして今俺が警察に通報したらお前は間違いなく終わりだ」
「……」
「まぁ、なんだ。同じ学校から逮捕者が出るってのは俺にとっても不都合だし、同じクラスメイトにストーカーが居るって夏海が知ったら不登校になるかもしれないから言ったりはしないけどな」
まぁ、夏海がじゃなくてお前がなんだけれどね。
夏海とか絶対ボコボコに殴って女子全員でこいつのこと虐めるだろ。
うわぁ……考えただけで寒気してきた。
「俺から言うことは1つだ。金輪際夏海に近寄るな。喋りかけるな。そして目で追いかけるな。追跡するな。関わるな。俺が少しでも約束を破ってると見なせば即夏海と警察に言うからな。分かったか?」
奴はコクコクと頭をヘッドバンキングの如く振って逃げるように去って行った。
幕切れはゴミのようだったがきっとこれで夏海の不安の種は消化されただろう。
そして同時に俺の悩みの種も消滅した。
いつもありがとうございます!
ブックマークと評価ありがとうございます!
これからもよろしくお願いします!




