俺の幼馴染は個性的
「裕貴! 今日BBQだからねー。さっさと準備しなさいよ!」
振られて初めての休日。
いつもなら起きて嬉々と彼女からのメッセージに返信していたのだが無論そんなもの来るはずもない。
来ているのは公式メッセージだけである。
今日はBBQを行うらしい。
幼馴染4人も来るとか来ないとか。
「行きたくねぇ」
俺が振られたことを知ったら奴らは確実に弄ってくるだろう。
クールで可愛いタイプ。天然で可愛いタイプ。ツンツンしてて可愛いタイプ。ゆるふわ系で可愛いタイプ。
そんな4人からの集中攻撃とか考えただけで死ねる。
「お母さん。行きたくないんだけど」
「はぁ。アンタはまだ振られたの引きずってんの? そんなこと肉食って忘れなさい。だから行くよ」
俺は半強制的に連れ出される。
肉食って忘れられるなら昨日のハンバーグで忘れられるんだよなぁ。
家の外に出るともうBBQの準備は出来ていた。
河原とかでやるのかと思っていたがどうやら庭でやるらしい。
それなら俺が行く意味マジで意味無くない?
「裕貴……アンタ今ここでやんのかよとか思ってたでしょ。春に川とかでBBQやるわけないでしょ」
この人俺の心読めすぎだろ。俺の親かよ。親だったわ。
「ゆーくんいらっしゃーい」
「久しぶりねー」
幼馴染のお母さん方が炭を片手に手を振ってくれる。
俺は軽く会釈して近くにあった椅子に座る。
「桜花が多分みんな引連れて来ると思うから〜。ちょっとだけ待っててね」
「声掛けてあげてね〜」
「あ、はい」
ママさんたちは楽しそうに集まるとワイワイしながらBBQ準備を開始する。
親父たちは親父たちで集まりビールをパカパカ空けて呑んで呑んで呑みまくっている。
既に顔真っ赤にしてる人いるけど大丈夫かよ……俺の親父じゃねぇーか。なら良いか。
時々こういう催しは開催される。
主な目的はママさん達の茶会プラスパパさん達の飲み会だ。
俺達子供は肉を喰らい適当に遊ぶ。
肉の良い匂いが漂ってくる。
「はい」
「ありがとう」
肉を受け取り感謝の言葉だけ伝えて口に放り込む。
朝から肉も悪くない。
焼けたものを次から次へと持ってこられパクパク口にしていると多数の足音が聞こえてきた。
「来たね」
「思ったより早かったね」
ママさん方はワイワイ騒ぎながらまた肉を焼き始める。
それももしかしてこっちに持ってきたりしませんよね。
「ママ。ジュースとかも買ってきたよ! このぐらいで大丈夫かな」
「桜花ありがとうね。あら、皆もいらっしゃい……そうだ。あそこにゆーくん居るよ。せっかくだし話してきな」
「言われなくても行くし! ママの意地悪!」
髪の毛をフワフワと揺らしながら桜花はこちらへやってくる。
俺には分かる。あれは親に煽られてムキになっている桜花だ。
寄りによって1番面倒くさそうなやつを相手にしなきゃいけないのかとか思いながら手元にあった肉を完全に食い終える。
桜花の後ろには他の3人もいる。
こっちに来るかどうか迷っているのかチラチラ見たり見なかったりしていた。
こっちに来ている桜花は天然美少女。悪く言えばただの馬鹿である。
ママさん達の近くでジーッと肉を見つめているのはゆるふわ系美少女の楓だ。俺の食うはずだった肉を食ってくれ。頼んだぞ。
不機嫌な表情をしながらスマホを弄っているのはツンツン系美少女夏海。ツンデレじゃない。ツンツン系だ。少しはデレてほしい。
そして目が合うと長い髪の毛をワサッと触っているのはクール系美少女雪だ。
彼女たちは幼稚園から付き合いのある幼馴染で同じ高校の同級生だ。
個性的で可愛すぎるこの子達を見るとやっぱり俺の心はズキズキ痛むね。
「帰りたい……」
ボソッと呟くとお母さんからの視線を感じた。地獄耳か何かですか。
ありがとうございます!
ブックマーク3つも付いててビックリしました。本当にありがとうございます!
PVも80近く……期待に応えられるよう頑張ります。
これからもお付き合いよろしくお願いします。