俺とマネキン
「彼女と買い物来てスマホ弄る彼氏ってどうなの?」
両手いっぱいに衣類を抱えている夏海は目を細めながら文句を垂れる。
俺は店の服を両手いっぱいに抱えるのはどうなのかと問いたい。問わないけれどね。
「暇だったんだから仕方ないだろ」
「美咲と買い物来た時もこうだったの?」
「んー。アイツ買い物自体あまり……あぁ。ランジェリーショップだけは連れてかれてたな」
夏海は露骨に引き始めた。
そんな反応されるのは納得いかない。
俺が行きたくて行ったわけじゃなくて行かされたのだ。
自発的か強制的かって小さいようで大きな違いだと思う。そうだよね。
だから俺は悪くない。そう。ランジェリーショップに入って女の子の下着に囲まれてたけれど俺は悪くない!
「そういうこと平気で言うの気持ち悪い」
キモイと叫ばれるより気持ち悪いと冷静に言われる方が傷つくのはなぜだろう。
「仕方ないだろ。事実なんだから……それで。俺はその服を全部着なくちゃいけないのか?」
「当然でしょ。むしろこれ着ないでどうするつもり? 少なくともアンタには着ないで服を選べるほどのファッションセンスはないでしょ」
「……おっしゃる通りです」
納得いかなかったがここで折れないとこれ以上の罵詈雑言が飛んできそうだったので素直に折れておく。
大人な対応しちゃう俺さすが……こうでもしていないと俺という人が崩壊しそうな気がする。
「うーん。とりあえずまずはこれとこれとこれね」
「……おう」
夏海から渡された重たそうな上着にわけわからん絵がプリントされているTシャツにオシャレ感を醸し出しているジーパンを渡された。
そして夏海は口を動かさず指と頭だけで試着室に入れという指示をしてくる。
しかも早くしろと言わんばりの表情付きだ。
敢えて一挙一動ゆっくりしてやろうと目論んだが夏海の目がギロっとこちらを向いたので何も無かったのようにササッと試着室に入った。
「こんなの着たところで俺には似合わないんだよなぁ。案外夏海も見る目ないのかも」
外に聞こえないよう小言をぶつぶつ言いながら服を着替える。
普段慣れてない上着に普段慣れていないジーパンなので履きにくいったらありゃしない。
もしも許されるのなら今ここでこのジーパンを破りたいがご購入確定コース一直線なのでやめておく。大体ジーパンって破けるのかな。ダメージジーンズなるものもあるぐらいだし簡単に破けるのかもしれない。
1度試着室の中にある鏡で自分の姿を確認する。
やっぱり似合っていない。自分の中で頑張りに頑張って評価してもイキってるキョロ充ぐらいの評価しか出来ない。
「はぁ。着たぞ」
俺はバシッと勢い良くカーテンを開けた。
夏海はジーッと俺を見つめる。
何。今から採点されちゃうの? ファッションチェック? でも、これ選んだの君だよね。
内心アタフタしながら夏海の言葉をただただ待っていた。
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