俺と俺の悩み
朝になる。
いつものように無理やり起こされていつものように飯を食いいつものように家を出る。
夏海は直接家に来ることは無くなったが俺が家を出たタイミングで夏海も家を出るようになっていた。
多分タイミングを見ているのだろう。
最早どっちがストーカーか分からないなということはここでは一旦置いておく。
手を繋ぎまるでカップルのように学校まで歩く。途中すれ違う死にかけのサラリーマンや嫉妬の目で睨みを効かせてくる同じ学校の生徒を横目に登校し夏海と別れ教室に入る。
「イチャイチャしやがって」
「開口一番それかよ」
悟がバットを片手にやってきたと思ったら悔しそうな顔をしながら文句を垂れていた。
「物騒だからとりあえずバットおけ」
「今バット片付けようとしてたんだから仕方ないだろ」
「じゃあ片付けてからこっち来い」
「うぇーい」
空いている方の手をヒラヒラとさせると悟はバットをしまいまたこっちにやってくる。
「別れてすぐに付き合って……美咲からは何も言われてないのか?」
「もう別れてから話してもないしなんなら見てもねぇーな。アイツはアイツでかなり美人だし他の男でも捕まえて遊んでるんじゃないか?」
「元カレとは思えないセリフだな」
「別れたらそんなもんだろ」
悟は「はぇ〜」と興味あるのか無いのか分からないような顔をしながら髪の毛をガシガシとほぐす。
こんなイケメンなくせしてまともな恋愛経験ゼロだって言うんだから人は見た目じゃない。告白され過ぎてて本人曰く恋愛は興味あるけれど怖いらしい。
「まぁとりあえずなんだ。旭さんを俺に紹介してくれ」
「断る」
「はぁ……彼女持ちの癖に旭さんまで独占すんのか? 独占禁止法だぞ!」
「習いたての言葉使うな。小学生かよ」
「それよりも今日空いてる?」
「放課後?」
「あぁ。今日部活無くなったから遊び行かね?」
「わりぃ。放課後は無理だわ」
「そっか。やっぱ彼女持ちは忙しぃーな。俺席戻るわ」
床をターンっターンっと蹴りながら歩く。
多分だけれどあれは『彼女持ち』という言葉を言いたくなっただけだろう。
今日俺に課せられている仕事は1つだ。彼氏の振りをしつつ夏海を大人に相談する方向へ誘導すること。
夏海自身は大事にしたくないと言っていたが流石にストーカー行為をこのままにする訳にはいかない。夏海の身すら危険な状態だ。
「はぁ。どうしたもんかな」
俺は自分の世界に潜り込んだ。
そうして脳みその八割を常に夏海をどう誘導すれば自然かということを考えるのにリソースを使い過ごした。
真剣に考え事をすればするほど世の中の流れというものは早く感じるわけで気付けば放課後を迎えていた。
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