幼馴染とショッピングモール
高校から歩いて数十分。
やっぱり歩いていくような距離じゃなかったなと思いながら目の前に佇むショッピングモールを見つめる。
「来たのは良いけど何すんだよ。ここって映画館入ってないだろ?」
「はぁ……アンタもしかしてデートイコール映画とか思ってない?」
「美咲は映画連れてったら喜んでたぞ」
不機嫌になった時映画に連れていくと百発百中で機嫌を取り戻してくれた。
特に恋愛ドラマみたいな謎の映画を好んで見ていた。
『恋は手を繋ぎ唇を交わし初めて完成する』
とかいう謎のキャッチコピーで宣伝していたクソ映画は未だに俺の頭にこびりついている。
主人公もヒロインも幸せにならない胸糞映画だ。
それを見て美咲は恋する乙女みたいな表情になっていたのだから女心は分からないものである。
多分これからも分からないと思う。難しすぎるもんね。
「それ美咲だけだから」
「はぁ……じゃあ何するんだ?」
「そんなの1つに決まってるでしょ」
夏海は何を当たり前なこと聞くんだみたいな表情をしてくる。
「分からん」
プライドがこの4文字を言うことを阻んだが変に強がったところで後々夏海に馬鹿にされてしまうのが目に見えるので素直になっておく。
「買い物するの。洋服選んだり……洋服選んだり……洋服選んだり……」
「やることそれしかねぇーのかよ」
「仕方ないでしょ……あっ! アンタの奢りでスタバとか?」
「学生にスタバ奢らせるとか中々畜生だよな。はぁ……まぁ、彼氏だし仕方ないか」
野口英世が2人ぐらい居なくなりそうだなと少し気分が落ち込むが致し方ない。
良く考えたら俺が奢ってもらう立場のような気がしなくもないがそんなこと言ったら間違いなく夏海は不機嫌になるので言いたい気持ちをグッと堪える。
「それに、多分ストーカー後ろ居るしね」
俺はパッと後ろを振り返ると頬を引っ張られた。
絶対に赤くなってるよ……最悪。すげえー痛いし。
「なんでそんな露骨に見ようとしたの! バレたらどうするつもり!」
「いやぁ……そんな簡単にバレやしないだろ。こんな風に手繋いでたらどこからどう見てもカップルでしかないしさ」
「アンタのそういう所嫌い。でも、振り返っちゃダメ。こんな所で作戦だってバレたら全てが水の泡なんだから。アンタの努力も私の努力も」
「まぁ。確かにそりゃそうだな」
なんだかんだこの件に関しては俺がとやかく言うよりも色々と事情を知っている当事者の夏海が言ったことを素直に受け止めることが1番だろう。
それに夏海の話していることだっておかしな事でもない。
普通の思考。普通の考えだ。
「だから視線に気にせずデートして。気になるとは思うけど」
夏海は視線を感じているらしいが俺には分からない。
鈍感は時にこういう差異を産むから鋭くなりたいと心から願う。
「俺にはわからん」
夏海に聞こえるか聞こえないか微妙な声で呟いた。
彼女のリアクションは特になかったので聞こえなかったのだろう。きっと。
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