幼馴染と決意
無味乾燥な一日が終わる。
一限目から六限目まで特に何か面白いハプニングが起こるということもなくダラダラっと過ごしてダラダラっと話を聞きダラダラっと時計を見つめる。そして、チャイムと同時に味わえる解放感を楽しむ。
部活へ向かうものやクラス内で駄弁るもの、それにも教室の中心でワイワイ喋るものと隅でこじんまりと邪魔にならないよう喋るもの。30何人という限られた人数の中でも十人十色様々なアクションを起こす人間がいる。
そして俺はゆっくりと教室を出る。これもまた他の奴らからしてみれば1つの風景なのかもしれない。
俺は隣の教室に向かう。
夏海を回収するためである。
まだ担任が話をしているようなので俺は廊下の壁に寄りかかりながらスマホを弄り夏海を待つことにした。
しばらくすると教室の扉がガラガラという音ともに開く。
バーゲンセールが始まるデパートのように教室からは人が流れ出てくる。
その中に夏海も紛れてこちらへやってくる。
「アンタ待ってたんだ。遅すぎるから帰ったかと思った」
「カップル擬きをやるって言ったからには責任持たないとな」
「ふーん。そ」
夏海はつまらなさそうに返事をすると当たり前のように指を絡ませながら手を繋いでくる。
そして俺もそれに応えるようにして指を絡ませ握り返す。
傍から見たらどう見てもただのカップルだが俺の頭の中には『カップル擬き』という言葉がしっかりとこびりついているため好意抱いているのかもという勘違いはしない。
「今日は普通に帰るんだよな?」
「うん。昨日のデートで十分でしょ……なに? アンタもしかして私とデートしたいの?」
ニマッという効果音が聞こえてきそうな笑顔で訊ねてくる。
「疲れたから帰りたいだけだ」
「なんかあった?」
「何かって……今日木曜日だぞ? 疲れないわけないだろ」
夏海は「うーん」と唸る。
「木曜日って何かあったっけ」
「何も無い。4日も学校行ったら疲れるだろって話」
「はぁ……なんだ。心配して損した。アンタらしいっちゃらしいけど」
「なんだそりゃ」
「……とりあえず。ありがと。まだ視線感じるしストーカーはまだストーキングしてるっぽい」
「さっきも言ったけど俺がやるって言ったんだから気にすんな」
夏海の手の力が強くなった気がした。
口では強がっているが内心不安なのだろう。
こんな性格でも中身はしっかりとした女の子なのだ。
「本当にダメそうになった大人に言えよ。何かあってからじゃ遅いからな」
「うん……それとね。こうやってカップルごっこするの明日で終わりね」
「は? それじゃあ1週間じゃねぇーじゃん」
夏海はコクリと頷く。
「でも、昨日あれだけイチャイチャしても効果ないってことはここから何してもストーキングされるのは変わらないと思うの。だからキリの良い金曜日で終わり」
「まぁ……夏海が言うなら俺から言うことは何も無いな」
「だから。ありがと……それと迷惑かけてごめんね」
いつもの夏海じゃなく乙女モードの夏海だ。はっきり言って調子が狂う。
守ってあげたい可愛さは確かにあるが夏海にそれを求めてはいけないのかもしれない。違和感しかない。
「おうよ」
でもそれを口に出したりはしない。夏海の決めたことを無駄にすることになりかねないからだ。
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