俺と幼馴染と××と
ゲームセンターの奥の方へ連れていかれる。
俺はUFOキャッチャーやアーケードゲームをチラチラ見ながら面白そうなものは無いなと思いながら素直に夏海の手に引かれる。
プリ機がたくさんある所に到着すると夏海は足を止めた。
俺にはどの機械がどういう効果を持っており、何が違うのかなど1ミリも理解出来ていない。
流石に全部同じ機械じゃないというのは現代っ子なので理解出来るが、それ以上踏み込んだことは何一つ分からないのだ。
ボケェーっと意味も分からずプリ機を見ていると夏海はギュッと手を引っ張る。
「これで良い?」
目の前のプリ機をさしながらそう言われる。
これで良いも何も全く分からないのでコクリと頷いておくがそもそもこれがどんなプリ機なのかも分からない。
「それで良いと思うなら良いんじゃない?」
「じゃやろ」
夏海はホイッとプリ機の中に入ったので俺も置いてかれないように中に入った。
プリクラを撮るのは初めてではない。
同じような形で何回か美咲と撮った。
落書きだかなんだかがあるらしいが俺には良く分からない。
「笑って笑って」
「分かった」
プリクラの3、2、1、パシャリというカウントダウンとシャッター音に合わせて幾つかポーズを変えつつ素直に撮られる。
ダブルピースをしてみたり、変顔をしてみたり色々やってみたが自分のことだけでいっぱいいっぱいになってしまい夏海がどんなポーズをしているのか見れなかった。
「失敗したな真似すれば良かった」
後悔の念に襲われながら最後のカウントダウンが始まる。
プリ機は元気にカウントダウンを始めた。
最後ぐらい夏海のポーズに合わせるかと視線だけ軽く夏海の方へ向けると何か決意したような目で頬を赤らめていた。
どうかしたのだろうかと悩んでいるとシャッター音と同時に俺の左頬に不思議な柔らかい感覚が襲いかかる。
思いもよらぬ攻撃に思考回路がショート寸前になるが冷静さを保つ。
何があったのかは俺には分からない。
考え事をしていたせいで夏海の方を見ていなかった。
俺の感覚が正しければ……キス。
あの独特な柔らかさはキス以外の何物でもない。
だが、夏海がなんの脈絡もなくキスをしてくるか。それは否だ。
あんな普段辛辣な言葉しか浴びせてこない人間がキスをしてくるとは到底思えない。
しかし俺の答えを否定するようにプリ機は答えを出してくる。
画面に今ここで撮影したものが次々と表示されていく。
ダブルピースをしたものや変顔をしたもの。そしてその中に夏海が俺の頬にキスをしているものもしっかりと存在している。
「何これ」
困りに困った俺は1周まわって素直に夏海へ訊ねる。
「カップルぽくない?」
「そりゃそうだけど。ってか、これはもうぽいじゃなくてカップルだろ」
「はぁ……アンタ本当に細かいね。私とこんなプリ撮れた。良かったねで終わらせれば良いじゃん。はい。それよりいたずら書きね」
涙袋を大きくしたり、肌をすべすべにしたりとザ・プリクラっぽい加工を重ねに重ね文字記入では夏海が『おさななじみ』とピンク色の可愛い丸文字で記入した。
完了するとプリが印刷される。
「はい。これアンタのね」
「サンキュ」
貰っておいてやっぱり恥ずかしいなと思ってしまった俺はそっと生徒手帳に忍ばせておく。
プリクラを撮ってそのまま帰路についたので今日のデート擬きは終わりを迎えた。
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