幼馴染と決定
夏海の話す通りただただショッピングモール内にあるファッション店を練り歩くことになった。
普段ファストファッションで何もかも揃えてしまっている俺には疎遠すぎる店に入り、店員さんの積極性に驚かされながらあーでもないこーでもないと服を選ぶ夏海をボーッと見つめる。
「これとこれどっちが可愛いかな……って、アンタに聞いても良い答えは帰ってこないか」
「流石幼馴染だな。その辺のことはしっかりと理解してるのは助かるぞ」
「アンタはアンタで少しはファッション気遣ったらどうなの?」
夏海はジトーっと生温いのにゾワゾワさせてくるような視線を送ってくる。
「別にファッションとかどうでも良いんだよ。隠さなきゃいけない所をしっかりと隠して寒くないような格好でいれればそれで十分」
実際問題ファッションのために寒いの我慢して丈の短いスカート履きますとか、袖が短くて可愛い服着ますとか明らかに本末転倒だろう。
服は寒さを凌ぐためと局部を隠すためにあり、個性を出してアピールするためにあるわけじゃない。あくまでもそれは副産物であり主ではないのだ。
この話を母にするといつも「アンタまだそんなこと言ってるの? 姉ちゃんにも聞かせたいねぇ」と呆れられる。やはり女は難しい。
「アンタさぁ。本気で思ってるわけ?」
夏海は突如不機嫌そうに持っていた服をガシッと元にあった場所へかける。
そして近くにあった椅子に座るなりビシッと指を指してきた。
「まずこの間アンタの家行った時」
膝にひじを置いてダルそうに話し始める。
「あのファッション最悪。何あの『全力』ってデカデカと書いてある服。あんなのどこで売ってるの? 日本語がカッコイイって言って意味もわからず着てる外国人じゃあるまいし」
夏海は突然黙り込む。
俺のターンってことかなと勝手に解釈し喋ろうとするとそうでは無かったらしく夏海が口をまた開く。
「あれ、ダサいよ?」
シンプルかつ大ダメージを与えることの出来る言葉。
別にかっこいいと思って来ていたわけじゃない。むしろただの部屋着なのでそこまで文句を言われることじゃないと思うが女子は寝巻きにもファッションを求めるものなのだろうか。
少なくとも『解き放て』Tシャツとか『栄えある』Tシャツを着ることは許されない気がする。
個人的には嫌いじゃないんだけれどなぁ……
「すまん。俺は好きだ」
「はっ!? あ……あぁ」
パッと顔を赤くして1つの間を置くと汚物を見るような目でこちらを見つめてきた。
そんなに怒ることだったか?
「そもそもあれ部屋着だぞ。基本外出ないんだし良いだろ」
「まぁ……百歩譲ろう」
百歩譲られて『生きる』Tシャツが許容されるのか。あの2つは多分じゃなくて絶対に許されないな。
良し。然る時が来るまで封印しておこう。
「それでもアンタいつもいつも白いTシャツに黒い長ズボンじゃん。いつ見ても同じような服装してるって年頃の男の子としてどうなの? 少しはバリエーション持たせようよ」
「んなこと言われてもなぁ。白い服に黒いズボン。これが完成された形なんだから仕方ないだろ。シンプルイズベスト的な?」
「はぁ。決めた。今日は私の服じゃなくてアンタの服決めるよ」
「いや、いらん」
「いるから。私が選んであげるから素直に従え」
突如降ってきた命令形に俺は思わずコクリと頷いた。
というか、単純に怖かったから頷いておいた。
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